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p.40 抽出テキスト

1.1.8 症状・予後・管理

先天性心疾患(75%),眼裂狭小,鼻根部扁平,鼻翼と鼻屋の接合不全,小さい口などの顔貌上の特徴(ほぼ全例),頸椎および頭蓋骨異常(ほぼ全例,無症状のものを含む),胸腺低形成に伴う免疫不全(重症1~2%),口蓋裂(9%),鼻咽腔閉鎖不全(32%),低カルシウム血症(無症候性47%,症候性12%),精神発達遅滞(軽症50%,中等度15%,重症3%)が身体的な主要症状である.他にも低身長,血小板減少,痙攣,斜視,気管支軟化症,側弯症,腎奇形,尿道下裂,鎖肛,鼠径ヘルニアなどの合併症があり,包括的な管理が必要である109).

先天性心疾患では,円錐動脈幹部(心臓流出路)と大動脈弓の異常を特徴とする.Fallot 四徴症(tetralogy of Fallot: TOF) (30%)(重症型である肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損[PA-VSD],主要体肺動脈側副動脈[MAPCA]は10%)大動脈弓離断(B 型) (IAA-B) (15%),心室中隔欠損(ventricular septal defect: VSD) (15%),総動脈幹遺残(PTA) (10%).右大動脈弓,鎖骨下動脈起始異常の合併も多い(25%).先天性心疾患における本症候群の占める頻度は,IAA-B で60%,PA-VSD,MAPCA で55%,PTA で35%,TOF で15% である109-113).心疾患の重症度が本症候群の生命予後に大きく関与する.

精神疾患として,成人期の統合失調症(25%),若年(50歳未満)発症のParkinson 病(6%)などがあり,発症すると社会的自立が困難になるため,小児期から思春期の精神的支援が重要で,進学,就労に適切なサポートを要する.統合失調症は一般集団と比較して約20 ~30 倍頻度が高い.一方,統合失調症の約5% に22q11.2 欠失が認められ,統合失調症の遺伝的要因と考えられている.

1.2 Williams 症候群

1.2.1 疾患概念

幼児期の顔貌上の特徴,精神発達遅滞,特徴的な性格,大動脈弁上部狭窄(supravalvular aortic stenosis: SVAS),

末梢性肺動脈狭窄(PPS)などの心血管病変,乳児期の高カルシウム血症などを有する染色体微細欠失症候群.

1.2.2 診断

染色体検査(FISH 法)によりELN 遺伝子を含むプローブで,7q11.23 微細欠失を証明する.検査は保険収載され,検査会社で行われている.

1.2.3 発生頻度

7,500 人に1 人114).

1.2.4 遺伝的原因

7 番染色体長腕11.23 領域のヘテロ微細欠失に起因し,欠失領域(1.5 ~1.8Mb)にある遺伝子のハプロ不全と考えられる.22q11.2 欠失症候群と同様に,欠失領域の両端にDNA 反復配列が存在し,染色体組み換え時のミスマッチにより,均一な欠失が起こると推測されている.

1.2.5 再発率

常染色体顕性遺伝(優性遺伝)で,どちらかの親に欠失がある場合,再発率は50%.ほとんどは孤発例で,親子例は稀である115).

1.2.6 出生前診断

羊水検査(15 週以降),絨毛検査(10 ~12 週)の染色体FISH 分析による出生前診断が可能であるが,欠失が明らかになっても,児の表現型,重症度,予後の予測は困難で,慎重な対応が必要である.

1.2.7 原因遺伝子

染色体7 番q11.23 の欠失領域には,エラスチンをコードするELN 遺伝子を含む約20 の遺伝子が存在する. a.ELN 遺伝子

エラスチンは弾性線維の主要構成成分で,動脈中膜に存在し,血管の弾性に関与する.ELN 機能欠損マウスでは,全身の動脈中膜平滑筋層の肥厚による内腔狭窄が認められる.Williams 症候群の心外症状をもたないSVAS の家系においてELN 遺伝子の変異が報告されており116),ELN 遺伝子は,本症候群におけるSVAS の疾患遺伝子と考えられる. b.LIMK1

中枢神経系に高発現するLIM キナーゼをコードする遺伝子で,中枢神経細胞の情報伝達に重要な役割をもつ. LIMK1 ノックアウトマウスでは,海馬における樹状突起

表17 染色体異常,遺伝子異常に対する遺伝学的検査の推

奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

先天性異常症候群に合併する先天性心疾患に対する遺伝学的検査を実施する. I C症候群を伴わない先天性心疾患に対する遺伝学的検査の実施を考慮してもよい. IIb C