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第7章 先天性心疾患・染色体異常 先天性心疾患は出生1,000 人につき,5 ~10 人の頻度で発生し,新生児,乳児死亡の主要な原因の1 つである. 2021 年にわが国で行われた全国調査では,先天性心疾患の発生率は,出生1,000 に対して約1.4 であった101).先天性心疾患のうち,60% は多因子遺伝によるが,15% はゲノムコピー数異常,13% は染色体異常,12% は単一遺伝子病が原因と報告されており102),しばしば染色体異常・先天異常症候群の合併症の1 つとして認識される103). 近年,染色体異常,先天異常症候群の責任領域・疾患遺伝子が次々と明らかにされ,先天性心疾患の発症メカニズムの解明に寄与している.先天性心疾患を合併する頻度の高い染色体異常を表14 に,遺伝子異常を伴う先天異常症候群を表15 に示した.これらの疾患については,遺伝学的検査により遺伝的要因が明らかになることが,疾患の治療,管理に有用であることが多い. 一方,症候群を合併しない先天性心疾患においても,遺伝子解析技術の進歩・普及により原因候補遺伝子の同定が進み,主に心臓発生に必須な転写因子,シグナル伝達因子,構造蛋白をコードする遺伝子の変化が報告されている(表16) 102, 103).しかし,これらの報告は研究レベルであり,症候群を合併しない先天性心疾患の多くは多因子遺伝とされ,特定の遺伝子異常がその成因として明らかな割合はいまだに高くない10, 104).表17 に現時点での先天性心疾患に対する遺伝学的検査に対する推奨を示した. 1 染色体異常 1.1 22q11.2 欠失症候群 1.1.1 疾患概念 先天性心疾患,顔貌上の特徴,胸腺低形成,口蓋裂・鼻咽腔閉鎖不全,低カルシウム血症,精神発達遅滞を主徴とし,DiGeorge 症候群,velo-cardio-facial 症候群,および円錐動脈幹異常顔貌症候群などを含む染色体微細欠失症 候群.先天性心疾患では21トリソミーに次いで2 番目に多く,心臓流出路異常ではもっとも頻度が高い. 1.1.2 診断 染色体検査(FISH 法)でTUPLE1/HIRA 遺伝子を含むプローブを用い,22q11.2 微細欠失を証明する.検査は保険収載され,検査会社で行われている. 1.1.3 頻度 出生4,000 ~5,000 人に1 人.性差,人種差はない.染色体微細欠失症候群で最も頻度が高い. 1.1.4 遺伝学的原因 22 番染色体長腕q11.2 領域のヘテロ微細欠失に起因し,欠失領域(1.5 ~3Mb)にある遺伝子のハプロ不全と考えられる.FISH 分析により,95% 以上の患者で22q11.2 領域の3Mb または1.5Mb の欠失が認められる.染色体上の欠失領域の両端にDNA 反復配列が存在し,染色体組み換え時のミスマッチにより,均一な欠失が高率に起こると推測されている105, 106).欠失が均一であるにもかかわらず,臨床症状はきわめて多様で,遺伝子型と表現型に相関は認められない.欠失も遺伝的背景も同一の一卵性双生児で表現型が異なる症例が報告されており107),血流の差など胎内環境の違いが関与することを示唆する. 1.1.5 再発率 常染色体優性顕性遺伝(優性遺伝)で,どちらかの親に欠失がある場合,再発率は50%.多くは孤発性だが,10 ~ 20% は家族性.家族例では,母親由来が多い(約70 ~ 80%).原因として,男性患者の妊孕性が低いこと,男性の寿命が女性より短いこと,男性患者が所帯を担うことが困難であること,母親の方が父親より染色体検査を受ける機会が多いことが考えられている108). 1.1.6 出生前診断 羊水検査(15 週以降),絨毛検査(10 ~12 週)の染色体