p.35 抽出テキスト
7.2.2 絨毛検査 妊娠11 ~14 週頃に実施され,絨毛(後に胎盤になる組織)を採取し,染色体診断・遺伝子診断を行うものである.稀に胎盤限局性モザイク (confined placental mosaicism: CPM) が検出されることがあり,妊娠15 週以降に羊水検査が再度必要になることもある. 流産や胎児死亡などの合併症が100 人に1 人程度で起こるといわれているが,経腹的な絨毛検査の流産・胎児死亡のリスクは羊水検査と同等とする報告もある95). 7.2.3 超音波検査 超音波によるソフトマーカーを用いた遺伝学的検査と胎児形態異常を診断するための精密検査がある.ソフトマーカーには,NT (nuchal translucency の略語で,胎児項部透過像ともいわれる),鼻骨低形成などが含まれる.実施に際しては,日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」96)を参照されたい. 妊婦健診において,胎児徐脈・頻脈などの胎児不整脈,胎児心構築異常あるいは心筋緻密化障害などが偶然に見つかることがある.このような場合は,胎児診断での循環器疾患に対応できる高次施設あるいはハイリスク妊娠に対応できる「総合周産期母子医療センター」や「地域周産期母子医療センター」などに紹介する. 7.2.4 母体血清マーカー検査 母体血清中の胎児あるいは胎盤由来のホルモンやタンパク質の濃度を測定することで,胎児が21トリソミー,18トリソミー,神経管閉鎖障害に罹患している確率を推定する検査である. 厚生科学審議会先端医療技術評価部会出生前診断に関する専門委員会による「母体血清マーカー検査に関する見解」,日本人類遺伝学会倫理審議委員会による「母体血清マーカー検査に関する見解」,および日本産科婦人科学会周産期委員会による報告「母体血清マーカー検査に関する見解について」を十分に尊重して実施する. 7.2.5 コンバインド検査 妊娠11 ~13 週にNT をはじめとする超音波マーカーと母体血清マーカーを測定し,胎児が21トリソミー,18 トリソミーなどに罹患している確率を推定する検査である. 7.2.6 非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT) NIPT とは,NGS 等を用いて母体血漿中のcell-free DNA を解析することで胎児染色体異常の可能性を評価する検査である.他の非確定的検査と比較して感度・特異度ともに高いことが報告されている97-99). 妊娠早期から検査が可能なこと,母児に対して無侵襲なことなどのメリットがある反面,評価できる疾患が限定的であること,人工妊娠中絶につながりうる検査であること,胎盤由来のDNAを分析していることで胎盤性モザイクなどを検出することもあり,留意点がある. 本検査は,日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会より認証を受けた医療機関100)で実施され,その実施に関しては「NIPT 等の出生前検査に関する情報提供および施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」を遵守して行われる.対象疾患は,21トリソミー,18 トリソミー, 13トリソミーに限定されている.各染色体疾患の詳細については他章を参照されたい. 7.2.7 着床前検査および診断 きわめて高度な技術を要する医療行為であり,検査内容によっては臨床研究として行われる.倫理的側面からもより慎重に取り扱う.実施に際しては,日本産科婦人科学会会告「着床前診断に関する見解」に準拠する.実施には体外受精を必要とするため侵襲を伴うことに留意する. 7.2.8 性別 重篤なX 連鎖遺伝性疾患のために検査が行われる場合を除き,出生前診断として胎児の性別を告げない. 7.2.9 精度管理 出生前診断技術の精度管理については,常にその向上に努める.