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p.28 抽出テキスト

を専門とする看護師であり,遺伝医療が治療と密接にかかわる循環器領域における活動が期待される.

遺伝性循環器疾患について,専門性の高い遺伝医療・遺伝カウンセリングを日本全国で提供するために,遠隔遺伝カウンセリングが期待される.令和4(2023)年の診療報酬改定において,保険適用となっている遺伝カウンセリング(D006-4 に掲げる遺伝学的検査の実施時に行われる遺伝カウンセリング)については,遠隔連携遺伝カウンセリング加算が算定できるようになった.遺伝学的検査を実施した医療機関が,その検査の対象となる疾患に係る遺伝カウンセリングを専門的に実施する医療機関と連携し,通信機器を用いた遠隔遺伝カウンセリングを当該機関に依頼することで,診療報酬を算定できる.この仕組みを活用するために,遺伝性循環器疾患の診断・治療に当たる医療機関と,遺伝性循環器疾患に関する専門性の高い遺伝カウンセリングを提供する医療機関との連携作りが重要である.

2.4 遺伝性循環器疾患の遺伝学的検査に係る 遺伝カウンセリングのポイント

2.4.1 不確実性(不確かさUncertainty)への適応支援

発症への遺伝学的関与の大きさは,疾患によってさまざまである.単一遺伝子疾患は,ある1 つの遺伝子(=疾患原因遺伝子)における病的バリアントの存在が発症につながるため,遺伝学的関与がきわめて大きい疾患群といえる.しかし,発症年齢,出現する症状やその重症度といった表現型は,同じ単一遺伝子疾患でも患者によって異なる.その理由には,病的バリアントによって病原性に差異があるほか,同一病的バリアントを有する血縁者間でも表現型に差異があることから,環境要因や未知の遺伝要因による発症リスクの修飾,そして当然,確率的(=偶然)要素も存在すると考えられる.

また,近年のゲノム研究の進歩に伴って,1 つの表現型に対して,多数の遺伝子が関与していることや,反対に1つの遺伝子が複数の疾患と関与するような複雑性が明らかになってきている.遺伝性循環器疾患においても,さまざまな疾患において複数の遺伝子の関与が示され,エビデンスが常に更新されている.例えば,先天性LQTS では,これまでに17 の遺伝子と疾患の関連が示されているが,それらのうち明らか,もしくは強い関連があると分類されているのは7 遺伝子である50).HCM においても,従来の単一遺伝子探索のアプローチで同定された遺伝子だけでなく,複数の遺伝子の相互作用や,環境要因の影響が示唆されている.そのため,明らかな家族集積性を示す場合においても,単一遺伝子疾患としてとらえることが適切ではない可能性がある51).

これらの理由から,遺伝型と表現型の関係には多様性があり,遺伝学的検査結果に基づく診断や発症/ 進展リスクの評価には常にあいまい性を伴いうることには注意が必要である.臨床情報の適切な評価と遺伝学的検査によって,多くは確実な診断につながり,その後の治療方針決定にきわめて重要な役割を果たす.一方で,遺伝性循環器疾患の遺伝学的背景の複雑性やバリアントの病原性に関する情報集約が発展途上であることも影響し52),遺伝性循環器疾患の遺伝学的検査があいまい性を伴った結果を示す可能性には注意を払う必要がある.あいまいな検査結果が得られることによって,患者やその家族には混乱が生じ,疾患への適応が阻害される可能性がある.混乱を未然に防ぐためには,検査前の遺伝カウンセリングで遺伝学的検査の意義と

表13 認定遺伝カウンセラーの到達目標〈知識〉a.人類遺伝学の基本知識b.代表的な疾患の臨床像,自然歴,診断法,治療法に関する基

本的知識c. 遺伝学的検査とその適用に関する知識d.遺伝カウンセリングの歴史と基礎的知識〈技術〉e.基本的コミュニケーション技術f. 様々な分野の専門職との良好な人間関係維持と連携g.遺伝カウンセリングに関わる心理学的実践技術h.クライエントの心理的・社会的・倫理的・法的課題(ELSI) i. クライエントが最良の遺伝医療を受けるための調整および参画j. 遺伝医療の必要性に応じた家系情報の収集と家系図の作成k.  正確かつ最新の遺伝医学的情報の収集l. クライエントを取り巻く情報の整理と,相談支援および教育支

援m.  様々な遺伝カウンセリング提供方法に合わせたコミュニケー

ションスキルと課題n.  医療者や一般市民の需要,特性,状況に合わせた教育支援お

よび啓発活動o.  遺伝カウンセリング研究プロセス〈態度〉p.  我が国の社会保障制度・医療制度・関連法規・倫理に関する

知識の習得と遵守q.  認定遺伝カウンセラーとして,自身の心身および価値観やバ

イアスに対する内省的な態度の習得r.  エビデンスに基づいた遺伝カウンセリングの実践に必要な生

涯学習の重要性の理解と自己学習手段の習得s.  遺伝カウンセリング研修者に対する教育・人材育成に関する

役割の理解(認定遺伝カウンセラー到達目標(20220423) 48)より改変)