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p.26 抽出テキスト

響,心理的影響,そして家族への影響をもたらす.

特徴の1 つは,親から子へ,世代間で引き継がれる「継承性」である.例えば,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式を示す遺伝性疾患に罹患している場合,1/ 2 の確率で子も同じ疾患を発症しうる.このように,遺伝的要因によって家系内で同疾患の発症者が発生することを遺伝的再発という.そのような継承性をもつ疾患と診断された患者においては,自身の子をはじめとする血縁者において遺伝的再発が生じる可能性に対して恐れや罪悪感を抱くかもしれない.また,親も患者で,親からの遺伝要因の継承によって自身も発症した患者では,親に対して怒りを抱くかもしれない.これらのような負の心理的感情が生じること自体は自然な反応ともいえるが,それが過剰になることで患者や家族の疾患への適応が阻害されることを防ぐ必要がある.遺伝カウンセリングでは,各家系員の再発リスクの適切な評価をもとに,リスク認識を促し,再発リスクがもたらす医学的影響への対応(サーベイランス,予防)に関する教育を通して,継承性がもたらす影響に適応することを支援する.

もう1 つの特徴は,「(遺伝的)多様性」である.例えば, Marfan 症候群においては,FBN1 に病的バリアントを有することにより,ミクロフィブリルの主成分であるフィブリリン-1 の結合織における構造特性と制御特性が変化し,心血管系,筋骨格系にさまざまな表現型が生じる.このことは,患者やその家族の疾患への適応に少なからず影響を与える.生活習慣病や感染症など,環境要因の影響が明らかな疾患では,発症が自分の行動(食生活,身体活動,感染予防など)と連続することを認識しやすく,さらに行動は自身の意思でコントロール可能であるため,適応のはじめのステップである「疾患とともにある自分を認め,対処しようとする」ことを達成しやすい.一方で,遺伝要因を有すること自体には,患者はもちろん家系員の誰にも責任はない.しかし,それは現に存在し,かつ遺伝要因は不変であるため,自身のコントロールが及ばない.さらには,その遺伝要因によって,突然死等の重篤なものを含むさまざまな症状が,一般集団よりはるかに高い確率で起こりうる,という脅威にさらされることとなる.そのような状況の患者や家族に生じうる,否認,怒り,疾患への脅威,コントロール感の喪失等のさまざまな心理的影響は,疾患に適応し,自らに生じる課題に前向きに対処することを阻害する.

遺伝カウンセリングは,これらのような疾患の遺伝学的特徴ゆえに適応の過程で生じうる心理社会的課題に,患者や家族が対処する能力を身につけられるよう具体的な対処方法を提示するとともに,エンパワーメントや自己効力感の向上を目的に実施される.急速に発展する遺伝性循環器

疾患領域においても,患者や家族が疾患に適応していくプロセスにおいて,遺伝カウンセリングは重要な役割を担っている43, 44).

2.2 遺伝カウンセリングが提供されるべき 状況

日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」は,「遺伝学的検査・診断に際して,必要に応じて適切な時期に遺伝カウンセリングを実施する」としている.ここで,遺伝カウンセリングは,「疾患の遺伝学的関与について,その医学的影響,心理学的影響,および家族への影響を人々が理解し,それに適応していくことを助けるプロセス」と定義される1, 45).そのため,確定診断を目的とした遺伝学的検査の際の主治医による事前説明と,検査結果の説明も遺伝カウンセリングの一部と位置付けられる.そのため,遺伝カウンセリングに関する基礎知識・技能については,すべての医師が修得しておくことが望ましいとされている1).そのうえで,疾患に適応するプロセスの一部として,患者やその家族が遺伝学的検査・診断が持つ意義の十分な理解のもとに,検査を受検するか否かの意思決定をし,その結果(受検しない場合を含む)に基づいてその後の疾患管理・リスク管理に臨めるよう,遺伝カウンセリングが提供されるべきである.

ただし,冒頭に示した遺伝カウンセリングの目的からわかるように,遺伝カウンセリングは必ずしも遺伝学的検査・診断の実施に際してのみ行われるものではない.患者やその家族が疾患への適応に困難を感じているとき,適応の維持促進を目的としたフォローアップが必要なとき,患者やその家系員の成長発達やライフイベント(結婚,挙児等)に応じて新たに課題が生じるとき等,ニーズが顕在化するタイミング,あるいは,潜在するニーズを積極的に引き出すべきタイミングは患者・家族の生涯を通して生じうる.そのため,遺伝性疾患とともに生きる患者とその家族へは,世代を越えた縦断的な遺伝カウンセリングを提供することが必要である.このような状況での遺伝カウンセリングは,後述する遺伝医療専門職(臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー,遺伝看護専門看護師)が対応するべきである.また,体制構築の一環として,保険制度の整備も必要である.2023 年現在では遺伝カウンセリングの診療報酬(1,000点)が,検体検査判断料に対する加算と位置付けられているため,加算の施設基準を満たした保険医療機関において保険適用となっており,遺伝学的検査の実施に関連するカウンセリングのみ医療保険が適用される.そのため,遺伝