p.23 抽出テキスト
2.3.3 NGS 解析 バリアントの検出:バリアントを検出する機器としてはショートリード型のNGS(ハイブリキャプチャ法を用いたイルミナ社の機種,マルチプレックスPCR 法を用いたサーモフィッシャーサイエンティフィック社の機種など)が用いられる. バリアントへの情報付与と絞り込み:検出されたバリアントに対して,以下のような情報を付与(アノテーション)する.1バリアントの種類(ミスセンスバリアントなど), 2一般集団のデータベース(gnomAD 34) やjMorp 35) など)における頻度,3バリアントと疾患の関連性を示すデータベース(ClinVar 36),Human Gene Mutation Database(HGMD), Global Variome shared LOVD 36a),MGeND 37)など)における登録,4in silico 予測プログラム.候補バリアントの絞り込みは,一般集団における頻度と疾患頻度の比較や遺伝形式によって行われる.常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患において2 つのバリアントが検出された場合には,複合ヘテロ接合体の確認のため両親解析などにより別の染色体上に存在するか否かの検討が行われる. バリアントの評価:候補バリアントに対しては,ClinVarなどによる既報告かどうかの確認,既報告ならばその文献内容の確認が行われる.また,ACMG/AMP ガイドライン 2015 38)およびClinGen Sequence Variant Interpretation Working Group の推奨事項39)にしたがって評価が行われる.表10 に示す各評価基準に基づき検討され,病的バリアント(pathogenic variant),病的である可能性が高いバリアント(likely pathogenic variant),病的意義不明のバリアント(VUS),良性の可能性が高いバリアント(likely benign variant),良性のバリアント(benign variant)と判断される.ACMG/AMP ガイドライン(2015) 38)が提唱されて以降,本ガイドラインをもとに各疾患に特化したガイドラインが提唱されており,循環器領域においては, ClinGen 心筋症エキスパートパネルガイドライン(MYH7), ClinGen RASopathy エキスパートパネルガイドライン(BRAF,CBL,HRAS,KRAS,LZTR 1,MAP 2 K 1, MAP2K2,MRAS,NRAS,PPP1CB,PTPN11,RAF1, RIT1,RRAS2,SHOC2,SOS1,SOS2),ClinGen 家族性高コレステロール血症エキスパートパネルガイドライン(LDLR),ClinGen FBN1 エキスパートパネルガイドライン(Marfan 症候群)などが提唱されている40). なお,NGS で検出されたバリアントに対してはサンガー法による確認が行われてきたが,最近NGS の精度向上に伴い行わない方針の施設もある41). 報告書の作成:報告書には,標準手順作業書(Standard Operating Procedures: SOP)にしたがって,検体の種類, 検査の方法,対象遺伝子,検査の限界の情報とともに,結果(検出されたバリアントの情報),その解釈,解釈のために必要な情報などが記載される.検査の限界に関する情報としては,翻訳領域およびスプライス部位以外の領域(転写調節領域,ディープイントロンなど)のバリアントは検出できないこと,対象領域内においても塩基配列特性上解析が困難な領域が存在することなどが示される.また,バリアントは,Human Genome Variation Society が推奨する表記法42)にしたがって示される(表11). 2.4 おわりに 遺伝学的検査の体制整備,解析の全体像および詳細な工程について解説した.遺伝性循環器疾患の遺伝学的検査は,衛生検査所および一部の医療機関において,NGSを用いた候補遺伝子パネル解析により標準的に実施されている.臨床的有用性の高い検査であり,さらなる発展と普及が期待される. 表10 ACMG/AMP ガイドライン2015 における病的バ リアント評価基準の概要• 機能喪失が疾患の発症機序として知られている遺伝子におけるバリアントで,nonsense-mediated mRNA decay をもたらすと予想される. • 同じアミノ酸置換を生じる異なる種類の塩基置換が病的バリアントとして報告されている. • 別アミノ酸への置換を伴うバリアントが病的バリアントとして報告されている. • de novo バリアントである. • 機能解析が行われている. • 病的バリアントのホットスポットあるいは機能的に重要なドメインに存在する. • 病的バリアントとtrans に存在する(常染色体潜性遺伝 [劣性遺伝] 疾患の場合). • 家系内罹患者と共分離している. • ミスセンスバリアントが病的バリアントの多数を占める(病的でないミスセンスバリアントの割合は低い)遺伝子におけるミスセンスバリアントである. • 複数の機能予測プログラムが病原性を支持している. • 臨床症状あるいは家族歴から単一の遺伝子が原因として想定される. • 一般集団のデータベースに登録がない. (Richards S, et al. 2015 38)より作表)