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p.18 抽出テキスト

い.特定の先天性疾患においては,染色体分染法よりもマイクロアレイ法による解析を優先すべきとの提言もある17).

ヒトのCNV のカタログとして,Database of Genomic Variants(DGV)

18)などがある.また染色体不均衡と疾

患との関係を収載しているデータベースとして,DE- CIPHER(DatabasE of Chromosome Imbalance and Phenotype in Humans using Ensembl Resources)がある19).このデータベースでは,大きく分けて5 つの機能(Genome browser,Phenotype browser,Genes,CNV Syndromes, GeneReviews)を利用することができ,正確なゲノム位置と過去に報告されている表現型を関連づけることにより,特に人間の発達に影響を与える稀少なバリアントについての情報が体系的に理解できる.

マイクロアレイ法は解像度が高いため,正常バリアントを含むさまざまなバリアントを検出するが,コントロールのデータ整備が十分ではないため,病的意義が不明なCNV を検出し,解釈困難な場合がある.

また,薬事承認を得た体外診断用医薬品を用いて,染色体ゲノムDNA のコピー数変化およびヘテロ接合性の喪失を測定するアレイCGH 法では,染色体構造変異解析(D006-26)として定義された疾患に対して実施する場合は,保険収載として対応可能である20).しかし,それ以外の疾患については自費またはゲノム解析研究としてのみ実施可能である.

1.1.4 次世代シーケンス法(ショートリードシーケンス)

次世代シーケンス法は,解析したい配列に対して何度も配列断片の情報を取得していく手法である.1 例として,フローセル上でブリッジPCR を行ってDNA を増幅する技術を利用したSolexa 社のゲノムアナライザーが2006 年に登場した.その後,2007 年にSolexa 社がIllumina 社に合併されて現在の次世代シーケンス解析が広く普及した.以下にこの技術の原理を簡単に紹介する. a.ライブラリー調整

まず,調べたいDNA をランダムに断片化してシーケンスライブラリーを調整し,その後に5’ 側および3’ 側にアダプターをライゲーションする.もしくはタグメンテーションという技術によって,断片化とアダプターライゲーションを同時に行う.その後にアダプターが付加されたDNA 断片をPCR で増幅してゲル精製を行う. b.クラスター形成

続いて,アダプターに相補的なオリゴが配置されたフローセルにこのライブラリーをロードし,ライブラリーを補足する.そして,各断片をブリッジ増幅によって個別のクローナルクラスターに増幅する.このクラスター形成によって,シーケンスのためのテンプレートの準備が完了する.

c.シーケンス

4 種類のデオキシヌクレオチド(dATP,dTTP,dGTP, dCTP)に,それぞれを検出できるように異なる蛍光色素でラベルした可逆的ターミネーターを準備する(1 塩基のみ伸長する).上記のテンプレートに対して,4 種類の可逆的ターミネーター・DNA ポリメラーゼ・プライマーを添加して1 塩基合成反応を行い,レーザーで励起してどの色の塩基が取り込まれたかをイメージングで捉える.その後,蛍光標識とターミネーターを除去し,次のサイクルで再度ヌクレオチドの取り込みを行って蛍光検出を行う,という形でクラスターごとに1 塩基ずつ配列を決定していく.

この手法の特徴は,1 つずつのシーケンスリードは100 ~ 250 塩基と短いが,大量のリード数を出せることである.1塩基バリアントを検出する際には,すでに決められたレファレンスとなるゲノム配列を用いるため,大量のリード数を出力できるこの手法が有利である.一方で,ゲノムには少なからず繰り返し(リピート)配列が存在するが,本手法ではこのような配列の一部分しか読めないため,読めたリードがどこに該当するかを判定することができず解析に用いることができない.

次世代シーケンス技術を用いることによって,ヒトの全ゲノム領域を解析することが可能である.そして,全エクソーム領域,あるいは指定の遺伝子の領域のみなど,希望の領域に由来する DNA 分子だけを濃縮することで,さまざまな範囲について網羅的な解析を行うことができる.

1.1.5 次世代シーケンス法(ロングリードシーケンス)

前述した通り,短いリードを解析する次世代シーケンス解析では,リピート配列やアノテーションのついていない領域を解析することができなかった.これを克服すべく,Pacific Bioscience 社およびOxford Nanopore Technologies(ONT)社がロングリードシーケンス技術を開発してきた.これまでのロングリードシーケンスでは塩基配列決定の精度に問題があったが,その点が解消されて高精度の解析ができるようになってきた.この技術を用いたThe Telomere-to- Telomere(T2T)consortium によってヒトゲノムの全長の完全な配列が決定された21).ONT 社のナノポアシーケンス技術はDNA 分子を物理的・化学的に直接読み取る手法であり,シーケンスしたその場からデータ解析することができ,超高速で遺伝子診断が可能である.遺伝子診断を臨床の現場で実施するうえで今後重要なデバイスとなる可能性がある.