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p.17 抽出テキスト

1.1.2 MLPA 法

Multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA)法は,従来の遺伝子増幅法であるPCR 法による解析や遺伝子全体の配列解析法では解析が難しかった遺伝子の,大規模な欠失や増幅などを検出するときに用いられる.

本法の原理は,まず標的遺伝子の特定部分に隣り合って対合する2 つのDNA プローブを用意し,DNA プローブのハイブリダイゼーションと連結(ライゲーション),PCR増幅技術を組み合わせ,数十ヵ所の微細な遺伝子内部領域を調べる方法である.それぞれのプローブにはPCR 法を行うためのプライマー部位が結合されている.標的遺伝子の特定部位において,隣り合って対合した2 つのDNA プローブをリガーゼで結合させた後にPCR 反応を行わせると,特定部位が存在した場合にのみ,2 つのDNA プローブが結合した長さのDNA 断片が増幅される.1 回の反応で40 ヵ所程度の特定部位まで増幅反応を行うことができ,その増幅産物を電気泳動して,そのパタ-ンから遺伝子の欠失や増幅を判別する15).

MLPA 法は,特定の遺伝子疾患に関連するゲノム上のコピー数異常を検出するための多重連鎖反応によるPCR 法であり,欠失,重複,特定のコピー数多型(copy number variation: CNV)を検出する最も信頼性が高く,費用対効果の高い方法とされる.MLPA 検査で得られる結果には,以下の2 つの可能性がある.

1Positive(Pathogenic and likely pathogenic):対象となる疾患の表現型に関連する遺伝子の欠失または重複が確認されたことを示す.この場合,治療法,疾患の進行,予防戦略,家族への潜在的な影響などについて,遺伝カウンセリングを行うことができる.

2Negative:検査を実施した結果,病気の原因となる欠失や重複が確認されなかったことを示す.この結果は,受検者が健康であること,他の遺伝子疾患や病状がないことを保証するものではない.

一方,MLPA では,1均衡型相互転座,2テロメアの欠失と重複,3使用したMLPA プローブのターゲット外の欠失や重複,4点変異,小さな挿入や欠失,5ミトコンドリアDNA の反復配列や突然変異,を検出できない.

従来のサンガー法などの遺伝子検査法では,数塩基程度の小さな欠失・重複は検出可能であったが,それよりも大きな領域にわたる欠失・重複は検出することができなかった.しかし,MLPA 法の登場により,それが可能となり, Duchenne/Becker 型筋ジストロフィーの遺伝子検査は,保険適用されている.また,遺伝子検査としてだけではなく,アレイCGH(comparative genomic hybridization: 比較ゲ

ノムハイブリダイゼーション)やDNA チップなど網羅的探索研究により絞り込まれたターゲット領域を,多検体で検証する際にも簡便に実施できる.

1.1.3 マイクロアレイ染色体検査

マイクロアレイ法は,ゲノムの対象領域全体に対応させたDNA 断片を高密度にスライド上に配置し,その上に調べたい検体DNA を添加し,全ゲノムを対象にコピー数を検索する網羅的解析法であり,代表的な解析手法として,アレイCGH と,一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)アレイがある.両者は類似した解析手法であるが,検出の原理や検査設計,使用目的は異なる.

アレイCGH は,検査対象となる検体と,対照となる検体との2 つのサンプルを異なった蛍光で染色し,アレイ上の反応で量的比較を高密度で行う.SNP アレイでは,アレイチップ上に設計したプローブにより,一塩基の違いを解析することができる.染色体のコピー数とともに,プローブ位置の遺伝子型が,特定のホモ接合であるか,ヘテロ接合であるかも確認できる.これにより,染色体分染法ではわからなかった詳細な情報が得られるようになった.増幅領域で約2 Mb,欠失領域で10 Mb 以下の変化はこれまでの検出不可能であったが,アレイCGH により,さまざまな大きさのレベルでCNV を解析でき,検出不可能な微細な異常を検出できるようになった.また,一度に多数のゲノム領域の解析が可能である16).またSNP アレイのデータを用いたゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study: GWAS)も2000 年代初頭から始まり,生活習慣病をはじめとした,さまざまな疾患における疾患感受性領域が同定されてきた.それらの疾患感受性領域が制御する遺伝子を標的とした創薬も成功している.昨今は,ひとつずつのSNP 領域のバリアントの影響に重みをつけて足し合わせて算出するポリジェニック・リスクスコア(polygenic risk score: PRS)の概念が確立し,さまざまな疾患を含む多数の形質を対象として遺伝的なリスクスコアを算出できるようになった.

CNV 探索のほか,トリソミー,高解像度のヘテロ接合性の喪失(loss of heterozygosity: LOH)領域の解析,片親性ダイソミー(uniparental disomy: UPD),低頻度モザイクなどが検出できる.しかし,コピー数変化を伴わない均衡型転座や逆位は検出できず,これらを調べるには,蛍光in situ ハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization: FISH)法などによる確認が必要である.

実際の臨床においては,これらのアレイはともに染色体の微小な量的変化を検出するために用いられることが多