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第4章 遺伝学的検査の実際

1 遺伝学的検査の方法

遺伝学的検査の手法は,1分子遺伝学的診断法,2遺伝生化学的診断法,3細胞遺伝学的診断法の3 つに分類される.1はサンガー法に代表される塩基配列決定法や, NGS を用いる全エクソーム解析,全ゲノム解析など,2は塩基配列を決定しない先天代謝異常の酵素活性測定,3は染色体検査などである(表7).

1.1 分子遺伝学的診断法(遺伝子解析法)

1.1.1 PCR/塩基配列決定法(サンガー法)

サンガー法は,1980 年にノーベル化学賞を受賞したFrederic Sanger が開発した塩基配列決定法である.この手法は,細胞の中でゲノムDNA が複製されるのと同じように,一本鎖化したDNA をテンプレートとしてDNA ポリメラーゼが相補的な塩基(ヌクレオチド)を伸長していく

反応に基づいている.

本手法の原理を簡潔に以下に述べる.まず,調べたいDNA を一本鎖とし,塩基配列を調べたい領域の近傍に短いプライマーを結合させる.続いて,4種類のデオキシヌクレオチド(dATP, dTTP, dGTP, dCTP)に加えて1 種のジデオキシヌクレオチド(ddATP, ddTTP, ddGTP, ddCTP のどれか)が存在する状態で,DNA ポリメラーゼによる伸長反応を開始させる.その際,ジデオキシヌクレオチドのリボース環には次のヌクレオチドが結合するための3’ 位置のヒドロキシ基がないため,デオキシヌクレオチドの代わりにジデオキシヌクレオチドが取り込まれるとそこで鎖の伸長が停止する.ここで,4 種類のデオキシヌクレオチドを加えているため,ジデオキシヌクレオチドが取り込まれるタイミングによって,さまざまな長さのDNA が複数合成されることになる.実際には,4 種類のジデオキシヌクレオチドをそれぞれ1 種類ずつ加えた4 種類のDNA 合成反応を同時並行で行うこととなる.また,このときの4 種類のジデオキシヌクレオチドにはそれぞれ別々の色の蛍光色素で標識しておく.

最後に,シーケンス反応で得られた1 塩基違いのさまざまな長さの反応産物をキャピラリー電気泳動で分離させていく.反応産物をゲルポリマーが充填された長いガラスキャピラリーに電気的に取り込むと,DNA 断片は負の電荷を帯びているために電気泳動によって陽極側に流れていく.ゲルの中を移動する速度はDNA 断片の分子量に反比例し,短い断片は早く流れ,長い断片は時間がかかることによって,1 塩基違いの断片を分離していく.キャピラリーの端からレーザーを当てることによって,ジデオキシヌクレオチドが取り込まれてDNA 伸長が停止した場所を蛍光標識として読み取り,塩基情報に変換していく.

この手法では,読み取り誤差が少なく,読み取り塩基長が比較的長い(~1000 塩基)のが特徴となっており,後に示すNGS による結果の妥当性を検証する目的でも頻繁に使用される.

表7 遺伝学的検査で用いられる方法

1 分子遺伝学的診断法(遺伝子解析法)

1)PCR/ 塩基配列決定法(サンガー法) 2)MLPA * 法3)マイクロアレイ染色体検査4)次世代シーケンス(NGS)法

パネル解析全エクソーム解析法全ゲノム解析法

2 遺伝生化学的診断法

1)新生児マススクリーニング2)酵素診断3 細胞遺伝学的診断法(顕微鏡観察により行う染色体検査)

1)染色体検査(G 分染法) 2)FISH ** 法* MLPA:  Multiplex ligation-dependent probe amplification, ** FISH: fluorescence in situ hybridization(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)