GL検索 v0.1.0
画像は 13 ページを描画したものです
page 13

p.13 抽出テキスト

析などのことである.一方で,「cascade screening」とは,患者において病的バリアントが検出されている場合の血縁者における遺伝学的検査として,主にサンガー法によるシングルサイト解析として実施されるものである.そこで,この2 つの遺伝学的検査を行う際に留意すべき点を以下に示す(表5).

なお近年,臨床検査(保険,非保険)として実施されているがん遺伝子パネル検査や,研究として実施されている稀少未診断疾患やがんに対する網羅的遺伝子解析(全エクソーム解析,全ゲノム解析)の際に,二次的所見(secondary findings)として遺伝性循環器疾患の原因遺伝子に病的バリアントが見つかり,循環器診療を行う診療部門がその取扱いに関してコンサルテーションを受ける場合が出てきた.

国内で保険収載されているがん遺伝子パネル検査には,遺伝性循環器疾患の遺伝子が含まれている(Loeys-Dietz症候群の原因遺伝子SMAD3,TGFBR1,TGFBR2).網羅的遺伝子解析実施に開示を考慮すべき遺伝子としては,米国臨床遺伝・ゲノム学会(American College of Medical Genetics and Genomics: ACMG)が提唱するガイドライン(2023 年2 月時点での最新版はv3.2)が参照される(表6) 9).

遺伝性循環器疾患においては,未成年(18 歳未満)の遺伝学的検査は,患者の診断(patient analysis),血縁者の診断(cascade screening),いずれもの場合も有用性が高いことが多い10).適切な循環器サーベイランス,早期からの薬物投与(先天性QT 延長症候群[long QT syndrome: LQTS]におけるβ遮断薬投与,Marfan 症候群におけるβ

遮断薬・アンジオテンシン受容体遮断薬投与など)や生活上の工夫(激しい衝突系の運動を控え,安心して取り組めることを相談するなど)などに役立てられるからである11).

3 循環器診療部門と 遺伝子医療部門の協働による 遺伝学的検査の実施

遺伝学的検査を,遺伝性循環器疾患を有する患者・血縁者の診療に役立てるためには,循環器診療部門(循環器疾患の診療を専門とする部門)と遺伝子医療部門(遺伝性・先天性疾患の診療を専門とする部門)が協働して実施することが望ましい.

日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」1)では,「遺伝学的検査の事前説明と同意・了解の確認は,原則として主治医が行う.また,必要に応じて専門家による遺伝カウンセリングや意思決定のための支援を受けられるように配慮する」とされている.循環器疾患領域の専門医(循環器内科医,心臓血管外科医,小児循環器医,小児心臓外科医など)が遺伝学的検査を提出する施設が多いと考えられるが,結果報告書には,「病的(pathogenic)」「病的である可能性が高い(likely pathogenic)」といった疾患原因として確定的な解釈が可能なものばかりではなく,「病的意義不明のバリアント(variant of uncertain significance: VUS)」など解釈と患者への説明に

表5 遺伝学的検査を行う対象別に留意すべき点

留意点Patient analysis Cascade screening

身体的侵襲は皆無ではない.しかし,通常は採血という最小限のものである.想定した遺伝子に病的バリアントが検出されないことがある.

• 解析した遺伝子に実際には病的バリアントがあるにもかかわらず技術的限界で検出できない可能性• 解析していない遺伝子もしくはゲノム領域に病的バリアントがある可能性• 遺伝子の異常とは関係ない機序である可能性検出されたバリアントの病原性が確定できないことがある(病的意義不明のバリアント[variants of uncertain significance: VUS]).病的バリアントが見つかり,当該疾患と診断できたとしても,どういった合併症がいつから生じるかといった個別具体的なことはわからない.病的バリアントそのものを修正するといった治療は現時点ではできない.患者自身の今後の病状(進行,他に生じやすい病変など)や血縁者の罹患に関して心理的負担を生じる可能性がある.早期の診断の場合,心理的社会的負荷を生じる可能性がある.