p.11 抽出テキスト
的健康管理法について再度十分に説明する.とくに,発症の予防法や発症後の根本的治療法が確立されていない疾患の発症前遺伝学的検査においては,検査前後の受検者の心理への配慮および支援は必須である.また,出生前遺伝学的検査および着床前遺伝学的検査は,医学的にも社会的および倫理的にも留意すべき多くの課題がある.心臓血管領域で適用されるケースはきわめて稀である. 本ガイドラインでは,多因子疾患の遺伝学的検査や全ゲノムを対象とする網羅的遺伝学的検査については対象としていないが,検査を実施するにあたっては科学的根拠を明確にしたうえで実施することが求められる.また,「未診断疾患イニシアチブ(initiative on rare and undiagnosed diseases;IRUD)」5)や「難病ゲノムデータ基盤構築にむけた先行的な全ゲノム等解析研究」などのような先駆的な施策においては,当初の検査目的ではない,二次的所見が認められるケースがある.受検者が罹患していない疾患の病的バリアントなどが該当し,本人のみならず家族にも有益な情報となりうるが,その取り扱いについては事前に十分考慮する必要がある6). 3 個人情報の保護 すでに発症している患者の診断を目的として実施された遺伝学的検査の結果や遺伝カウンセリングについては,「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成 29 年 4 月 14 日医政発 0414 第 6 号) 7),や「診療情報の提供等に関する指針」(平成 15 年9月 12 日医政発第 0912001 号) 8)に基づき,診療の記録として取り扱われるため,診療録に記載し,長期間保持される必要がある.臓器横断的な情報であり,複数の診療科・多くの医療者により利活用されるが,同時に患者本人のみならず,血縁者に影響しうる情報であるため,遺伝情報にアクセスできる医療従事者に対して,遺伝医学の基本的知識および個人の遺伝情報の適切な取り扱いに関する事項について充分な教育・研修が求められる. 遺伝学的検査は血縁者にも配慮して検査をする反面,検査結果について受検者の同意なく血縁者を含む第三者へ開示してはならない.ただし,受検者の検査結果が血縁者の健康管理に役立ち,かつ他に同等の方法がない場合には倫理委員会等での承認を得て開示することも考慮される. 4 遺伝情報を扱う研究において 留意すべき指針など また遺伝子解析研究は本ガイドラインの適合範囲ではないが,その解析結果を被検者に開示する場合には,医療における遺伝学的検査の結果として得られる情報と同等であることから,本ガイドラインに従うことが望ましい.また,別に「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(2023 年改訂) 2)に則って実施する必要がある. 第3章 遺伝学的検査の目的 1 遺伝学的検査の目的 診療の一環で行われる遺伝子解析はクリニカル・シークエンスと呼ばれ,保険または非保険で実施されている.生殖細胞系列を解析する場合,遺伝学的検査と呼ばれる.遺 伝学的検査の目的は,遺伝情報を患者およびその血縁者の診療に役立て,その健康に貢献することである. 遺伝学的検査の実施は,すでに発症している患者に対する,診断の明確化,治療の選択と最適化,診療管理,発症後の病態進展予防や長期予後把握につながることはもちろん,未発症者の発症予防や早期診断・早期介入に対して有