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p.9 抽出テキスト

第1章 睡眠呼吸障害総論

1 正常睡眠と睡眠障害

1.1 正常睡眠

睡眠は健康の維持および身体が正常に機能するために必須である4).心拍数と血圧には日周リズムがあり夜間に低下する.通常の24 時間血圧パターンとして,睡眠中では昼間の10% 以上収縮期血圧が低下する.しかし,睡眠不足や睡眠障害は,この生理的パターンを変化させ,循環器疾患の誘因となりうる.ヒトの正常睡眠は,浅いノンレム睡眠から始まり,深いノンレム睡眠に進行する.レム睡眠は睡眠開始80 ~100 分後に出現し,ノンレム睡眠と約90分周期で交互に周期的に繰り返される(図1).通常,睡眠の前半に深睡眠が集中し,睡眠の後半にはレム睡眠の割合が多くなる.加齢により深睡眠は減少し,中途覚醒や浅睡眠が増える.一方,レム睡眠は加齢により減少せず全体の20 ~25% である(図2) 5, 6).睡眠は,前日の睡眠不足,睡眠相のずれ,寝室の温度,内服薬や睡眠障害などの影響を受ける.たとえば,重症SDB 例では,深睡眠が著しく減少し,頻回の中途覚醒や翌日の日中の眠気をきたす. 1.2 睡眠の評価

睡眠状態の客観的評価には,睡眠ポリグラフ(polysomnography: PSG)がもっとも有用である.PSG では就寝中の脳波,眼球運動,筋電図,心電図,酸素飽和度,呼吸センサー,吸気努力を同時に記録する.これにより睡眠段階,睡眠効率,中途覚醒時間,入眠潜時などの評価が可能である.不眠症患者の自覚的な入眠潜時や中途覚醒時間と,PSG 上の客観評価による値が乖離することはまれではない.また,PSG では赤外線カメラにより,睡眠中の異常運動・異常行動の観察が可能である.さらに,レム睡眠行動異常症の診断に必須である睡眠時随伴症である筋活動消失を伴わないレム睡眠(REM sleep without atonia: RWA)の検出や,レストレスレッグス症候群(RLS)に高率に合併する睡眠中の周期性四肢運動(PLMS)の検出が可能である.

睡眠に関連する眠気の評価方法には,客観的な評価(反復睡眠潜時検査[MSLT],覚醒維持検査[MWT])と主観的な評価がある.MSLT,MWT については,循環器領域で行われる機会は少なく,詳細は成書を参考されたい.主観的な眠気の評価はエプワース眠気尺度(Epworth sleepiness scale: ESS) 7)を用いることが一般的である.24点満点で,通常11 点以上の場合に主観的な眠気があると判断する.

図1 健常成人(20 歳)の睡眠経過図W: 覚醒,R: レム睡眠,N1 ~N3: ノンレム睡眠

W R N1 N2 N3

22:00 23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00

Stage

睡眠段階