p.76 抽出テキスト
13.2 関連のメカニズム 頻回かつ重度の間欠的低酸素血症やOHS では,持続的低酸素血症による肺血管攣縮から肺動脈リモデリングを起こすことが機序として想定されている892-894).一般的に, SDB に伴うPH における肺動脈圧上昇の程度は軽く,平均肺動脈圧は25 ~30 mmHg 程度にとどまる893).OHS でも同程度にとどまるという報告もあるが,平均肺動脈圧が40 mmHg という報告もありさまざまである895).SDB は左室拡張末期圧の上昇もきたすこともあり896),その場合は左心不全に合併し,また慢性閉塞性肺疾患(COPD)との合併も知られているため,より重度のPH を認める場合は,左心疾患によるPH や,COPD によるPH の存在を念頭に 入れる必要がある.OHS に関しては同じ程度の肥満を有する非OHS に比べ生命予後不良である897).一方で,肺疾患および/ または低酸素血症による肺高血圧症患者のコホート研究では,OHS 合併肺高血圧症例の3 年生存率は90% であり,他の肺疾患および/ または低酸素血症による肺高血圧症のなかでもっとも予後良好であった898).また,低換気に伴う低二酸化炭素血症が肺高血圧症に関連するという報告もある895). その他,SDB は静脈血栓症のリスク因子となることから,第4 群に含まれる慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の関連も示されている899, 900). 13.3 PH 合併OSA の診断 PH はまず,労作時呼吸困難,全身倦怠感などにより疑う901).次に,心電図(右軸偏位や右室肥大など),胸部X線写真(肺動脈拡張傾向など)から何らかの心血管疾患の存在が疑われた場合,心エコー・ドプラ法によりPH の推定と半定量評価を行う901).PH の原因検索として,まず左心疾患の有無を検索する.次に肺疾患(低酸素血症の含む)の存在を検索し,これらが否定されれば,第1 群の肺動脈性PH か,第4 群のCTEPH の可能性が高いと判断される901).膠原病や先天性心疾患,門脈圧亢進症などの肺動脈性PH の原因となりうる疾患を検索し,心臓カテーテル検査にて肺血行動態を評価し,PH と診断する901).PH はこれまで,安静時平均肺動脈圧が25 mmHg 以上と定義されてきたが,2018 年2 月末のニース会議で,その定義を変更する提言がなされ887),2022 年8 月のESC/ERS のガイドラインでは平均肺動脈圧20 mmHg より高値と修正された. SDB の診断は他項の記載の通り,スクリーニングを行い,一部の重症例は簡易モニターにて治療導入が,多くの場合は入院で行うPSG にて診断を確定する.左心疾患の存在やCOPD の存在の確認のために心臓超音波検査や呼吸機能検査を行う. 13.4 PH 合併OSA の治療効果 肥満傾向のあるSDB 患者やOHS においては,根治的な治療となる可能性があるので減量を促す902).しかしながら,減量は困難であることが多く,対症療法ではあるがSDB に対してもっとも効果的な治療であるCPAP が用いられる(表46) 903).数ヵ月間のCPAP 治療により肺動脈圧が低下したという少数例のRCT を含む複数の報告がなさ 表46 PH の臨床分類(改訂版) 1 肺動脈性肺高血圧症(PAH) 1.1 特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH) 1.2 遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH) 1.3 薬物・毒物誘発性肺動脈性肺高血圧症1.4 各種疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症1.4.1 結合組織病1.4.2 HIV 感染症1.4.3 門脈肺高血圧1.4.4 先天性心疾患1.4.5 住血吸虫症1.5 カルシウム拮抗薬に長期にわたり反応する肺高血圧症1.6 肺静脈閉塞性疾患(PVOD)および/ または肺毛細血管腫症(PCH) 1.7 新生児遷延性肺高血圧症(PPHN) 2 左心疾患に伴う肺高血圧症 2.1 HFpEF に伴う肺高血圧症2.2 HFrEF に伴う肺高血圧症2.3 心臓弁膜症2.4 後毛細血管性肺高血圧症につながる先天性/ 後天性心血管疾患 3 肺疾患および/ または低酸素による肺高血圧症 3.1 閉塞性肺疾患3.2 拘束性肺疾患3.3 拘束性と閉塞性の混合障害を伴う他の肺疾患3.4 肺疾患を伴わない低酸素症3.5 先天性肺疾患 4 肺動脈閉塞に伴う肺高血圧症 4.1 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH) 4.2 その他の肺動脈閉塞症 5 詳細不明な肺高血圧症 5.1 血液疾患5.2 全身性疾患5.3 その他5.4 複雑先天性心疾患(Simonneau G, et al. 2019 887)より) Reproduced with permission of the © ERS 2023.