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p.74 抽出テキスト

患者について,20 人ずつCPAP 治療を行う群と行わない群に分けてその後の認知機能を検討した結果,CPAP 治療群において有意に認知機能の改善を認めている874).同様にOSA を有する基底核の脳卒中患者の観察研究にて, CPAP 治療6 ヵ月後に,SDB 指標の改善とともに, National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS),Fugl- Meyer Assessment Scale(FMA),Barthel Index(BI), Minimental State Examination(MMSE),Hamilton Anxiety Scale(HAMA),Hamilton Depression Rating Scale for Depression(HRSD)のスコアを,コントロール群と比べて有意に改善させた(P <0.05) 875).このように小規模ながら,CPAP による神経学的な改善効果が示されたものもあるが,有意差の出なかった研究結果も多い. CPAP の効果がみられなかった一因としては,CPAP アドヒアランス不良が考えられるため,今後は十分なCPAP 使用状況を維持した大規模な臨床研究の報告が待たれる.

このように,脳卒中患者においても十分なSDB 治療によって予後改善が期待されているが,現時点ではさらなるエビデンスの蓄積が必要である.眠気などの自覚症状の改善やQOL 改善を期待して,脳卒中患者でもSDB スクリーニングを積極的に行い,とくに中等症から重症のSDB ではCPAP など適切な治療をすることが勧められる.

12 大動脈疾患/ 末梢動脈疾患(表44)

動脈硬化や炎症を主体とする大動脈解離(AD),大動脈瘤,末梢動脈疾患(PAD)は,SDB に関連して発症する可能性がある.胸部AD や胸部大動脈瘤は動脈硬化のみならずOSA による胸腔内陰圧による大動脈への直接刺激も発症に寄与すると考えられる.日本循環器学会の「2020 年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」876)では, SDB によって大動脈瘤の瘤径拡大率が高くなることが記載されているが,SDB の診断・治療についての推奨事項はなく,「2022 年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン」877)ではSDB に関する記載はない.

12.1 大動脈解離

AD に合併するSDB はOSA が主である97).OSA のAD 発症に関わる病態として,閉塞性無呼吸時の吸気努力による胸腔内陰圧化,無呼吸から覚醒する際の交感神経過活性を介した血圧上昇,OSA による間欠的低酸素血症と再酸素化を介した酸化ストレスが考えられる.吸気努力による胸腔内陰圧化は-50 ~-80 cmH2O に及ぶと報告さ

れ878, 879),大動脈の血管壁ストレスの原因となりうる880, 881). OSA における交感神経活性亢進は夜間のみならず日中にも遷延するとされ,交感神経過活性を介した夜間高血圧,日中の血圧高値に影響し,動脈硬化や大動脈壁へのストレス増大に寄与する.また,OSA による酸化ストレスは血管内皮障害を介して大動脈のリモデリングに関わると考えられる.一方,OSA を合併するAD 患者では,ほかの動脈硬化性疾患と同様にESS が高くないとされており97),AD患者では主観的眠気の有無に関わらずSDB のスクリーニングを行うことが望ましい.

AD とSDB の重症度の関連については,胸部AD 症例と年齢・性別・体格をマッチさせた高血圧症例との比較において,胸部AD 症例におけるAHI が有意に高く97),わが国の研究でもAD 症例では重症SDB を合併する割合が高いことが報告されている96).SDB 合併AD の予後に関するエビデンスはないが,AD 症例における下行大動脈の偽腔拡大とOSA の重症度に関連があることが報告されており,AHI 5 ~30 で大動脈径の拡大が1 ~3 mm/ 年である一方,重症OSA(AHI ≧30)では7.5 mm/ 年と偽腔拡大率が有意に高かった882).OSA に対するCPAP のAD 発症および再発抑制効果についてはエビデンスがない.

12.2 大動脈瘤

胸部大動脈瘤/ 腹部大動脈瘤に合併するSDB はOSAが主である.AD と同様に,OSA の大動脈瘤発症に関わる病態は無呼吸から覚醒する際の交感神経過活性を介した血圧上昇,OSA による間欠性低酸素血症と再酸素化を介した酸化ストレス,および閉塞性無呼吸時の吸気努力による胸腔内陰圧化が考えられる.無呼吸から覚醒する際の血圧

表44 大動脈疾患/ 末梢動脈疾患におけるSDB の評価と

治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

大動脈解離患者にSDB の臨床症状の聞きとりとスクリーニング検査を行うI C大動脈瘤患者にSDB の臨床症状の聞きとりとスクリーニング検査を考慮してもよいIIb C OSA を合併するMarfan 症候群における大動脈拡大予防を目的としてCPAP 治療を考慮してもよいIIb C末梢動脈疾患患者にSDB の臨床症状の聞きとりとスクリーニング検査を行うI C