p.73 抽出テキスト
であった855).50 歳以上を対象にした平均3.4 年間の観察研究によれば,AHI ≧5 のOSA 患者群における脳卒中および死亡のリスクは対照群に比して有意に高い(オッズ比: 1.97) 86).別の報告でも,AHI ≧5 であるだけで,脳卒中の発症リスクが2.89 倍高まるといわれている856).脳卒中の病因別割合は,小動脈閉塞(39%),大動脈(22%),出血性(20%),心原性(15%)と報告されているが,この報告ではOSA 患者においてはOSA のない場合に比して,小動脈によるラクナ梗塞が多い(44% vs. 26%) 857).また, SDB は脳卒中のリスクと同時に血管性認知症のリスクも増加させる858).脳卒中の発症時間別の検討では,起床時に脳卒中症状がみられた群40 人中,OSA を29 人(72.5%)に認め,日中覚醒時に脳卒中を発症した群67 人中30 人(45%)にOSA を認めたこと859)から,前者において有意にOSA 合併が多く,OSA は睡眠中に脳卒中を起こしやすい一つの要因であると考えられる. 脳卒中予防に対するCPAP 治療の有効性に関して, RCT の結果では全体としては治療群と非治療群に差が認められなかった393, 860).CPAP 治療のシステマティック・レビュー(9 つのRCT と4 つのコホート研究)においても,コホート研究ではCPAP による有意な脳卒中リスク低下がみられたが,9 つのRCT では有意差がなかった861).しかし,RCT のサブグループ解析では,中等症から重症のSDB(AHI >15)だけを対象にして,かつ十分なアドヒアランスを保ってCPAP を使用すると脳卒中を減少させることが報告された. 11.3 脳卒中二次予防 脳卒中発症後の症例を検討しても,SDB 合併が多いことが報告されているが,脳卒中生存者のみを対象としていることに注意が必要である.また,脳卒中患者のSDB 合併は多いが,実際に脳卒中患者でのスクリーニングはあまり積極的に行われていないことが多く862),啓発が必要である.SDB スクリーニングのアンケートとしてSTOP- BANG リスクスコアを使うが,脳卒中患者で調べると,中大脳動脈の血流測定による血管反応性が低下している群において有意にSTOP-BANG スコアが高かったという報告863)や,無呼吸イベント時に脳血流が低下することが報告されている864). 一過性脳虚血発作を起こした患者におけるSDB 有病率は,AHI ≧10 のSDB が62% であり,これはコントロール群の12% に比して有意に多い865).同様に,急性の脳梗塞や一過性脳虚血発作の患者に施行した検査で,62.8% と高率にAHI ≧5 のSDB が指摘されている866).また,脳卒中におけるOSA の合併率は,AHI ≧5 で75%,AHI ≧15 で57% と報告されている697).脳卒中の急性期では,脳卒中自体による呼吸中枢などに対する脳障害の結果, OSA のみならずCSA が引き起こされる可能性もある.脳血管障害発症後にリハビリテーション目的で入院した患者132 人における検討では,OSA,CSA,混合型の合併頻度は各々17%,21%,1.5% であったと報告されている867).脳卒中の二次予防にも,CPAP 等のSDB 治療が必要であると考えられるが,脳卒中後のSDB 患者に対して, 22% しかSDB の治療が行われていなかったという報告もある868). 11.4 脳卒中患者のSDB 治療 脳卒中患者においても軽症OSA であれば,非脳卒中患者と同様に減量,体位療法などを行い,軽症から中等症の場合,あるいは比較的やせ型ではOA を作成することもある.中等症から重症のOSA に対しても非脳卒中患者と同様にCPAP 治療等を検討する.CPAP に関して,脳卒中患者,とくに高齢者や,麻痺で手指不自由がある場合などはマスクの装着などで家人など介助者の助けが必要なことが多い.マスクの装着が困難な場合は重症例であってもOAを選択することもある.脳梗塞後のCPAP 使用率を検討した研究では,191 人のCPAP が必要なSDB を有する脳梗塞患者において,3 ヵ月後,6 ヵ月後,12 ヵ月後,24 ヵ月後,60 ヵ月後のCPAP 使用率はそれぞれ,58%,53%, 48%,45%,39% 857)と脳梗塞発症後,徐々に減少傾向を認めた.とくに最初の3 ヵ月での脱落例が顕著であり,導入時期に継続して使えるかどうかが重要である. 脳卒中のSDB 合併症例にCPAP を使用し,予後を検討した臨床研究は,数十人程度の小規模なものが多く,十分な効果が得られた報告は少ない.1 ~2 ヵ月程度の短期間CPAP 使用で,一晩あたりのCPAP の使用時間が短い研究では,神経学的機能に有意な改善を認めなかった869, 870). 22 人ずつのCPAP 群とコントロール群を比較した試験では,CPAP が平均約5 時間程度使用されており,CPAP 群において神経学的機能改善が示された871).CPAP 群(20人)とコントロール群(16 人)の比較では,CPAP 使用平均時間が一晩あたり2.5 時間と短かったものの,脳梗塞後の認知機能を改善させたという報告もある872).CPAP 使用開始後1 年間フォローした研究では,CPAP の平均使用時間が4.2 時間,平均76% の日数使用率で,CPAP 群34 人とコントロール群36 人の比較したところ,血管イベントはそれぞれ1 人(3.33%),6 人(15%)と少数であったが差はなかった873).また,脳卒中後にOSA と診断された40 人の