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p.72 抽出テキスト

がCPAP 効果を減弱させた可能性がある.SAVE 試験も含めたメタ解析や2016 年に報告されたRICCADSA 試験などは,CPAP のアドヒアランスが良好な症例では心血管イベント発症率が低下すると報告している394, 847, 848).ただし,SAVE 試験で,CPAP 群からアドヒアランス良好群を抽出して,コントロール群と比較しても結果が変わらなかったとの報告もあり,SAVE 試験で有意差が出なかったことをCPAP アドヒアランス不良だけに求めるのは難しいとも考えられている393, 849).また,SAVE 試験では研究対象者の選定も,CPAP 効果を弱めた可能性がある. ESS ≧15 の重度の眠気がある対象者と重症の低酸素(SpO2 ≦80% が記録時間の10% 以上)が研究から除外されている点である.これは倫理的な観点からOSA を対象としたRCT の限界であるともいえる.本研究は重症のOSA 患者を対象から除外している研究であり,軽症~中等症のOSA が多くなったためにCPAP 効果が減弱した可能性も考えられる.

その後にも,虚血性心疾患患者に合併したOSA に対するCPAP が心血管イベントを抑制するかについていくつかの報告があったが,有意なCPAP 治療の効果が認められたものはない.OSA を有する冠血行再建術後患者をCPAP治療群と無治療対照群に無作為に割り付けしたRICCADSA 試験では,心血管死,心筋梗塞,脳梗塞ならびに再血行再建術の施行を含む複合イベントの発生は,両群間で差がなかった848).しかし,この試験でもCPAPの平均使用時間が一晩あたり4 時間以上であることは,主要エンドポイント発生リスクの低下と関連していたとしている.

さらに,OSA を有するACS 患者に,CPAP 治療群と無治療対照群に無作為割り付けしたISAACC 試験の結果では,SAVE 試験と同様に,日中の眠気などの改善は認めたが,心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,不安定狭心症・心不全・一過性脳虚血発作による入院を含む複合イベントの発生は両群間で差がなかった68).この試験でもCPAP 群のCPAP の平均使用時間が一晩あたり2.8 時間と短く,イベント発生に有意差が生じなかった理由として挙げられる.重度の低酸素を有している虚血性心疾患や4時間以上のCPAPを使用した場合は効果がどうなるかなど,さらなる研究結果が待たれるところである.

11 脳卒中(表43)

脳卒中や一過性脳虚血発作の既往があると,高率にSDB を有していることが知られている850).SDB は脳卒中

を含めた血管疾患のリスクを上昇させる可能性があり,実際にSDB は脳卒中の独立したリスク因子であると報告されていることから851, 852),脳卒中の予防のために適切なSDB の診断と治療を行う必要がある.

11.1 関連のメカニズム

SDB が脳卒中発症のリスクを上昇させるメカニズムは,以下のように考えられる.SDB による気道抵抗の増大や低酸素・高炭酸ガス状態から,覚醒反応の繰り返しが起こり,交感神経の亢進や酸化ストレスを増加させる.交感神経の亢進は無呼吸後の覚醒と呼吸再開に一致して認め,一過性のものである853)が,頻回の無呼吸は,繰り返し交感神経活動を亢進させ,重症例では日中の交感神経活動亢進の原因となりうる.24 時間血圧計で測定を行うと,SDB 患者においては高血圧(non-dipper 型)になることが多く,早朝高血圧を認める587, 854).睡眠中の無呼吸に一致して,血圧が200 mmHg 以上にまで急上昇する症例も報告されている.このような交感神経亢進は重症のSDB の場合,一過性で留まらず,日中にも持続するようになり167),血圧上昇や耐糖能異常,脂質異常などメタボリックシンドロームを介したアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞,脳出血が増加する.低酸素による多血症も一つの要因である.その他,異なるメカニズムとしてSDB による心房細動発症増加によって起こる心原性脳梗塞もSDB がもたらす脳卒中として重要である.

11.2 脳卒中一次予防

SDB には,肥満症例のようにメタボリックシンドロームを合併する症例も多いため,最終的には動脈硬化の進展を通じて脳卒中発症の促進要因になると考えられる.心房細動の合併が多いことも,脳卒中の発症リスクとなりえる.実際,SDB に関心が高まったころに発表された重症SDB患者の予後の悪化原因は心筋梗塞と脳出血の増加が主体

表43 脳卒中におけるSDB の評価と治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

SDB の臨床症状の聞きとりとスクリーニングを検査行うI B脳卒中患者の機能予後改善を目的としてCPAP 治療を考慮するIIa B