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改訂にあたって 睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing: SDB)は睡眠障害のなかでもっとも頻度が高い病態の一つであり,わが国でも居眠り運転に起因する交通事故に関連し,メディアなどでたびたび取り上げられ,社会的な関心も高い疾患である.一方で,SDB は,さまざまな循環器疾患に合併し,循環器疾患の悪化に関与するだけでなく,循環器疾患の発症そのものに関与することも示唆され,循環器領域においても重要なリスク因子の一つと考えられている.このようなことから,SDB の診断・治療は,循環器領域の診療を担当する医師にとって大変重要であると認識されるようになり,2010 年に循環器領域の診療に携わる医師を対象としたSDB の診療に関する初めてのガイドラインとして「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」が発行された.このガイドラインによって循環器領域におけるSDB の重要性に関する認識がさらに高まり,循環器領域の診療を担当する多くの医師がSDB に注目するようになった.一方で,2022 年に報告された2012 ~ 2019 年のJROAD-DPC データにおける入院患者での推移をみると,とくにここ数年の実際の診断検査数や治療導入数はまだまだ十分といえない状況である1).さらに2010 年のガイドライン以後,循環器領域のSDB に関して,さまざまなエビデンスが示され,とくに心不全のSDB においては陽圧呼吸療法が短期的な心機能改善に寄与することが多数示された.しかしながら,いくつかの臨床試験の結果が報告されたものの,SDB への治療で長期予後を改善するか否かに関しては明確な答えが出ておらず,収縮能の低下した慢性心不全の中枢性睡眠時無呼吸に対する適応補助換気(adaptive servo ventilation: ASV)の心血管転帰をみたSERVE-HF 試験では,むしろ有害ともとれる結果が出たことで大きな混乱をきたした.これらの理由に関しては,治療に対するアドヒアランスの問題などが考えられているが,いまだ明らかではない.当時,これらの結果も踏まえ,「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」の改訂が検討されたが,同時期に日本呼吸器学会を中心として「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」2)の準備が進められていたこともあり,これと時期をずらす形で,より新しいエビデンスを含めて「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療 に関するガイドライン」の全面改訂を今回行うこととなった.SDB が複数の臓器や組織,疾患にかかわる病態であるため,前回と同様に,さまざまな学会を代表する先生方にご参画いただき策定に至った. 本ガイドラインは2010 年のガイドラインの内容をUpdate し,循環器診療を担当する医師のSDB に対する認識をさらに高め,必要な症例に対して診断・治療導入を適切かつ十分に行うことの一助となることを目的としている.したがって,日常診療で診断・治療に関して診療マニュアル的に検索されることも想定し,クリニカルクエスチョンを設定し,GRADE システムに基づきシステマティック・レビューを行って推奨度を明示する形式は採用せず,従来の形式を踏襲した.2010 年のガイドライン以降のエビデンス,さらには「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」がカバーしている2017 年以降のエビデンスについても網羅的に触れるように心がけたが,ほかの循環器領域と異なりランダム化比較試験(RCT)やこれに準じるエビデンスの蓄積が十分でない事柄が多いことから,「Minds 診療ガイドライン作成の手引き」に準拠した形ではなく,従来の日本循環器学会作成のガイドラインと統一性を保つ形式として,「エビデンスレベル」(表1)と,「推奨クラス分類」(表2)の様式を採用した.「エビデンスレベル」と「推奨クラス」は,これまでの国内外の既出の論文に基づいて執筆担当者が判断し,最終的にはほかの班員および外部評価委員の見解も含め議論のうえで決定した. 2014 年に示された国際睡眠障害分類第3 版(The International Classification of Sleep Disorders 3rd: ICSD- 3) 3)では,SDB という言葉ではなく,睡眠関連呼吸障害(sleep related breathing disorder)とされているが,後者の日本語訳も英語もまだ一般的ではないこと,循環器領域では「循環器領域における“ 睡眠呼吸障害” の診断・治療に関するガイドライン」ということで浸透してきた経緯を踏まえ,本ガイドラインにおいてもSDB という言葉をそのまま使用した.また2010 年のガイドラインでも述べられているように,循環器領域に関連した研究では,自覚症状の有無を問わずに無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index: