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p.68 抽出テキスト

8.2.3 SDB に合併した心房細動の治療

OSA に併発する心房細動は抗不整脈薬による洞調律維持効果が少ないことが報告されており788),有症候性心房細動では発作性・持続性ともにカテーテルアブレーションが治療選択として挙げられる455).1998 年に,肺静脈から発生する期外収縮が契機となり心房細動が発症することが報告された789).その後,3 次元マッピングシステム・アブレーションカテーテルの進歩,バルーンテクノロジーの発達によって,心房細動に対する有効性・安全性はここ10年間で飛躍的に向上してきている.「2021 年JCS/JHRS ガイドラインフォーカスアップデート版不整脈非薬物治療」でも,有症候性発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションは推奨クラスI,低心機能を伴う心不全を有する心房細動症例においても推奨クラスIIa の治療として位置づけられている455, 790).ただし,肺静脈隔離術が成功したとしても,OSA に対する適切な治療がなければ有意に再発率が高くなることが示されている791).これは,心房細動罹患期間が短い場合,肺静脈からの心房期外収縮がトリガーの中心となるため,肺静脈隔離を施行して洞調律を維持できたとしても,OSA があると,心房全体に不整脈原性基質を形成するために,心房筋のリモデリングが潜在的に進行するため,肺静脈以外からの心房期外収縮の発生によって心房細動が再発することが考えられる.一方で,カテーテルアブレーション後のCPAP 治療導入例では,未導入症例に比して心房細動再発率が約50 ~60% 抑制されることが報告されている774, 791).メタ解析では,SDB 合併心房細動においてCPAP は心房細動再発を37% 低減したと報告されている792).また,禁酒や体重管理も心房細動発症予防に有効であるため,OSA の治療とともに包括的な治療が重要とされる793, 794).

心房細動では,脳梗塞・全身塞栓症の発症リスクが増加することが知られており,リスクに応じて抗凝固療法が導入される.欧米諸国ではCHA2DS2-VASc スコアが用いられているが,わが国での統合解析の結果,血管病変(V),年齢65 歳以上75 歳未満(A),女性(Sc)は血栓塞栓症のリスクとはならないことが明らかとなり,CHADS2 スコアが踏襲され広く使用されている795).とくに,高血圧,糖尿病,心不全は心房細動の脳梗塞や全身塞栓症のリスク因子としても知られており796),不整脈自体の治療ではないが,リスクに応じた抗凝固療法の適応について検討する必要がある795).OSA 自体では抗凝固療法を考慮する病態とはならないが,脳梗塞の独立したリスク因子であることが報告されている797).心房細動カテーテルアブレーションで洞調律を維持できていたとしても,CHADS2 スコアが2 点以上の場合には,抗凝固療法は継続することが望ましい.1 点

以下の場合であっても,心房細動再発のリスクはあり,慎重な経過観察が必要である.心房細動の治療方針を決定するうえでもっとも求められるものは,年齢や心房細動の進行度,症状の強さの3 要素であることを勘案して,薬物治療・非薬物治療の有益性と危険性を患者および家族に説明する.そして,患者自身からは,価値観や個人的・社会的な情報を提示し,お互いに情報を共有することである.

9 頻脈性不整脈(心室・突然死)

9.1 心室性不整脈・突然死とSDB

SDB 患者における心室性不整脈・突然死発症機序を検討した報告は少ない.SDB に伴う繰り返される全身の低酸素血症は,心室心内膜側での虚血を惹起し,突然死をきたす構造的・電気的リモデリングの形成に寄与する798).とくにL 型カルシウムチャネルの心室心内膜側での発現増加からQT 間隔が延長することが報告されている799).細胞内カルシウムの増加は,撃発活動の発生を助長し致死性心室性不整脈を発症しうる.また,間欠的な低酸素状態は交感神経活性亢進を引き起こし,心室性不整脈発生に寄与する(図25).実際に,SDB 患者では,重症度に応じてQT 間隔が延長することが報告されている.心室性不整脈の予測因子として用いられるTp-Te(T 波のピークと終末部の間隔)やQTc で補正したTp-Te/QTc は,OSA 患者でも増大し,予後と関連することが示唆されている800).非持続性心室頻拍の発生は,閉塞性無呼吸エピソード中もしくはその直後に多く,17.4 倍にも上り,低酸素状態,自律神経活動の変化,胸腔内圧の陰圧化の関与が示唆されている782)(図25).

OSA 患者における心臓突然死の頻度に関するデータは限られているが,PSG を施行した10,701 人での検討では平均観察期間5.3 年で蘇生された症例を含む心臓突然死が142 人で確認された801).このコホート研究での心臓突然死発症リスクは1 年あたり0.27% となる.多変量解析の結果では,睡眠中の最低酸素飽和度は心臓突然死の発症リスクの独立したリスク因子(10% 低下ごとに14% のリスク増加)であることが示された801).AHI は独立したリスク因子とならなかったが,睡眠中の低酸素が突然死に関連していることを示した重要なコホート研究と考えられる.OSA と心臓突然死は,年齢,高血圧,心不全,糖尿病,脂質異常症,