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p.65 抽出テキスト

提唱されている760).睡眠中の徐脈の多くは生理的な反応であり無症候性であるため,治療介入の必要がない.2018年の「徐脈性不整脈に対する評価と管理に関するACC/ AHA/HRS ガイドライン」では,睡眠中に生じる洞性徐脈や一過性の洞静止・房室伝導障害に対してペースメーカ植込みを行うべきではない(Class III)と明記されている761).

7.2 SDB に関連した徐脈性不整脈

SDB を有する症例においては,おもに無呼吸イベント中に徐脈や伝導障害を生じる頻度が高い762, 763).SDB の400人(平均49 歳)に終夜PSG とホルター心電図を施行したところ,43 人に2.5 ~13 秒の洞静止を,31 人にII 度房室ブロックを認めた763).徐脈頻脈反応の典型的なパターンとしては,無呼吸発作時に徐脈となり,無呼吸発作の終了時に頻脈や高血圧となることが知られている81).その機序としては無呼吸発作により低酸素血症が生じ,それに続く覚醒反応を繰り返すことで急激な自律神経緊張の変動をきたし伝導障害を引き起こすとされており,酸素投与により徐脈が改善することも報告されている173).SHHS ではSDBを有している群はそうでない群に比して心室性期外収縮や心房細動が有意に多かった.一方で,徐脈性不整脈に関しては有意差を認めなかったと報告されているが81),平均年齢が71 歳と高く自律神経活動の変動が減弱していた可能性が示唆されている.睡眠時無呼吸発作に伴う夜間の徐脈性不整脈を有する症例は無症状が多く,また日中に徐脈が出現することはまれである.無呼吸発作時の洞静止を有する15 人に電気生理学的検査を行ったところ,8 割で洞機能は正常であったことも報告されており764),SDB に伴う徐脈性不整脈患者においてはペースメーカ植込みよりSDB に対する治療が優先される.SDB 患者における夜間の睡眠に関連した徐脈性不整脈の頻度はSDB に対する治療により劇的に減少する765-768).これらの報告によると重度の洞性徐脈,洞静止,房室ブロックはCPAP 治療により72 ~89% 減少したとされている.夜間の徐脈性不整脈を合併したSDB の17 人にCPAP 治療を行い,54 ± 10 ヵ月経過観察した研究によると,症候性の徐脈性不整脈は1 人も生じなかったことを報告している767).ペースメーカ植込み適応として不整脈医に紹介された無症候性の睡眠に関連した徐脈性不整脈の7 人にSDB のスクリーニングを行ったところ,全症例でこれまで診断されていなかったSDBが判明し,SDB を治療することは無呼吸に関連した症状を和らげるだけではなく,大部分の患者においてペースメーカ植込みの必要がなくなることにつながったとの報告もある769).上記より,夜間の徐脈を認める症例におけるSDBのスクリーニング(症状聞きとりやSDB が疑われる症例

に対する精密検査)とOSA を合併している睡眠中の徐脈性不整脈症例におけるOSA 治療(CPAP や減量)が推奨される.

7.3 症候性徐脈性不整脈によるペースメーカ 植込み患者に合併したSDB

98 人のペースメーカ植込み患者にESS とPSG による睡眠時無呼吸のスクリーニングを行ったところ,SDB の症状(ESS ≧11)は25% にしか認めなかったものの,59% の症例で,PSG によりSDB と診断され,29% は重症であった770).つまり,ペースメーカ植込みを検討している患者群はSDB の高リスク群であり,たとえ無症候性であってもSDB のスクリーニングを行うことが推奨される.

また,最近のペースメーカには胸郭インピーダンスセンサーによるSDB のモニタリング機能が搭載されている機種もある.4 つの論文をまとめたメタ解析では,PSG による評価でのAHI ≧30 をゴールドスタンダードとした場合の植込みデバイスによるSDB の検出精度はROC 曲線のAUC で0.87 と高かったことが報告されている771). RESPIRE study では,ペースメーカ植込みが行われた553人中172 人(31%)がペースメーカのモニタリングによる重症SDB を指摘され,重症SDB を指摘された群はそうでない群に比して心房細動の合併が多かったと報告されている772).

8 頻脈性不整脈(上室)

8.1 SDB における頻脈性不整脈発生機序

SDB では,1胸腔内圧の変動,2周期的低酸素血症, 3自律神経活性の変化などが不整脈発生に深く関与する(図25).SDB に併発する不整脈には,治療介入を必要としない無症状の心房期外収縮・心室期外収縮から,心臓突然死につながる致死性不整脈までさまざまなものがある.また心房細動のように不整脈自体の緊急性はないものの,心不全や脳梗塞の発症リスクが高まり,正確な診断と適切な治療が求められるものもある.そして,SDB は生活習慣病をはじめとする多くの併存する疾患と関連があり,これらは相加相乗的に不整脈発生に関与するため,不整脈のみの治療では不十分なことが多く,包括的な治療を必要とす