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p.61 抽出テキスト

b.ASV

CSA-CSR をCPAP よりもさらに有効に治療できる陽圧治療機器であるASV については,CSA-CSR を合併したHFrEF のLVEF や運動耐容能が改善し,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が低下するというRCT やメタ解析の結果が発表された700, 701).CSA-CSR およびOSA を併存する心不全症例においても,CPAP とASV を比較したところ,ASV のほうがアドヒアランス良好で,3 ヵ月後のLVEF,血中BNP 濃度が改善した702).さらに,CPAP にてCSA-CSR が残存する患者にASV を使用することで, CSA-CSR およびLVEF が改善した703).その他,ASV による呼吸状態・血行動態の改善704)に加え,BNP 低下657, 704), LVEF 改善657, 704, 705),交感神経活性抑制706-710),炎症抑制657),腎機能改善657, 711),心房細動や心室性不整脈の抑制効果712, 713)など,さまざまな効果がわが国の研究を中心として多数報告されている.また,少数例の観察研究では,心臓死および心不全再入院率が低下した657, 704).心臓再同期療法(CRT)はSDB の改善に寄与するが,CRT 後も中等症以上のSDB が残存することも少なくない.CRT 後にSDB が残存する患者に対して,ASV は血中BNP 濃度を低下させ,心不全による再入院を減少させた714).いずれも比較的少数例の検討結果ではあったが,その後のメタ解析では,SDB 合併慢性心不全患者において,CPAP は生命予後を改善する傾向にあり,ASV は生命予後を改善するとされた715).しかし,AHI ≧15 のCSA 優位のSDB を合

併するLVEF ≦45% の慢性心不全患者1,325 人を対象に, ASV の予後改善効果を検討した大規模RCT であるSERVE- HF 試験682)では,一次エンドポイントである総死亡,救命的心血管介入(心移植,LVAD 植込み,心停止からの蘇生, ICD 適切作動),心不全による予期せぬ入院を複合した心血管イベントは,ASV 群で対照群に比して同等で,副次エンドポイントであったものの総死亡と心血管死亡はASV群でむしろ増加するという結果であった.これを踏まえ, 2016 年ESC ガイドラインおよび2017 年ACC/AHA/ HFSA ガイドラインの改訂において,CSA 主体のLVEF ≦45% の慢性心不全患者に対してASV 使用は推奨されない(クラスIII “not recommended”)という位置づけとなった716, 717).急性非代償性心不全で入院した患者のSDB (AHI ≧15)を早期に検出し,ASV 群と対照群に割り付けたCAT-HF 試験は,SERVE-HF の結果によって進行途中で中止となった718).しかし,SERVE-HF という1 つのRCT の結果のみでASV の評価を決定づけることは早計であるという考えも根強くある.SERVE-HF 試験では,2 群間におけるクロスオーバー患者が多いこと,intention to treat 解析の問題点,わが国の患者背景や先行研究結果との相違点など多くの問題点も指摘されている719-721).on treatment 解析では,ASV を途中で中止した群で予後不良の傾向であり,ASV を途中から開始した群では予後の悪化はなかったことから,ASV 導入および切り替えに関する症例選択バイアスの影響も示唆された722).SERVE-HF 試験のサブ解析では,ASV 使用の有無と心不全増悪入院に関して,LVEF との交互作用を認め,LVEF 30% 以下ではASV 群で心不全増悪が多い一方,LVEF 36% より高い症例ではASV 群の心不全増悪は低い傾向であったため723),重症HFrEF 患者における長期ASV 使用による低心拍出などのリスクも示唆される682).同様に,SDB 中のCSA- CSR 比率に関しても交互作用を認め,CSA-CSR 比率が20% 未満の症例においてASV 群にて心不全増悪が少ない傾向である一方,CSA-CSR 比率が50% より高い症例ではASV 群で心不全増悪が有意に高率であった682, 723).これらの結果を受け,CSA-CSR は心不全における代償機序であり,CSA-CSR による過呼吸自体が,CO2 の低下,内因性呼気終末陽圧(PEEP)の増加,心拍出量の上昇などをきたし,心保護的に作用するとの説もあり724),現在でもCSA-CSR 自体に関する治療の可否に関するエビデンスは十分に確立されてはいない状況である.一方,CSA-CSRの病態形成に関与する肺うっ血・循環遅延・過呼吸関与の程度により出現するCSA-CSR のフェノタイプが異なる可能性が指摘され265, 266, 712),CSA-CSR の詳細なタイプ分類

表37 HFrEF におけるCSA-CSR の治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

CSA-CSR を合併し,HFrEF 患者に対する心不全ガイドラインに準拠した心不全治療自体の最適化を行うI A中等症以上のCSA-CSR を合併するHFrEF 患者に対して,自覚症状,運動耐容能,左心機能改善を目的としたCPAP治療を考慮するIIa B中等症以上のCSA-CSR を合併するHFrEF 患者のうち,CPAP 治療に忍容性のない,あるいはCPAP 治療が無効のHFrEF 患者(LVEF ≦45%)に対して,自覚症状,運動耐容能,左心機能改善を目的としたASV 治療を考慮してもよいIIb B CSA-CSR を伴うHFrEF 患者(LVEF ≦ 45%)に対して,心不全の改善または安定化後も漫然とASV 治療を継続する

*ことは行うべきではない. III Harm B * SERVE-HF 試験に組み入れられた患者と同様の背景を有する

HFrEF 症例に対し,SERVE-HF 試験と同じ条件(ASV 機種や圧設定など)にて継続使用する場合でとくに注意が必要.