p.60 抽出テキスト
スオキメータでの評価で4%ODI ≧5 の場合は,心不全再入院を含めた予後が不良であることが報告されており30),パルスオキシメータによるスクリーニングも一定の価値があると考えられる.一方で,心不全患者に対する簡易モニターでの評価は,SDB の重症度,型ともにPSG とよい相関を示す報告があるものの692),呼吸運動の検出が可能なシステムであっても,一般的にCSA の判断精度が低く,CSA の診断としては推奨されていない2).心不全患者の睡眠の質の評価や不良な予後と関連する周期性四肢運動24, 693)の合併の評価も重要であることから,とくに中等症以上のSDB が疑われた場合はPSG の実施が望まれる. 5.5 HFrEF に合併するSDB の治療 5.5.1 心不全自体の治療 OSA については,そのリスク因子あるいは増悪因子である肥満の治療,禁煙,節酒,適切な運動などの生活習慣の修正は心不全自体にも有用であるため,まず積極的に行うべきである.心不全自体の治療のなかで利尿薬がOSA を軽減するとの報告があるが613),これは体液の適正化により上気道周囲粘膜における浮腫が改善したことに加え,夜間の体液シフトの軽減も寄与したと考えられる. 一方,CSA-CSR は心不全の結果もたらされる病態であることから心不全自体の治療の適正化が最も重要である.詳細は第1 章5. 3. 6「薬物治療」を参照されたい.心不全治療を最適化したうえでもSDB が残存する場合は,SDBへの直接的な介入を考慮する. 5.5.2 HFrEF に合併するOSA に対する陽圧治療(表36) OSA については心不全の有無にかかわらずCPAP を中心とした治療法がほぼ確立している2, 498).HFrEF 患者においては,重症OSA 154),さらには軽症から中等症を含めたOSA 694)を合併した患者を対象としたRCT によりLVEFの改善が報告されており,メタ解析においても同様の効果が確認されている695).一方で,予後の改善効果については,中等症以上のOSA をCPAP で治療することにより心不全の予後改善につながるとの観察研究の結果があるが107, 679, 696),心不全患者にかかわらず多数の患者を対象としてCPAP による心血管疾患の一次予防,二次予防効果を評価したRCT はいずれも対照群と有意な差がつかない結果に終わっている393, 394, 397).重大な原因の一つとしてCPAP に対するアドヒアランスの低さが指摘されており,心血管イベントの減少効果を得るには4 時間以上の使用時間が必要との考えが支持されている697, 698).OSA 合併心不全患者を対象としたCPAP の予後改善効果についてのRCT はこれまで行われていない.中等症以上のOSA もしくはCSA-CSR を合併したLVEF が45% 未満の心不全患者を対象としたASV の多施設共同ランダム化臨床試験ADVENT- HF 699)の結果が2022 年8 月のEuropean cardiology society Congress にて発表された.全体の解析でASV によるSDB 治療の心血管イベントに対する有意な効果は確認できず,OSA 優位な症例におけるサブグループ解析でも同様の結果であった.一方で,ミネソタ心不全QOL 質問票スコアは全体でもOSA サブグループでも有意な改善を示した.詳細な情報を含む論文の発表が待たれる. 現時点では,日中の眠気などOSA に関連する症状がある場合は心不全の有無にかかわらず治療されるべきであり,また中等症以上のOSA を有するHFrEF 患者に対しては,LVEF の改善を目的としてCPAP 治療を考慮する(表36) 473). 5.5.3 HFrEF に合併するCSA-CSR に対する 陽圧治療(表37) a.CPAP 治療 CPAP はHFrEF に合併したCSA-CSR の抑制のみならず,交感神経活性の低下,LVEF の改善,運動耐容能の改善など短期的な効果が示されている243).しかしながら, CSA-CSR を伴う心不全患者の予後に対するCPAP の効果を検証したRCT であるCANPAP 試験499)では,対照群に比してCPAP 群でAHI が半減し,LVEF の増加,6 分間歩行距離の短期的な改善が得られたものの,生命予後の改善効果は証明されなかった.一方で,CANPAP の事後解析では,CPAP 開始3 ヵ月後の再検査時にCPAP 使用下でAHI <15 に改善した群(CPAP responder)は,改善しなかった群より予後は良好であり,CPAP responder の予後は対照群に比して有意に良好であることが示されている500) 表36 HFrEF におけるOSA の治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 症候性OSA 患者に対するガイドラインに準拠したCPAP 治療を行うI A中等症 *以上のOSA を伴うHFrEF 患者に対する左心機能の改善を目的としたCPAP 治療を考慮するIIa A中等症 *以上のOSA を伴うHFrEF 患者の予後改善を目的としたCPAP 治療を考慮してもよいIIb C * 中等度はAHI ≧15 と定義されることが一般的であるが,わが国 の保険適用レベルはAHI ≧20 である