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p.58 抽出テキスト

4 高尿酸血症

SDB は肥満と独立した機序で生活習慣病の発症や悪化に関与することが示されており,高尿酸血症に関しても同様であると考えられている.台湾からの報告では,約25%に高尿酸血症が合併するとされている658).ブラジルの報告では,AHI が5 ~14.9 のOSA 患者では,対照に比して年齢,性別,BMI,心血管リスク因子などで補正後も尿酸値が有意に高値であった659).これはメタ解析でも示されている660).SDB が尿酸値上昇に関連する機序として,夜間の組織低酸素によってミトコンドリア電子伝達系の酸化的リン酸化によるATP 合成が低下することで,ATP・ADP・AMP の分解およびヒポキサンチンの産生が亢進し,低酸素に引き続いて起こる再酸素化はキサンチンオキシダーゼを介するヒポキサンチン,キサンチンの代謝を促進し最終産物である尿酸が過剰に産生されることが考えられる.実際に,OSA による夜間の組織低酸素の指標として尿酸排泄を調べたデータによると,低酸素血症が顕著なOSA では尿酸排泄が亢進し661),CPAP によりOSA 患者の尿酸排泄量が対照と変わらないレベルまで低下することが報告されている662).したがって,CPAP によるOSA の抑制により,血中尿酸値が低下する可能性があるが,糖尿病を有するOSA 患者に対するCPAP 治療の尿酸低下効果を検討したRCT では,介入前後の尿酸値の変化に有意差はなかった663).これは,ほかの生活習慣病のあるOSA 患者では,高尿酸血症の原因はOSA による低酸素の影響のみならず多因子であり,尿酸排泄低下の影響などで尿酸値の低下が不十分となる可能性が考えられている.一方, CPAP の使用状況によって尿酸値の低下に差があることも示されている664).OSA 患者において尿酸値が血管障害や循環器疾患発症のリスクになる可能性についても示されており,尿酸値の増加が,心房細動リスクと関連する心電図のP 波幅の拡大665),心房細動666),動脈スティフネスの亢進667),および循環器疾患の合併と関連すること668)が報告されている.また,OSA 患者に対するアロプリノールによる血管内皮機能改善を評価したRCT では,同薬による血管内皮機能の改善が認められた669).OSA 患者における高尿酸血症は将来的な循環器疾患発症のリスクとなる可能性があるため666, 667),血管内皮機能改善効果を有する尿酸産生低下薬であるキサンチンオキシゲナーゼ阻害薬の効果が期待されるが,OSA 患者においても,それ以外の集団においても,この薬剤が心血管予後を改善するという明確なエビデンスは得られていない.尿酸排泄低下薬で同様か否

かは明らかでなく,今後の研究成果が期待される.

5 心不全(HFrEF)

5.1 SDB の特徴

心不全患者におけるSDB の特徴は,OSA に加え,チェーン・ストーク呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸(CSA- CSR)を高率に合併することである.左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者におけるSDB の存在を規定する因子として,男性,年齢,BMI,LVEF,心房細動が挙げられている670).心不全患者において,OSA のみ,CSA- CSR のみということはむしろまれであり,両者が混在している例が多い.標準的な心不全治療を受けているNYHA心機能分類II 度以上のHFrEF 患者963 人を調査した報告では,AHI ≧15 のOSA は16%,CSA-CSR は42% に合併していた671).また,標準的心不全治療下に安定しているAHI ≧15 のSDB を合併したHFrEF 患者1,557 人の内訳は,OSA が29%,CSA が31%,両者の合併(閉塞タイプの呼吸イベントがAHI の20% 以上,かつ中枢タイプの呼吸イベントが20 ~80% を占める)は40% であった672).心不全の重症度,治療内容などによってその優位性がしばしば変化し,一晩の睡眠中にOSA からCSA-CSR へシフトすることもあるため,その優位性はSDB の評価の時期により異なると考えられる.

5.2 関連のメカニズム

5.2.1 OSA が心不全を発症,進展する機序

睡眠中に上気道の閉塞により繰り返される低酸素血症と中途覚醒は,夜間および日中の交感神経活性を亢進させ,血圧上昇,心拍数増加をきたす.さらには,気道閉塞時の努力性呼吸により胸腔内には-80 cmH2O にも及ぶ過剰な陰圧が生じ,それが一晩中呼吸イベントのたびに繰り返される.そのため左心室には高いtransmural pressure がかかり,後負荷が増大し,左室肥大をきたし,左室機能に悪影響を及ぼす148).その結果,心筋への酸素供給と需要のバランスが崩れ,心筋虚血,心筋収縮障害,不整脈のリスクが高まる84, 244, 673).同時に生じる低酸素性肺血管収縮による肺血管抵抗の増大と静脈還流の増加による右室充満の