p.56 抽出テキスト
本人2 型糖尿病患者18 人を対象とした後ろ向き研究でも, SGLT2 阻害薬投与前後で,HbA1c や体重の低下とともにAHI は平均31.9 から18.8 に有意に減少していた640).今後OSA に関連した残余心血管イベントリスクに対するSGLT2 阻害薬の有効性を検証する前向きRCT が求められる. 3 CKD/ESRD(表35) CKD は,糸球体濾過量(GFR)が60 mL/ 分/1.73 m 2 未満あるいはアルブミン尿の存在といった腎臓の異常が3 ヵ月以上持続することで診断される.原疾患(Cause: C), GFR(G),蛋白尿・アルブミン尿(Albuminuria: A)に基づくCGA 分類によりCKD の重症度はG1 からG5 に分類され,GFR 15 mL/ 分/1.73 m 2 未満のステージG5 では末期腎不全(ESRD)と定義される.CKD とSDB は互いに高率に合併し64, 641),CKD とSDB には双方向の因果関係の可能性がある.CKD 患者におけるSDB の合併は予後不良因子であることが示唆されており642),CKD 患者におけるSDB の診断と治療は重要な位置づけと考えられる. 3.1 SDB の頻度と特徴 CKD 患者において,SDB を合併する頻度は25 ~70%である.CKD のステージ進行に伴いSDB を合併する頻度やSDB の重症度が高くなる64).CKD に合併するSDB の主体はOSA であるが,とくにESRD 患者ではCSA が認められる64).ESRD では,尿毒症毒素による睡眠構築の変化や呼吸筋の易疲労性,化学受容体の感受性亢進に伴う中枢の呼吸ドライブの不安定性,夜間の体液シフトと体液貯留による上気道の浮腫に伴う気道の狭小化,といったCSAおよびOSA 両方の発生機序につながる特徴を有する. CKD 患者は,非CKD 患者よりも,いびきや早朝の頭痛といったSDB 症状が出現しにくいとの報告がある643, 644).一方,日中の易疲労感や熟睡感の欠如などのSDB 症状は, CKD 自体の症状やほかの併存症の症状と重なる場合が多い.さらに,不眠,中途覚醒,日中の傾眠,レストレスレッグス症候群(RLS)は,ESRD でよくみられる症状である.そのため,CKD 患者の訴える症状がSDB 由来かどうかを明確に判断することは難しく,SDB のスクリーニング検査が重要である.CKD 患者に,睡眠に関連する症状や治療抵抗性高血圧を認めた場合などでは,SDB を積極的に疑い,精査を行うことが推奨される. 3.2 SDB がCKD の発症と進行に 与える影響 一般人口におけるOSA の存在は,CKD の発症および経時的なGFR 低下に関する独立したリスク因子であり645, 646),とくに夜間低酸素が腎障害の進行と強く関連している647).ステージG3,G4 のCKD 患者においても,中等症以上のSDB の存在は,軽症以下のSDB の群に比して有意にGFR の低下速度が速く,夜間低酸素がGFR 低下に関する独立したリスク因子であった648).さらに,SDBが重症であるほどアルブミン尿を有する割合は増加し649), AHI と尿蛋白とは正の相関を認めた. SDB に伴う低酸素血症,RAA 系活性化,交感神経活性の亢進が,CKD に影響する中心的なメカニズムと考える641).とくに腎髄質は低酸素に感受性が高いとされ,慢性的な夜間低酸素血症は尿細管間質障害を引き起こす.また,間欠的低酸素は腎組織の活性酸素種の増加や炎症反応を促進させ,筋線維芽細胞の分化や細胞外マトリックスの蓄積を誘導する.同時に,間欠的低酸素は全身および腎臓のRAA 系を活性化し,糸球体内圧増加,腎組織の間質線維化を引き起こす.加えて,酸化ストレス,血管内皮機能障害,動脈硬化,血圧上昇といったSDB による全身的な影響が複雑に関与して,CKD の発症と進展に影響を及ぼすと考えられる(図24).SDB に伴う超短期的血圧変動とCKD との関連性が報告され,夜間における拡張期血圧の変動(標準偏差)がCKD に影響することが示唆されている577). 3.3 CKD 患者におけるSDB 合併が 予後に与える影響 CKD 患者におけるSDB の合併は,CKD 患者の予後悪 表35 CKD におけるSDB の評価の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル SDB の臨床症状の聞きとりとスクリーニング検査を行うI B体液管理を含むCKD の治療自体の最適化を行うI A中等症以上のOSA を合併するCKD 患者に対して腎予後改善を目的としたCPAP治療を考慮するIIa B