p.55 抽出テキスト
が推測されている.234 人の2 型糖尿病患者を対象とした横断研究では,OSA 合併2 型糖尿病患者の60% に末梢神経障害を認め,交絡因子での補正後もOSA は末梢神経障害とオッズ比2.72 で有意に関連していた631).556 人の成人糖尿病患者での検討では,AHI 15 以上のOSA を合併した群の7.6% に糖尿病性腎症,5.2% に糖尿病性網膜症を認めた632).経時的な関連をみた縦断研究では,前述の後ろ向きコホート研究で628),2 型糖尿病患者におけるOSA の合併はCKD の重症度分類G3 ~G5 の新規発症を 1.18 倍増加させた.今後さらに,2 型糖尿病を合併した OSA 患者に対するCPAP の心血管イベント・微小血管障害抑制効果をRCT で検討する必要がある. 2 型糖尿病を合併したOSA 患者に対するCPAP が糖代謝異常に及ぼす効果については相反する結果が示されている.3 ~6 カ月のフォローアップで,3 つの研究ではHbA1c の有意な低下を認めなかったが633-635),最近の2 つのRCT ではインスリン抵抗性や血糖コントロールの有意な改善を認めた212, 213).また,CPAP が血糖変動に及ぼす効果についても一定の結論を得ていない.一晩のCPAP 使用が血糖変動を改善した報告636)もあれば,12 週間のCPAP 使用は血糖変動を改善しなかったとの報告637)もある.これらの研究からは,少なくともCPAP 単独でほかの因子による影響を凌駕するほどの臨床的効果が期待できるとは考えにくい.それに対し,CPAP と減量の両者による 介入は,HbA1c を有意に改善すること215, 638)が示されており,CPAP のみならず生活習慣の是正の必要性が示唆されている. 一方,2 型糖尿病の治療薬であるSGLT2 阻害薬エンパグリフロジンが,2 型糖尿病患者における新規OSA 発症リスクを低下させることが,EMPA-REG OUTCOME 試験のサブ解析で報告された622).OSA の合併のない2 型糖尿病患者における追跡期間中(中央値3.1 年)の新規OSA発生率は,エンパグリフロジン群で0.57%(25 / 4,421 人),プラセボ群で1.13%(25 / 2,208 人)であり,エンパグリフロジンによって新規OSA 発生リスクは52% 低下した.これより,エンパグリフロジンは,2 型糖尿病患者における新規OSA 発症を抑制する可能性が示唆された.詳細な機序は不明であるが,この効果は体重,HbA1c,ヘマトクリットや収縮期血圧などの古典的OSA リスク因子の改善と独立していたことより,エンパグリフロジンによる体液シフトの改善など従来のリスク因子とは独立した機序の存在が示唆された.中等症から重症のOSA,肥満,糖尿病を有する日本人患者を対象とした小規模の介入試験でも,低用量のダパグリフロジンを24 週間投与することにより,代謝パラメータの改善と3% 酸素飽和度低下指数(ODI)の有意な減少が認められた639).また,OSA を合併した日 OSA 肥満・メタボリックシンドローム 酸化ストレス 全身炎症 視床下部−下垂体−副腎系機能亢進 アディポネクチン分泌低下 2 型糖尿病 β細胞機能不全インスリン抵抗性 交感神経活性亢進 睡眠分断化間欠的低酸素 図23 OSA と2 型糖尿病との関連に介在する機序(Reutrakul S, et al. 2017 57)を参考に作図)