p.53 抽出テキスト
1.6.2 持続的気道陽圧(CPAP) 中等症・重症OSA を合併する高血圧患者では,まずCPAP 治療を行う(図22) 557).CPAP 治療により,多くの患者で降圧効果が得られ,夜間の血圧サージは低下する. CPAP 群と酸素投与群の降圧効果を比較した臨床試験では,CPAP 治療群のみで降圧がみられた593).これまでの31 のRCT を対象としたメタ解析では,コントロール群に比し,CPAP 群では収縮期血圧が2.6 mmHg,拡張期血圧が2.0 mmHg,有意に低下した594).CPAP の効果には個人差があり,より血圧レベルが高い高血圧,未治療高血圧,夜間高血圧,治療抵抗性高血圧などの特徴を有する高血圧例では,CPAP による降圧効果が大きい386, 595-597).とくに夜間高血圧(non-dipper・riser 型)では,CPAP により睡眠中の血圧がより選択的に低下し,正常dipper 型に回復する場合が多い598).さらに,BMI 高値386, 599)でより重症のOSA(AHI ≧30)では,CPAP による降圧の程度が大きい.また,昼間の眠気の有無もCPAP の降圧効果に影響を与える.OSA 患者では,CPAP による日中血圧の降圧効果が乏しい場合もあり599-601),CPAP 治療の継続率も低い. CPAP 治療による降圧効果は,CPAP に対するアドヒアランスが良好である場合に期待でき,一晩に3 時間以上使用し595),より長期に使用することが重要である602).遠隔医療の介入により,CPAP のアドヒアランスがよい状態で保 たれることが多施設前向きRCT で示されている405). CPAP 治療の一晩に4 時間以上の使用は,4 時間未満の使用に比して,CPAP 使用翌日の早朝家庭血圧を低下させ,その低下度は冬期に顕著となる603). とくに治療抵抗性高血圧を合併するOSA 患者では, CPAP 治療の降圧効果が大きい566).4 つのRCT のメタ解析では,コントロール群に比し,CPAP 群では収縮期血圧 6.7 mmHg,拡張期血圧5.9 mmHg 低下した604).治療抵 抗性高血圧を合併するOSA 患者を対象としたHIPARCO RCT では,CPAP 未施行群に比して3 ヵ月のCPAP 治療で24 時間血圧が約3 mmHg 程度低下し,その低下度はCPAP 使用時間に比例した.さらに,夜間血圧変動パターン別での検討でも,CPAP 群では正常dipper 型が2.4 倍多かった396).本研究でのCPAP アドヒアランスが良好であった患者のサブ解析では,低酸素(酸素分圧90% 未満)時間の増大,重症OSA(AHI ≧30),ベースライン時の血圧高値の人で,降圧の度合いがより大きかった605).また,3 剤以上の降圧薬で治療中の高血圧を合併したOSA 患者においても,コントロール群に比し,CPAP 治療は24 時間血圧を収縮期血圧4.4 mmHg,拡張期血圧2.9 mmHg 低下させ,さらに血中トロポニンI とBNP レベルを有意に低下させた606). 1.6.3 降圧治療 軽症・中等症OSA を合併する高血圧患者や,CPAP 拒否ないしは自己中断した中等症・重症OSA を合併する高血圧患者では,心血管疾患リスクが残存する.このような患者は高リスク高血圧患者と考え,より厳格な24 時間にわたる降圧治療を行うことが望ましい557).目標降圧レベルに関するエビデンスはまだないが,胸部大動脈や心臓への無呼吸発作時の胸腔内陰圧負荷の増大を加味し,とくに夜間血圧をその基準値である120/70 mmHg 未満に抑制しておくことが重要である587).降圧薬の種類に関する明確なエビデンスはまだない.中枢性作用があるメチルドパやβ遮断薬,カルシウム(Ca)拮抗薬,ACE 阻害薬など,いずれのクラスの降圧薬もAHI を変化させないことから,SDB自体には影響を与えない607, 608).少数例の検討では,Ca 拮抗薬,ACE 阻害薬,ARB,利尿薬に比して,β遮断薬では,診察室拡張期血圧が有意に低下した.また,β遮断薬では,Ca 拮抗薬,ACE 阻害薬,ARB に比して,昼間・覚醒時血圧の低下度に差はないが,夜間収縮期・拡張期血圧が有意に低下したという報告もある(利尿薬との差はない) 609).しかし,β遮断薬を含めて単剤投与では,昼間の血圧は低下するものの,夜間睡眠時血圧のコントロールは 図22 OSA を伴う高血圧患者の治療方針(Kario K. 2022 557)より) © 2022 John Wiley & Sons Ltd. Published 2022 by John Wiley & Sons Ltd. OSA を伴う高血圧 減量・節酒・禁煙 CPAP継続不可能降圧薬投与 ≧20 <20 AHI 診察室血圧<140/90 mmHg早朝血圧<135/85 mmHg夜間睡眠時血圧<120/70 mmHg 降圧目標 達成未達成 継続可能