p.50 抽出テキスト
満OSA 患者を対象に,大腿までの弾性ストッキングを1週間着用したところ,体液シフトが62% 減少し,AHI が36% 減少した552).肥満患者を含む45 人のOSA 患者を対象としたRCT で,膝下の弾性ストッキングを2 週間着用すると,体液シフトの減少と朝の上気道内径の増加に関連してAHI が25% 減少することが示された553). 血液透析中の軽度から重症のOSA 患者14 人を対象としたランダム化クロスオーバー比較試験において,弾性ストッキングの1 週間の着用とCPAP の1 晩の装着の効果の 比較で,弾性ストッキング着用では,CPAP 装着と比較し, AHI 改善効果,日中の下肢体液の蓄積および全身体液の減少効果は認めなかった554).これは透析患者が,弾性ストッキングでは過剰な体液を排出できないためであると考えられる.これらの4 つの研究を含めたメタ解析では,弾性ストッキングのAHI 改善に対する有用性が示されている555). 第2章 各疾患との関連と治療 1 高血圧 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と高血圧はたがいに合併率が高く,OSA は高血圧の成因となる.また,OSA はもっとも頻度が高い二次性高血圧の原因であり,治療抵抗性高血圧を含むコントロール不良高血圧の原因疾患でもある.その重要性は日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」のなかでも強調されており556),高血圧診療では,絶えずOSA を念頭に置く必要がある557-559). 1.1 高血圧リスクとOSA OSA と高血圧は単なる合併ではなく,OSA 自体が高血圧の成因となりうる.これまでの地域住民を対象とした前向き研究であるWisconsin Sleep Cohort study(WSC)において,年齢やBMI と独立してAHI の増加が将来の高血圧の発症リスクになることが示されている560).OSA の高血圧リスクとしてのインパクトは若年でより大きく,高齢者ではその影響は減少する.高齢者の収縮期高血圧に対する影響は少ない561). 青年期若年者を対象に活動量計を用いた研究では,睡眠時間の短縮(6.5 時間未満)が2.5 倍,睡眠効率の低下(85%未満)が3.5 倍,ほかの因子とは独立した高値血圧(年齢,性別,身長の90 パーセンタイル以上の血圧と定義)のリス クとなっていたことから,高血圧の発症リスクとして睡眠の量と質が重要であることがうかがえる562).わが国においても,高血圧のみならず,高値血圧(130~139/85~89 mmHg)も将来の心血管疾患,とくに脳卒中のリスクになっているが563),その規定因子として肥満がある.高血圧ならびに高値血圧の規定因子として肥満の影響はより若年で大きい564).45 歳の住民を対象として,4 年間の体重の増減とOSA の発症を検討した研究では,体重の10% 増加が中等症~重症OSA の発症リスクを6 倍増加させており,その発症は減量により抑制されていることが示されている298).したがって,より若年から適正体重の維持に努めることが,OSA に関連した高血圧の発症抑制にもつながると考えられる.また,Sleep Heart Health Study(SHHS)では,前向き研究デザインで,ベースライン時の正常血圧時に睡眠ポリグラフ(PSG)で評価した深睡眠(Stage N3)の減少が,OSA や断眠指標とは独立して,将来の高血圧の新規発症リスクになることを示している565). 1.2 OSA の自由行動下血圧の特徴(表31) OSA で発生する高血圧は神経原性高血圧(neurogenic hypertension)ともいわれ566),血圧変動が著しい夜間高血圧を特徴とする(表31,図21) 566). これまで,夜間高血圧や,血圧日内変動異常で夜間血圧下降が減少しているnon-dipper 型,逆に夜間血圧が上昇