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p.45 抽出テキスト

国において使用可能となった.保険適用は「NYHA 心機能分類III 度以上の慢性心不全患者で睡眠時のチェーン・ストークス呼吸が観察されAHI が20 以上であることが終夜睡眠ポリグラフ上確認されている症例」であり,治療実施に先立ち心不全重症度とAHI,CSR の有無について明確にする必要がある.

CSR の発生にはCO2 化学受容体の感受性亢進(PaCO2の上昇に対する換気量の増加の程度)が深く関与しており241),増大するほど呼吸のゆらぎが大きくなる488).CO2化学受容体の感受性は血中酸素分圧が低下するほど増加する489)(図17)ことから,酸素療法によりPaO2 を上昇させることによりCO2 化学受容体の感受性亢進を是正しCSA を減じる可能性がある. b.CSA に対するHOT の有効性

CSA に対するHOT の効果は,CSA-CSR の減少とSaO2 <90% の占める時間の減少として確認されてきた490). CSA の減少はCSA と関連するさまざまな諸症状に影響することが期待され,副次的な効果としてこれまでに以下のことが示された.1睡眠の質の向上(総睡眠時間増加,無呼吸頻度および夜間覚醒頻度の減少)

491),2交感神経系

亢進の是正261),3LVEF の改善492, 493),4運動耐容能の改善494, 495).以上のように夜間HOT はCSA に対して一定の減少・改善効果が期待できる.一方,CSA の背景疾

患としての心不全自体に対して心血管死亡を改善する効果は認めない.しかし,身体活動能(心不全症状)は2つの試験ともに約1 メッツ増加し,治療効果が認められた492, 493). c.問題点と課題

CSA に対するHOT の有効性が明らかにされた一方で,心不全をきたすすべての原因疾患に対して同じなのかは不明である.虚血性・非虚血性あるいは心房細動の有無におけるHOT の有益性の差異に関しては今後の検討が必要である.またこれまでの酸素療法の臨床試験は1 ~5 L/ 分のあいだで行われているが,個別のCSA に合わせ酸素濃度をタイトレーションした報告はない.組織への過剰な酸素供給が酸素化の過飽和状態により引き起こされる酸化ストレスの増加を惹起する可能性がある496).一方で,SDB に関連して引き起こされる低酸素と急速な酸素化の繰り返し(間欠的低酸素)は持続的な低酸素状態よりも酸化ストレスの産生を増大させることがin vitro で示されている188).以上のことから,CSA に対して過不足のない最適な酸素量を投与することが課題である.

5.3.3 CPAP

陽圧呼吸には,気道開存のためにフラットなPEEP を加えるCPAP のほか,bi-level PAP,一定の呼気終末陽圧に加え,自発呼吸に順応したpressure support を加えるASVがある.ASV は過呼吸と無呼吸を周期的に繰り返すCSRや周期性呼吸に対して,呼吸状態に合わせてpressure support の程度を変動させ換気量や呼吸数を安定させる(図18) 497).

標準的な心不全治療を徹底したあとにもCSA-CSR が残存する症例があり,CPAP,bi-level PAP,ASV といった呼吸補助療法が考慮される2, 498).CPAP を含む陽圧治療がCSA-CSR の減少に有効であると想定される機序は,SDB自体の改善効果に加えて胸腔内圧の陽圧化により,前負荷および後負荷軽減を介して心仕事量を軽減し,右心および左心負荷を軽減し,心機能の改善をもたらすことが考えられる.さらに肺を拡張させて交感神経活性を抑制し,CO2に対する感受性を低下させる機序や,残気量を増加させて低酸素血症を改善させる機序,CPAP 使用によるPaCO2の上昇などが想定される.CSA-CSR を合併する心不全に対するCPAP 治療に関して,AHI が15 以上でCSA-CSR優位のLVEF が45% 以下の慢性心不全患者をCPAP 群と対照群に割付し予後を評価したRCT であるCANPAP 試験では,SDB とLVEF の改善を認めたが,予後改善効果は認められなかった499).しかし,CPAP 群の約半数が

0 10 20 30 40 50 60

肺胞換気量(L/分) pH=7.4 pH=7.3 PO2(mmHg)

40 50 60 100 40 50

60 100

肺胞PCO2(mmHg)

60 50

40 30

20 10

0

図17 CO2 分圧,O2 分圧(40,50,60,100 mmHg),

pH(7.3 と7.4)に対する肺胞換気量への影響(Hall JE, et al. 2021

489)より) Used with permission of Elsevier, Inc., from Guyton and Hall. Chapter 42 Regulation of respiration. Textbook of medical physiology fourteenth edition 2 021; permission conveyed through Copyright Clearance Center, Inc.