p.43 抽出テキスト
オテンシン変換酵素(ACE)阻害薬カプトプリルがPSG で評価したAHI を減少させたことが小規模観察研究で報告されている444).利尿薬は肺うっ血の改善により心不全患者のCSA を減少させうるが257),ときに代謝性アルカローシスをもたらし,二酸化炭素・換気応答を右にシフトさせ, PaCO2 の無呼吸閾値を上昇させることにより,CSA を悪化させることがあるので注意が必要である246, 445).CSA 合併慢性心不全患者(NYHA 心機能分類II/III,LVEF < 50%)において,HFrEF の標準治療薬であるβ遮断薬カルベジロールがPSG で評価したAHI と中枢性無呼吸指数を有意に減少させ,その効果は用量依存性の可能性があることが小規模観察研究で報告されている446, 447).機序として,心不全の重症度の改善によるもののほかに,心不全で亢進している中枢性化学受容体のCO2 に対する感受性を低下されることが推察されている448).HFrEF の標準治療薬であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)がHFrEF 患者のCSA を減少させたという症例報告449)が発表されて以来,HFrEF 患者において睡眠時無呼吸に対するARNI の効果を調べた研究結果がいくつか報告されている.安定HFrEF 患者を対象に行われた観察研究において,ACE 阻害薬またはアンジオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)からARNI への切り替え6 ヵ月後,CSA 群では24 時間心臓呼吸モニタリングで評価した24 時間,日中,夜間のAHI が減少したことが報告されている450).一方,標準的心不全治療にもかかわらず心不全症状が残存しているHFrEF 患者(NYHA 心機能分類II ~IV)を対象とした観察研究において,CSA 群(中枢性AHI ≧5,閉塞性AHI <15,AHI は簡易モニターで評価)では,AHI がARNI 開始3 ヵ月後に有意に減少したことも報告されており,ガイドラインに基づいた心不全に対する治療の最適化がCSA に有効であることが示されている443).なお,この研究では,OSA を有する群(閉塞性AHI ≧15)においてもAHI が減少傾向を認めたことも報告されている.機序としては,ARNI が夜間臥床による上気道間質への体液シフトを減少させたことが推察される.しかしながら,簡易モニターで評価したAHI ≧15 のSDB(ほとんどが閉塞性)を合併するHFrEF 患者(NYHA 心機能分類II/III)を ARNI 群とエナラプリル群に振り分け,投与8 週間前後のAHI を比較した二重盲検RCT において,AHI の有意な減少を認めなかったとの相反する結果も報告されている451).なお,左室収縮能に関係なく心不全の標準治療薬として推奨されているナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬が心不全に合併するCSA におよぼす影響をみた研究はこれまでに報告されていない. 心不全に対する最適化治療により,心不全が改善した場合,CSA が減少・消失し,OSA が顕在化することがあるので注意が必要である246, 446, 449). b.デバイス・外科治療(表27) 心不全の治療において薬物治療だけで症状を抑えることができないとき非薬物治療を行う452).非薬物治療には,心臓再同期療法(CRT)や左心補助人工心臓(LVAD)などのデバイス治療,弁膜症手術や心臓移植などの外科治療がある. 心不全が重症化すると心室内の伝導障害や同期不全を合併することがある.CRT は左室,右室から時間差をおいてペーシングすることにより同期不全を解消し心機能を向上させ,自覚症状や予後の改善をもたらす453, 454).CRT は適切な薬物治療を行ってもなお中等症~重症の心不全で, LVEF が低下しており,QRS 幅が120 ~150 msec 以上の患者に有効としているが,NYHA 心機能分類によりその適応は分かれる455).一方で,慢性心不全患者にみられるCSA がCRT によって減少することが報告されている291, 456, 457).Sinha らの最初の報告458)では,CSA 合併の心不全患者14 人にCRT の植込みを行ったところ,17 ± 7週後にAHI が有意に低下し(AHI 19.2 から4.6),SpO2 の最低値は有意に上昇し,睡眠の質の改善を認めた.一方, CSA を合併しない10 人ではCRT 植込み後も睡眠の質は改善しなかった.Skobel ら459)は,CSA またはSDB のない32 人の心不全患者を6 ヵ月間経過観察し,CRT は 表26 心不全に合併するCSA のAHI 減少を目的とした薬物治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル ガイドラインに基づいた心不全に対する薬物治療の最適化を行うI B HFrEF においてはカルベジロール,ARNIの投与を考慮するIIa B表27 CSA に対するデバイス・外科治療による 心不全治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル CSA を合併する心不全患者において適応基準を満たした心不全へのデバイス・外科治療を行うI C心不全へのデバイス・外科治療を施行後に再評価しCSA 患者への治療を考慮するIIa C CSA の減少のみを目的に心不全へのデバイス・外科治療を行うべきではないIII Harm C