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p.39 抽出テキスト

夜間中途覚醒後の再装着が煩わしいなどの理由からCPAP治療に対するモチベーションが低下する例も経験する. CPAP 治療ではアドヒアランスを良好に維持することが臨床効果を得るために重要である.一般的には,高血圧や心血管イベントの頻度を抑制するためには,1 晩あたり4 時間以上のCPAP 使用が適切とされている396-398).また,アドヒアランスを維持するためのマスクフィッティング,圧設定,室温などの環境設定や,加湿器の併用などの指導管理も欠かせない.とくにCPAP 導入初期の患者では,マスク装着時に息の吐きづらさを訴える場合がある.圧リリーフ機能(expiratory pressure release[EPR/FLEX])の有効性については,使用時と非使用時の使用時間には有意差がなかったとの報告がある399)が,鼻腔抵抗が高い患者ではアドヒアランスが改善したとの報告がある400).鼻閉患者のCPAP アドヒアランスは著しく障害されるが,その際に加湿器の使用を提案することがある.加湿器の使用は鼻閉や鼻粘膜の炎症を改善したとの報告はあるが401),アドヒアランスの有意な改善が得られたとの報告は今のところ存在していない402).オートCPAP と固定CPAP のアドヒアランスについては,ほとんど差がないとの報告がある403).メタ解析でもオートCPAP は使用時間が長かったが,最低酸素飽和度は固定CPAP のほうにより改善が認められ,治療効果の差は明らかではないとされている404).

遠隔モニタリング指導については,CPAP アドヒアランスの改善,医療者側の負担軽減や患者側の利便性向上が期待されている.わが国のRCT において,3 ヵ月間隔毎月遠隔モニタリングあり,3 ヵ月間隔遠隔モニタリングなし,毎月受診遠隔モニタリングなしの3 群で比較し,3 ヵ月間毎月遠隔モニタリングありはほかの2 群に比して非劣性であった405).わが国では,CPAP 遠隔モニタリング加算が開始されているが,実際の運用に関する詳細は厚生労働科学研究補助金総合総括研究報告書を参照されたい406).OSA患者の無呼吸改善にはCPAP 治療が有効であると考えられるが,本治療への忍容性が低い患者も一定数存在する.したがって,CPAP 治療以外の治療の可能性も常に念頭に置いておく必要性がある.

5.2.6 その他の陽圧治療(表21)

OSA のCPAP 以外の陽圧治療として,ASV,bi-level PAP (バックアップ換気なし),bi-level PAP(バックアップ換気あり)などがある.ASV はおもにCSA の治療として用いられるため,5. 3. 3「CPAP」を参照されたい.また最近では,酸素投与と非侵襲的気道陽圧治療の中間に位置づけられている経鼻高流量酸素療法(HFNC)の,OSA 治療としての可能性も報告されている. CPAP とbi-level PAP では作用が異なる.CPAP は気道

開存作用,bi-level PAP は呼気圧(EPAP)と吸気圧(IPAP)を設定し,EPAP で気道開存作用,IPAP とEPAP の圧差により低呼吸を補う作用を有する.Bi-level PAP(バックアップ換気なし)とbi-level PAP(バックアップ換気あり)でも低呼吸を補うIPAP のかかり方が異なる.わが国では,前者はOSA に保険適用があるが,後者はOSA のみでは保険適用外である.

OSA へのCPAP とbi-level PAP 治療の効果の比較が報告されている.CPAP の忍容性が低い場合やCPAP の高圧を許容できない場合には,bi-level PAP(バックアップ換気なし)へ変更することで呼吸イベントが低下と使用率が改善し407, 408),また,CPAP のアドヒアランス不良のOSA 患者においてbi-level PAP(バックアップ換気あり)へ変更することでアドヒアランスが向上することが示されている409).OHS に対しては,4. 1. 8 「肥満肺胞低換気症候群(OHS)」を参照のこと.

低肺機能に伴う睡眠低換気,または睡眠中の中枢性肺胞低換気を伴うOSA 患者では,bi-level PAP(バックアップ換気あり)の適応である.Volume assured pressure support(VAPS)機能の設定により,肺胞換気量の目標量を設定することが可能で,睡眠中の体位や睡眠ステージで変動しうる睡眠中の換気(PaCO2 レベル)をより安定化させることが期待できる.

2010 年代にI 型急性呼吸不全および一部のII 型急性呼吸不全に導入され,広く普及したHFNC は,加温加湿された高流量空気が鼻腔内を覆う太いカニューレを通じて持続的に供給され,気道内圧を上昇させる.CPAP やbilevel PAP で設定する呼気終末陽圧(PEEP)とは異なり,設定流量や,開口・閉口で容易に気道内圧は変動する410).海外では,高齢の中等症までのOSA に対する有効性も示されている411).国内では,現在OSA に対するHFNC は保険適用外であり,CPAP の代替としての位置づけではない.国内のOSA へのHFNC の導入にむけては,適切な流量のタイトレーションをどのように行うか,大量に必要な滅菌

表21 OSA 患者に対する陽圧治療(CPAP 以外)の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

低肺機能による低換気を伴うOSA へbi-level PAP( バックアップ換気あり) を用いるI A高齢の中等症までのOSA へHFNC を行うことを考慮してもよい

* IIb B

*わが国ではOSA に対する保険適用がない