p.37 抽出テキスト
が報告されている355, 356).しかし,いずれの報告も十分なエビデンスがあるとは言えない. b. 上気道開大筋群(とくにオトガイ舌筋)虚脱に対す る薬物治療以前よりセロトニン作動薬357),コリン作動薬358),α1 受容体作動薬359)などが研究されてきたが,実臨床での有効性確立までに至っていない360, 361).しかし最近の報告では, OSA に対して選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬アトモキセチン(注意欠陥・多動性障害に対して保険適用)とムスカリン受容体拮抗薬オキシブチニン(過活動膀胱,不安定膀胱に対して保険適用)併用によるAHI 改善効果が報告されており,今後追加の検証が待たれる362, 363). c.呼吸調節系の不安定性に対する薬物治療 炭酸脱水素酵素阻害薬であるアセタゾラミドは,呼吸不安定性の改善を介したAHI 低下効果が以前より報告されている364, 365).過去の13 研究を統合したメタ解析では,中枢性無呼吸と同様にOSA 症例でもアセタゾラミド投与で一定のAHI 改善効果があることが示されている366)(現状でSDB に対する保険適用があるのはアセタゾラミドのみである).また,OSA に対するスルチアム(炭酸脱水酵素阻害作用をもつ)に関するRCT でも,AHI 改善効果が認められたとの報告がある367).しかしながら,いずれの報告も短期間の一定程度の効果のみで,長期間使用の有効性や安全性は確立していない. d.低い覚醒閾値に対する薬物治療 覚醒閾値が低いと頻回覚醒が起こり,これによる睡眠分断と換気応答変動によってOSA が悪化する可能性がある.このような頻回覚醒を介するOSA の悪化機序に対して睡眠薬が有効である可能性があるが,これまでに試みられたベンゾジアゼピン系薬剤368),非ベンゾジアゼピン系薬剤369),GABA- 再取り込み阻害薬370),メラトニン受容体作動薬371)では有効性が確立されていない(“5. 2. 2 生活習慣の是正と運動” 項を参照のこと). e.その他の薬物治療 甲状腺機能低下症や先端巨大症に伴うOSA は,原疾患に対するホルモン療法にてAHI 減少が期待できる372-376).限定的な報告ながら,治療抵抗性高血圧患者に合併するOSA に対してはアルドステロン拮抗薬であるスピロノラクトン内服治療でAHI 低減の可能性が示唆されている352). また,CPAP 治療中のOSA 患者の残遺眠気に対するモダフィニルに関しては,睡気症状改善が報告されている377, 378).ただし同薬剤は,安全性の観点から,残遺眠気の診断手順,処方指針などが厳格に定められており,適正使用ガイド379)に沿って使用する必要がある. 5.2.5 CPAP(表18,表19,表20) 1981 年にColin Sullivan によって鼻マスクを介したCPAP 治療がOSA 患者の上気道虚脱を改善できる有効な手段として紹介された380).わが国では,1998 年より保険収載され,日中の眠気,倦怠感などの自覚症状を認め,かつPSG でAHI 20 以上,簡易モニターでAHI 40 以上の場合にCPAP 治療の適応となった.こちらに関しては,一般的に用いられる重症度分類(軽症: AHI 5 ~15/時間,中等症: AHI 15 ~30/時間,重症: AHI ≧30)や,米国での診療・治療適応のカットオフと異なり,AHI が15 ~20/時間の患者にCPAP が導入できないなどの問題点が残されている.現在の保険診療における適応を考慮した睡眠時無呼吸の診断と治療のアルゴリズムに関しては「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」で言及されて 表20 CPAP 治療におけるEPR/FLEX の効果に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 鼻腔抵抗の高い患者のアドヒアランス改善を目的としてEPR/FLEX の使用を考慮するIIa Cアドヒアランス改善を目的としてEPR/ FLEX の使用を考慮してもよいIIb C 表19 CPAP 治療における加湿器の効果に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 鼻閉の改善を目的として加湿器の使用を考慮するIIa C鼻粘膜の炎症の改善を目的として加湿器の使用を考慮するIIa Cアドヒアランスの改善を目的として加湿器の使用を考慮してもよいIIb C 表18 OSA 患者におけるCPAP 治療による症状やQOL の改善に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 日中の眠気の改善を目的としてCPAP 治療を行うI A QOL の改善を目的としてCPAP 治療を考慮するIIa A