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p.35 抽出テキスト

腔鏡下スリーブ状胃切除術(胃を約80% スリーブ状に切除し胃管を形成する術式)で,食事制限を目的としたものである.わが国では,高度肥満者(SDB 合併の場合にはBMI >35)に対する肥満外科手術として,唯一保険収載されている(表15,表16) 310, 311).OSA に対する効果は,肥満外科手術と生活習慣の介入を比較したRCT があり,肥満外科手術は生活習慣への介入よりも有意に体重減少, AHI 改善を認めたとの報告がある312-315).メタ解析でも,肥満手術によってBMI およびAHI が有意に低下したことが報告されているが,多くの患者は手術後も肥満のままであり,OSA が残存していないかどうかを長期的にモニタリングし,症状や併存疾患を考慮しながら適切な治療を行うべきであることが示唆されている316-319).

わが国のOSA 患者は海外の患者に比して肥満が軽度な患者が多いため,これらの研究結果をそのままわが国のOSA 患者に適応することには注意が必要である.しかしながら,肥満のOSA 患者に対し減量のための食事や運動といった生活習慣に関する患者教育を行うことは重要である. 5.2.2 生活習慣の是正と運動(表17)

生活習慣の是正によるOSA の治療では,上気道を虚脱させる因子,上気道を開存させる因子の変化が期待される.それらの因子には,体重,喫煙,飲酒,睡眠薬,運動があげられる.飲酒は呼吸中枢に影響を与え320),上気道開大筋を弛緩させ上気道抵抗を増す321).メタ解析において,飲酒はBMI 調整後もOSA の発症リスクであり322),OSAの治療目的として,就寝前の飲酒の禁止が推奨される.一方,飲酒摂取制限がOSA の軽減,発症予防に有効であるかについては未解明である322).

米国の大規模コホート研究では,現喫煙者は非喫煙者に比して4.4 倍高い割合でOSA を発症するが,過去喫煙者は非喫煙者に比して有意性を認めず,喫煙によるOSA 発症リスクは喫煙期間中に限られる可能性も示唆されている323).したがって,OSA の発症リスクが高い患者においては,より積極的な禁煙指導を推奨する.喫煙(ニコチン曝露)による気道開大筋の弛緩(気道虚脱),上気道炎症の誘発,覚醒閾値の低下作用については,一定の見解が得られていない324).

ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使用することで,上気道開大筋の弛緩や低酸素への換気応答が低下し,OSA の重症化が懸念される.小規模なRCT では,OSA の診断のない対象者への長時間作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬(フルラゼパム30 mg)投与群で,非投与群に比して無呼吸イベント数が増加し,無呼吸時間が延長した325).しかし,中等症~重症のOSA 患者への投与では,長時間作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬(テマゼパム10 mg,日本未発売)投与により,覚醒時に換気応答が亢進している患者ほど睡眠時の低酸素血症が悪化したが,AHI の悪化は認められな

表15 肥満外科手術の手術適応基準

保険適用(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術,2022 年改訂) 6 ヵ月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られない下記の肥満患者

• BMI が35 以上で,糖尿病,高血圧,脂質異常症,睡眠時無呼吸症候群のうち1 つ以上の合併. • BMI が32 ~34.9 で糖尿病のコントロールが不良(HbA1cが8.0%以上)で,高血圧症(収縮期血圧160 mmHg 以上),脂質異常症(LDL-C140 mg/dL 以上またはnon-HDL-C170 mg/dL 以上),または睡眠時無呼吸症候群(AHI30 以上の重症)の治療が不十分なもの1 つ以上の合併. (厚生労働省. 310)を参考に作表)

表16 外科手術適応となる肥満症患者手術適応となる肥満症患者は,原則として年齢が18 歳から65歳までの原発性(一次性)肥満症患者であり,6 ヵ月以上の内科的治療を行ったにもかかわらず,有意な体重減少および肥満に伴う合併症の改善が認められず,次のいずれかの条件を満たすもの. (ELIa 2a) 1) 減量が主目的の手術(Bariatric Surgery)の適応はBMI 35 kg/m

2 以上である.(EL2a) 2) 合併疾患(糖尿病,高血圧,脂質異常症,肝機能障害,睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の手術(Metabolic Surgery)の適応は,糖尿病か,または糖尿病以外の2 つ以上の合併疾患を有する場合はBMI 32 kg/m

2 以上とする.(EL2b) 3) BMI 35 kg/m 2 未満への適応は臨床研究として取り扱うのが妥当であり,厳格なインフォームドコンセント,追跡調査,さらに臨床登録を必須とする.(EL6) (日本肥満症治療学会肥満外科治療ガイドライン策定委員会.2013. 311)より)表17 OSA 患者における生活習慣の是正に関する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

減量と組み合わせて運動を行うI B

禁煙を行うI Bベンゾジアゼピン系睡眠薬使用を避けることを考慮するIIa B非ベンゾジアゼピン系睡眠薬,オレキシン受容体拮抗薬の使用を考慮してもよいIIb B就寝前の飲酒の禁止を考慮してもよいIIb B