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p.28 抽出テキスト

factor(TNF)-α値186)などが広く用いられているが,OSA患者ではこれらの血中の炎症マーカー値が健常者に比して高値であり,その重症度が増すにつれて,より高値を示すことが報告されている184).最近では,血管の炎症や障害を反映する血漿中のマーカーであるPentraxin3 と動脈スティフネスの指標であるCAVI の関連も報告されている187).

In vitro では,Hela 細胞をそれぞれ持続的な低酸素(SH)条件下と間欠的低酸素血症条件下に置き,hypoxia inducible factor-1(HIF-1)依存性転写活性,NF-κB 依存性転写活性を測定した.その結果,SH 条件下ではHIF-1 依存性転写活性が有意に高値であり,間欠的低酸素血症条件下ではNF-κB 依存性転写活性が優位であった.OSA 患者をCPAP で加療することによりNF-κB 依存性転写活性の下流である血清TNFα値の改善が認められた188).一方, OSA 患者のなかでも低酸素血症が厳しい例では,HIF-1依存性転写活性が優位となり血清エリスロポエチン濃度が高値を呈するとの報告もある189-191).

酸化ストレスとは,生体における活性酸素(reactive oxygen species: ROS)の産生と抗酸化防御機構のバランスが崩れ,酸化に傾いた状態と定義される.酸化ストレスは,細胞や組織を傷害し,生体機能を障害することによって動脈硬化を来たす.OSA 患者の酸化ストレスマーカーとしては,チオレドキシン192),マロンジアルデヒド(malondialdehyde: MDA)

193),還元鉄(reduced iron) 194)がAHI や酸素飽和度の低下と相関するとの報告がある.CPAP 前後でチオレドキシンの改善が認められた報告が存在するが195),抗酸化物質投与による酸化ストレスマーカーの改善については一定の見解が得られておらず,今後のRCT の結果が待たれる.

血管内皮機能障害や動脈硬化の進展には,間欠的低酸素血症による炎症,酸化ストレスによる血管内皮の一酸化窒素(nitric oxide: NO)bioavailability の低下が関与している可能性がある.OSA 患者では,健常者に比して内皮依存性血管拡張薬による前腕血管血流の増加障害を来たし196),内皮型NO 合成酵素(endothelial NO synthase: eNOS)阻害作用のある血清Asymmetric dimethylarginine 値の上昇が報告されている197).さらにOSA 患者の静脈血管より採取された内皮細胞のeNOS とニトロチロシンをCPAP 前後で計測し,治療後にeNOS の亢進とニトロチロシンの抑制が観察され,OSA 患者ではNO bioavailability 低下による血管内皮機能障害が存在することが報告されている198). Flow-mediated vasodilation(FMD)とreactive hyperemia peripheral arterial tonometry(RH-PAT)を用いてOSA患者のCPAP 前後の血管内皮機能を評価すると,有意な改善が認められたとの報告があり,低酸素ストレスやNO bioavailability の改善には一定の効果があると考えられ

る199, 200).

4.1.6 インスリン抵抗性との関連

OSA が肥満などの交絡因子と独立してインスリン抵抗性と関連することは,多くの疫学研究や臨床研究の横断的解析において報告されている.米国の150 人の健常肥満男性を対象とした報告では,AHI は肥満と独立してインスリン抵抗性と関連していた201).非肥満の若年男性を対象とした症例対照研究でも,OSA とインスリン抵抗性には有意な関連が認められており202),OSA が年齢や肥満と独立してインスリン抵抗性と関連することが示唆される.非糖尿病男性を対象とした11 年間の観察研究でも,AHI 5 以上はHOMA-IR で表されるインスリン抵抗性と独立して関連していたことが示されている203).

OSA がインスリン抵抗性を惹起する機序として,OSAによる間欠的低酸素血症204),睡眠時間制限205, 206),そして睡眠の分断化207),交感神経活性や酸化ストレスの亢進,全身性炎症などの関与が考えられているが,まだ十分には解明されていない.動物実験モデルにおいて,間欠的低酸素曝露が膵β細胞におけるHIF-1 発現を介し,活性酸素産生が亢進することによりインスリン抵抗性をきたすことが示されている208).健康ボランティアにおける5 時間の間欠的低酸素曝露では,17% のインスリン感受性の低下を認めた204).一方,3 時間の間欠的低酸素暴露では,インスリン感受性に有意な影響を与えなかった209).この機序として,低酸素曝露初期には肝におけるインスリンクリアランスに影響を与えた可能性が推測されている.これらからは,低酸素の程度や曝露時間の違いによりインスリン抵抗性に与える影響が異なる可能性がある.また,健常人を対象とした聴覚的および機械的刺激による睡眠の分断化は,インスリン感受性を20 ~25% 低下させたことが報告されており207, 210, 211),OSA による睡眠の分断化も機序の1 つとして推測されている.

一方,CPAP によりインスリン抵抗性が改善するかに関しては,非糖尿病患者,糖尿病患者を対象とした多くの介入研究が行われてきた.インスリン抵抗性を評価項目としたRCT では,インスリン抵抗性の改善が得られた試験212, 213)と得られなかった試験214, 215)が混在しているが,これら非糖尿病患者を対象にした9 つのRCT のメタ解析と2 型糖尿病患者を対象にした7 つのRCT のメタ解析では,インスリン抵抗性の指標の1 つであるhomeostasis model assessment-insulin resistance(HOMA-IR)が有意に減少したことが示されている216, 217).しかしながら,これまでの研究はほとんどが小規模であり,インスリン抵抗性の