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p.27 抽出テキスト

は,正常人では酸素飽和度が75 ~80% 程度の短時間の低酸素状態では影響がないことが示されている159).一方,低酸素状態は左室の拡張障害を招く可能性が示唆されており160),正常心でも心機能全体として悪影響を受ける可能性がある.さらに,低酸素状態が肺動脈収縮を招き肺動脈圧が上昇することは古くから知られており161, 162),右心機能を悪化させる原因となる.

OSA では血管内皮機能が低下していることも示されており163, 164),心臓への負荷を一層増大させ,動脈硬化を進展させる原因と考えられているが,詳細は「4.1.5 炎症,酸化ストレス,NO(血管内皮,動脈硬化)への影響」を参照されたい.

4.1.4 交感神経活性と神経体液性因子への影響

a.OSA による交感神経系の亢進

OSA を有する患者における交感神経活動の亢進はマイクロニューログラムを使った直接的交感神経活動記録,血中あるいは尿中ノルアドレナリン濃度にて評価することができる165, 166).交感神経活動の亢進は睡眠中の無呼吸時だけでなく,無呼吸の生じていない覚醒時においても観察され167),血圧変動・血圧上昇に寄与する168).一方,CPAP治療後は6 ヵ月後に交感神経活動の低下が観察される169). i.睡眠時の交感神経活動亢進

無呼吸時における交感神経活動の一過性の亢進には,無呼吸に伴う低酸素血症,高炭酸ガス血症,肺伸展反射の消失,および中途覚醒が関係する. ii.低酸素血症・高炭酸ガス血症

無呼吸に伴い,動脈血酸素分圧は低下し,二酸化炭素分圧は上昇する.低酸素血症は頚動脈体の末梢化学受容器を刺激し反射性に交感神経活動を亢進させる170).一方,二酸化炭素分圧の上昇も中枢の化学受容野を介して交感神経活動を亢進させる170).また,二酸化炭素分圧の上昇は,末梢化学受容器の感受性を亢進させ,低酸素性反射を増幅させる効果がある158). iii.肺伸展反射の消失

無呼吸により肺伸展が消失すると,伸展反射の消失を介し交感神経系が脱抑制され,交感神経系が活性化する171). iv.覚醒反応

覚醒反応は交感神経活動を亢進させる.音により誘発された覚醒反応は交感神経活動,血圧,および心拍数の一過性の増加を惹起する172). b. 睡眠中の心拍・血圧変動との関係

無呼吸終了直後から血圧上昇が一過性に観察されるが,これは先述の機序を介した交感神経活動の亢進が寄与している.一方,無呼吸時には心拍数の低下が観察され,アトロピンにより消失,酸素投与により減弱する173).つまり無

呼吸による心拍数低下反応には副交感神経活動の亢進が関係している. c. 覚醒状態における交感神経活動の亢進

日中の無呼吸が観察されていない状態においても,交感神経活動の亢進が持続する.しかし,この現象は睡眠時の交感神経活動亢進の機序では説明できない.これには夜間・連日の数時間にわたる間欠的低酸素への曝露と覚醒反応の頻度が深く関係している174-176).また,覚醒時の交感神経活動はCPAP による無呼吸の是正により低下する169). i.間欠的低酸素

OSA により頻回に繰り返される低酸素状態(間欠的低酸素)は日中覚醒時の交感神経活動亢進と圧反射のセットポイントの変化,動脈圧反射のリセッティングに影響する. OSA による睡眠中の間欠的低酸素を模倣した実験系において,1日8 時間× 4 週間の間欠的低酸素曝露により交感神経活動が亢進,血圧上昇,内皮機能低下が観察された174).さらに,血圧- 交感神経活動の関係は右方偏位することから,間欠的低酸素により圧反射のリセッティングが生じると考えられる175). ii.覚醒反応

OSA 患者において,覚醒反応指数は日中に記録された安静時の交感神経活動と正の相関を認めた176).さらに,覚醒反応指数は間欠的低酸素の指標とは独立した交感神経活動の予測因子であることが示された176). d.OSA によるレニン・アンジオテンシン・アルドス

テロン系,ナトリウムペプチド系への影響間欠的低酸素により,腎交感神経活動の亢進を介し血漿レニン活性が上昇することが動物実験で示されている177).一方,OSA 患者では,血漿アンジオテンシンIIは上昇,血漿アルドステロン濃度は高血圧を有する群で上昇するが,血漿レニン活性は結果が一定していない178).また,心房ナトリウムペプチドは上昇し,CPAP により低下すると報告されている179, 180).

4.1.5 炎症,酸化ストレス,NO(血管内皮,動脈硬化) への影響

OSA と心血管イベント発症には密接な関連が報告されている181).その発症機序には複数の仮説が存在するが,現時点ではOSA による間欠的低酸素血症と再酸素化が体内に炎症や酸化ストレスを生じさせ,血管内皮機能障害,動脈硬化が進展するというエビデンスが多い182).心血管イベントの発症予測炎症マーカーとしては,血清あるいは血漿中の高感度C-reactive protein(CRP)値や血清CRP 値183, 184),Interleukin(IL)-6 値185),Tumor necrosis