p.24 抽出テキスト
らつきがある.8 つの報告に対するシステマティック・レビューでは,CKD 患者313 人中30 人でCSA 患者が確認されており,有病率9.6% と算出している120). 4 病態 4.1 OSA の病態 4.1.1 機序 a.上気道の解剖学的異常 一般的に,OSA 患者では健常人に比して,上気道周囲の軟部組織量,顎顔面形態,舌容積,扁桃肥大などによって解剖学的に上気道が小さい122-124).なかでも肥満による咽頭周囲への脂肪沈着は上気道の大きさに影響するもっとも重要な因子である. 欧米では,アジアに比して肥満人口比率が大きく,また肥満の程度が高度であるにもかかわらず,アジアと欧米のOSA の有病率に大きな差はない41, 125).その理由として,アジア人,とりわけ東アジア人では,肥満以外の要因が解剖学的上気道形態に大きく影響を及ぼしている.解剖学的上気道形態における人種間差異は解剖学的バランスモデル(図9)を用いて説明することができる126, 127).つまり,上顎,下顎,頚椎などの骨構造物で囲まれた器と,その器のなかに存在する軟部組織量のバランスによって上気道の大きさが決定される.欧米人では器が大きいため,かなりの肥満になるまで咽頭腔径は縮小しない(図9B).東アジア人では,セファロメトリー上,解剖学的骨格因子である前頭蓋底長の短縮,上顎長,下顎長の短縮が認められている128).つまり,東アジア人では骨構造物で囲まれた器が比較的小さいため,少量の軟部組織の増加で咽頭腔径が縮小する(図9C). b.上気道の神経性調節異常 閉塞性無呼吸が覚醒時には観察されず,睡眠時にのみ観察されることを考えると,解剖学的な上気道狭小化だけでOSA の病因病態生理を説明することはできない.鼻中隔尾側末端から喉頭蓋までの咽頭は,嚥下,嘔吐,おくび,発声をスムーズに行うために,柔軟に閉塞・開大を繰り返すことができる部位(図10) 129)であり,元来虚脱性が高い. したがって,上気道開大筋群のなかでも重要な役割を持つオトガイ舌筋は,呼吸相に関係なく上気道の開存を維持すべく活動しており(tonic activity),加えて,吸気時には横隔膜が作り出す上気道内の陰圧に対して上気道虚脱を防ぐ ように活動性をさらに高める(phasic activity)ことが知られている130).また,オトガイ舌筋は,呼吸リズム形成領域,中枢化学受容野,上気道陰圧受容器のみならず,脳幹部覚醒睡眠調節中枢からの入力を受けるため131),覚醒相から睡眠相への移行に伴ってオトガイ舌筋の活動性は低下し,上気道は虚脱する方向に向かう132).このような上気道開大筋群の代償機構の破綻が上気道の解剖学的異常と相まって,OSA の基本病態生理を形成すると考えられる131, 133).また,オトガイ舌筋の筋活動は,横隔膜の筋活動が上昇する前,すなわち吸気開始前から上昇し始めることがわかっている.これらは上気道内の陰圧に対する機械受容器の反射的代償機構では説明はできない事象であり,上気道開大筋群自体の調節異常もOSA の病因病態生理に関与すると考えられる122, 131). c.呼吸調節系の不安定性 OSA では呼吸調節系の不安定性(呼吸不安定性)をあわせ持つことがある134, 135).延髄呼吸中枢からの換気ドライブはオトガイ舌筋の支配神経である舌下神経へも作動するため,延髄呼吸中枢の不安定性が上気道抵抗にも影響を及ぼす.呼吸不安定性のなかで,換気ドライブが亢進した周期では,オトガイ舌筋の筋活動も亢進し上気道抵抗は低下するが,換気ドライブが低下した周期では,オトガイ舌筋の筋活動も低下するため上気道抵抗が増し閉塞性無呼吸が 図9 解剖学的バランスモデルReprinted with permission of the American Thoracic Society. Copyright © 2022 American Thoracic Society. All rights reserved. Cite: Watanabe T, Isono S, Tanaka A, Tanzawa H, Nishino T. Contribution of body habitus and craniofacial characteristics to segmental closing pressures of the passive pharynx in patients with sleep-disordered breathing. Am J Respir Crit Care Med. 2002;165(2):260-5. The American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine is an official journal of the American Thoracic Society. The authors, editors, and The American Thoracic Society are not responsible for errors or omissions in translations. C) 骨構造物で囲まれた器が小さい B) 軟部組織の増加 A) 健常人軟部組織骨構造物で囲まれた器咽頭腔 組織圧↑ 組織圧↑