p.47 抽出テキスト
では,急性心筋梗塞や胸痛の再発はアスピリン非投与群に比して投与群で有意に少なかった462)(表22) 456–462).また,OCTによる検討では,約1/4の冠攣縮誘発部位において血栓をともなう冠動脈プラークびらんが認められ36),冠攣縮と冠動脈プラークびらんの関連も注目されている.また,冠動脈プラーク破綻とそれに引き続く血栓形成が冠攣縮により誘導惹起され,急性冠症候群に進展する可能性も報告されている463). 冠攣縮性狭心症における抗血小板療法は,冠攣縮発作後の血小板活性化や,凝固能亢進に起因する冠動脈内血栓に対して予防効果が期待できる可能性があり,特に冠攣縮により不安定狭心症を発症している症例や,急性冠症候群の既往のある症例に対してはより有用と考えられる.しかし現時点で抗血小板薬の有効性は確立していない.一方,有意な器質的狭窄を合併した冠攣縮性狭心症においては,安定労作狭心症における抗血小板療法に準じて治療がなされるべきである. 2.2.3 漢方薬 冠動脈疾患と不安やうつ状態との関連は周知されているが,器質的冠動脈疾患に比べて,冠攣縮性狭心症には不安やうつ状態を有する症例がより多いことが報告されている464).近年,不安やうつ状態の改善に使用される漢方薬の冠攣縮性狭心症に対する有用性が指摘されている. 四逆散は,自律神経失調状態を含む心因性の症状をともなう冠攣縮性狭心症に有効との報告がある465).本論文では,ベニジピン,硝酸イソソルビド,ニコランジル投与でも胸痛がコントロールできない不安感が強い冠攣縮性狭心症患者に対して,副作用も考慮して四逆散と桂枝茯苓丸を少量より漸増し,胸痛発作が完全に消失した2症例が報告されている. 桂枝茯苓丸は,細動脈を拡張することにより血流改善をもたらし,赤血球のうっ滞を改善することにより末梢循環を改善する466, 467).また,血管内皮由来一酸化窒素の増加により,血管内皮機能を改善し冠攣縮改善効果を示す可能性がある467).エホニジピンではコントロールできず,副作 告では,冠攣縮性狭心症10人においてデノパミン40 mgの投与により70%の症例で発作が完全に消失し,発作回数やニトログリセリンの使用回数が有意に減少し,発作の増悪例は認められなかったことが示されている453).また,15 mg/日という低用量においても多剤併用の難治性冠攣縮性狭心症に対する有用性が報告されている454)(表21) 452–454). しかし,デノパミンについては多くの症例報告で有効であるが,有効症例のみ報告されている可能性があり,また最近の報告や多数例を対象とした報告はない.一部の症例では有効である可能性はあるものの,その投与量等も含めさらなる研究結果がまたれ,現時点では予防効果のエビデンスが不十分である. 2.2.2 アスピリン 低用量アスピリンは,シクロオキシゲナーゼ-1を抑制することによりトロンボキサンA2の産生を低下させ,血栓形成抑制効果があるために,急性冠症候群のみならず慢性冠症候群の二次予防に推奨されている17).一方,一次予防ではアスピリンにより心血管イベントは抑制できたとしても,出血のリスクが上昇することは周知の事実であり,低用量アスピリンの真の有用性はそのバランスにより決定される455). 高用量アスピリンが冠攣縮性狭心症の症状を増悪させ可能性が報告され456),低用量アスピリンについては,メタ解析も含め報告されている457–461).冠動脈に有意狭窄を認めない冠攣縮性狭心症患者をアスピリン投与群と非投与群にわけて解析したところ,主要心血管イベントの発生率は両群で同等であったことが報告されている457–460).4 つの傾向スコアマッチング研究,1つの後ろ向き研究,1つの前向き多施設研究を対象としたシステマティックレビュー・メタ解析の論文では,冠動脈に有意狭窄を認めない冠攣縮性狭心症患者(アスピリン投与群と非投与群)の合計3,661人において,1~5年の観察期間で,アスピリンの使用と主要心血管イベントの発生に相関はなく,心筋梗塞や心臓死との関連も認められなかった461).一方,冠攣縮により急性冠症候群を発症した症例を対象にした後ろ向き研究 表21 冠攣縮性狭心症患者に対するデノパミンの推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 冠攣縮性狭心症患者に対し,デノパミンの投与を考慮してもよい452–454).(本ガイドラインは適応外使用を推奨するものではない) IIb C表22 冠攣縮性狭心症患者に対するアスピリンの推奨と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 有意な器質的狭窄のない冠攣縮性狭心症患者に対し,アスピリンの投与は推奨されない456–462). III No benefit B