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表20 難治性冠攣縮解除のためのファスジル冠動脈内投与の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 難治性冠攣縮解除のため,ファスジル冠動脈内投与を考慮する. IIa B 2.2 デノパミン(β1作動薬),アスピリン, 漢方薬など 2.2.1 デノパミン 冠攣縮性狭心症においては,Ca拮抗薬と硝酸薬が有用であるが,これらの薬剤でも約20%の症例が治療抵抗性であることが報告されており448),その他の薬剤の併用が考慮される.その中で,自律神経の関与が冠攣縮性狭心症の増悪や発症に関わっていることが報告されており449),アドレナリン受容体作動薬も考慮する. 慢性心不全治療薬としてわが国で開発された経口アドレナリンβ 1受容体選択的刺激薬であるデノパミンは,カテコラミン構造を含まないために,ノルアドレナリン,ドパミン等のカテコラミン製剤と作用機序が異なり,脈拍や血圧への過度な影響も少ないことが知られている450).また,デノパミンによるβ 1受容体刺激による冠血流増加作用,α受容体遮断による腎血流・大腿血流増加作用が報告されている450, 451). 臨床例では,自然発作か誘発試験で冠攣縮が証明されている冠動脈に有意狭窄のない冠攣縮性狭心症において,デノパミンの有用性が報告されている452–454).複数症例での報 の収縮弛緩を制御する.すなわち,収縮性血管作動物質の刺激により,G 蛋白に共役した受容体を介して低分子量G蛋白であるRho が活性化され,その標的蛋白であるRho キナーゼが活性化される.活性化されたRhoキナーゼは, MLCPhのミオシン結合サブユニットをリン酸化することで,その活性を阻害する.その結果,MLCK/MLCPh 活性のバランスにおいてMLCK優位になり,MLC のリン酸化が促進され,血管平滑筋は過収縮する436, 437). Rho キナーゼは細胞内Ca 2+ 濃度非依存的に血管平滑筋の収縮弛緩を制御する重要な分子スイッチである438).Rhoキナーゼ阻害薬ファスジル塩酸塩水和物(以下,ファスジル)は血管平滑筋Rhoキナーゼを特異的かつ強力に抑制し冠攣縮の寛解をもたらす439).ファスジルと硝酸薬の作用機序は全く異なることから,ファスジルは硝酸薬とは異なる血管拡張効果を示す.硝酸薬投与後のファスジル追加投与により相加的に冠拡張を獲得することが可能である440).多くの症例報告から,多剤抵抗性・難治性冠攣縮に対するファスジル冠動脈内投与の有用性が強く示唆されるものの143, 441–446),従来使用される硝酸薬,ニコランジルに比べてファスジルの冠攣縮寛解効果が優れていることを客観的に示したランダム化比較試験や観察研究はこれまで存在しない.一方,ファスジルのslow flow改善効果を検討した後ろ向き観察研究447)では,冠動脈内にファスジル(中央値18 mg,最大投与量30 mg )を心電図モニター下で1~5分かけて投与された症例の22%において一過性血圧低下を認めたが,死亡や心筋梗塞といった重篤な合併症の発生はなく,ファスジル冠動脈内投与の安全性は示されている.硝酸薬などの従来使用される冠拡張薬に抵抗性を示す難治性冠攣縮に対して,Rhoキナーゼ阻害薬ファスジルの冠動脈内投与を選択肢として考慮する(表20). 図17 血管平滑筋の収縮弛緩制御とRho キナーゼ活性 Rhoキナーゼ阻害薬 ファスジル血管作動物質(アンジオテンシンII, セロトニン,エンドセリン-1,など) 抑制受容体 Rho PLC IP3筋小胞体L型Caチャンネル 血管平滑筋細胞 RhoキナーゼMLCK CaM Ca2+ Ca2+ ADP MLCPh MLCPh拡張収縮 P P P P ATP ADP ATP ミオシンミオシン