p.43 抽出テキスト
5.4 包括的診断(図16) CFR低値,IMR高値は,いずれもCMDの診断に用いられる.INOCAの検査としてアセチルコリン誘発試験に引き続いてCFR,IMRを計測した報告では143),アセチルコリン誘発試験陽性が68%,CFR低値(CFR<2.0)が35%,IMR高値(IMR≧18)が40%に認められた.またこれらの多くは共存しており,アセチルコリン誘発陽性症例の中でCFR低値を合併したのは37%,IMR高値合併は48%,冠攣縮性狭心症,CFR低値,IMR高値すべてを合併したのは22%であった.一方,欧米ではINOCAの診断手順として,CFR,IMRの計測を先行し,その後にアセチルコリン誘発試験を行うことが推奨されているが101, 102),その診断手順においては,INOCA症例のうち微小血管狭心症単独(CFR<2.0,IMR≧25)と診断される症例が52%,冠攣縮性狭心症単独が17%,両者の合併が21%であった142).心外膜冠動脈攣縮および冠微小血管攣縮を除いた症例では,IMR高値(IMR≧25)が25%,CFR低値(CFR<2.0)が24%,両者の合併は9%であった. この2 つの診断手順の違いにより,陰性(非心臓性)と判断されるのは11~16%と同程度であったが,冠拡張薬を先に投与する手法ではアセチルコリン誘発陽性率(冠攣縮性狭心症と診断)が低く(37% vs. 68%),微小血管狭心症単独と診断される症例が多くみられた(52% vs. 16%).診断手順の違いによって,INOCA endotypesの診断に影響を及ぼす可能性があり,注意が必要である. 5.5 生理学的指標と予後の関係 (表18) 11, 14, 81, 86, 101, 102, 142, 143, 427–430) INOCAにおいて生理学的指標により病態の層別化を行うことは,その後の予後予測に有効である可能性が示されている. 多施設国際共同前向き観察研究COVADISでは,冠動脈に有意狭窄が存在しない微小血管狭心症の診断基準に, CMDとしてCFR低下(侵襲的計測によるCFR<2.0,あるいは非侵襲的計測によるCFR<2.5),アセチルコリン誘発によるMVSの所見,IMR高値(IMR≧25),slow flowの存在(TIMIフレームカウント>25)の4つを挙げた.観察中のイベント発生は7.7%/年に生じたが,男女間差,人種間差は認めなかったことが報告された14). アセチルコリンによる冠攣縮誘発試験に引き続きCFR, IMRを計測した報告では,冠攣縮陽性かつIMR高値(IMR ≧18)がイベント発生の高リスク群であった143). 5.3 IMR 冠動脈遠位部,すなわち心筋灌流枝の直前での冠内圧,冠血流を計測することにより,計測部位より遠位における血流抵抗を計測することが可能となる.圧センサーと温度センサーを用い熱希釈法から求めるIMR 422–425)と,圧センサー・超音波トランスデューサを装着したワイヤーにより求めるHMR(hyperemic microvascular resistance)がある145, 426).IMR,HMRはCFRと比べ,冠微小血管抵抗に特異的な指標として用いられる(図15). 5.3.1 IMR計測:標準的検査法 温度センサー付きプレッシャーワイヤーを用いて,冠動脈遠位部圧(Pd)および遠位部のTmnを同時計測することによりIMRを計算することが可能である.圧・温度センサーは,カテーテル先端より6 cm以上遠位に留置する.各冠動脈枝における留置位置は,LADでは中間~遠位2/3の部位,RCAでは4PD-4AV の分岐直前,LCXでは分枝の中でもっとも灌流域が広い枝,が推奨される. TMR(true microvascular resistance) = Pd / F = Pd ・ Tmn / Vであるが,血管容積を一定と仮定すると,TMRはPd・Tmn にて近似することができる.すなわち, IMR = Pd・Tmnとして,計算される. 図15 生理学的指標と冠動脈の障害部位 Epicardial artery stenosis FFR IMR/HMR CFR Resistance vessel stenosis