p.37 抽出テキスト
123I-BMIPP 心筋シンチグラフィでは,このようにして心筋内に集積した123I-BMIPPから,脂肪酸代謝を反映した画像を得ることができる. 脂肪酸のβ 酸化は,心筋のエネルギー代謝の約2/3を占めている.一方,心筋虚血があると,エネルギー代謝の基質が脂肪酸からブドウ糖へ移行する.また,虚血に伴う心筋脂肪酸代謝障害は,心筋虚血の解除後もしばらく持続するため(虚血メモリー) 369–371),その間に123I-BMIPP 心筋シンチグラフィを行うことで,負荷検査を行わなくとも心筋虚血に伴う心筋脂肪酸代謝障害を検出することができる.そのような性質から,冠攣縮性狭心症患者の診断においても有用であると考えられるが,器質的冠動脈疾患による虚血との鑑別は困難である点に留意する必要がある.また,診断感度は72.5%と高くはなく,陰性であることをもって冠攣縮性狭心症を除外することはできない.また,画像所見は虚血の重症度や虚血発作から撮影までの時間の影響を受けるため,その解釈にも注意を要する. 123I-BMIPP 心筋シンチグラフィには,治療経過のフォローアップにおける役割も期待されている.これまでの報告からは,冠攣縮性狭心症患者のうち75.5%において,症状の経過と123I-BMIPP 心筋シンチグラフィの経過は一致するとされているが,残る24.4%の患者においては症状経過と123I-BMIPP 心筋シンチグラフィの経過に乖離がみられるとされているため366), 123I-BMIPP 心筋シンチグラフィを用いたフォローアップ戦略の予後への影響については,さらなるエビデンスの蓄積が期待される. 3.3.2 微小血管狭心症の診断における非侵襲的画像診断 の意義 微小血管狭心症の診断における非侵襲的画像診断の推奨を表15 88, 174, 372–374)に示す. させるためにβ 遮断薬が用いられることがあるが,一般にβ 遮断薬は冠攣縮を悪化させる懸念がある368).冠攣縮性狭心症を強く疑う病歴で,失神の既往や頻回の安静時胸痛などリスクが高いと判断される場合は,β遮断薬の使用について慎重に検討する必要がある.冠攣縮性狭心症の治療に用いられるベラパミルやジルチアゼムなどのCa拮抗薬は,心拍数を低下させる効果も期待できるため,これらの内服によりCCTA施行時のβ 遮断薬投与を回避することを考慮しても良いと考えられる. b. 心筋シンチグラフィ「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)」において,1 123I-MIBG( 123I-metaiodobenzylguanidine)心筋シンチグラフィ,2過換気負荷試験もしくは運動負荷試験と組み合わせた201Tl ( 201Thallium)心筋シンチグラフィ, 3 123I-BMIPP( 123I-β-methyl-p-iodophenyl-pentadecanoic acid)心筋シンチグラフィがいずれもクラスIIbとして,実施を考慮しても良いとされていた2).これらの検査法による冠攣縮性狭心症診断能に関して,1980年から2018年までの報告がまとめられている366). 123I-BMIPP 心筋シンチグラフィは感度72.5%,特異度82.7%と比較的高い診断能が報告されている一方で, 123I-MIBG 心筋シンチグラフィ(感度61.9%,特異度79%), 201Tl 心筋シンチグラフィ(運動負荷:感度56.6%,特異度はデータなし,過換気負荷:感度64.9%,特異度54.5%)の診断能は十分とは言いがたい366).また,これらの診断能を算出する元となっている報告は,全てアセチルコリンあるいはエルゴノビンの冠動脈内投与による冠攣縮誘発試験により冠攣縮性狭心症が評価された報告が対象となっているものの,冠攣縮性狭心症の陽性基準は統一されておらず,未だ小規模の研究が中心で,バイアスが排除できていない点に留意する必要がある366).また,これらの検査法について,近年あまり多くの研究は行われていないことも考慮し,今回のフォーカスアップデート版では,1 123I-MIBG 心筋シンチグラフィ, 2過換気負荷試験もしくは運動負荷試験と組み合わせた201Tl 心筋シンチグラフィの推奨度については,言及しないこととした.以下に, 123I-BMIPP 心筋シンチグラフィについて概説する. c. 123I-BMIPP 心筋シンチグラフィ 123I-BMIPP 心筋シンチグラフィは,心筋脂肪酸代謝を画像化する検査法である.投与された123I-BMIPPは,血液中の遊離脂肪酸と同様に心筋細胞内へ取り込まれ, 123I-BMIPP-CoAとなり,主に細胞内脂質プールに取り込まれ,一部がミトコンドリアに移行する. 123I-BMIPPはカルボキシル基のβ位にメチル基を導入した側鎖脂肪酸であり,β 酸化を受けにくく,しばらく心筋内に停滞する.表15 微小血管狭心症の診断における非侵襲的画像診断の 推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 安定した慢性的な胸部症状を有しているが,心外膜冠動脈に有意狭窄を認めない症例において,13N-アンモニアPET を用いた心筋血流評価を考慮する88, 174). IIa B安定した慢性的な胸部症状を有しているが,心外膜冠動脈に有意狭窄を認めない症例において,負荷心筋パーフュージョンMRI を用いた心筋血流評価を考慮してもよい372–374). IIb B