p.36 抽出テキスト
3.3 CT,MRI,核医学検査 3.3.1 冠攣縮性狭心症の診断における非侵襲的画像診断 の意義 冠攣縮性狭心症が疑われる患者における非侵襲的画像診断の推奨を表14 366)に示す。a. 冠動脈CT(CCTA) 冠攣縮性狭心症を疑う症状を有していても,症状や心電図からは閉塞性冠動脈疾患を除外することは困難な場合がある.冠攣縮性狭心症でみられる発作的な安静時胸痛は,冠動脈の器質的な高度狭窄が原因でも生じるため,注意が必要である.CCTAは閉塞性冠動脈疾患に対して高い陰性適中率を有しており,閉塞性冠動脈疾患の除外に有用である367).ESCガイドラインでは,硝酸薬やCa拮抗薬で緩解する安静時狭心症症状とST変化を有する患者において,冠動脈疾患の状態を評価する目的で心臓カテーテル検査あるいはCCTAを実施することが推奨されている6).そのため,冠攣縮性狭心症が疑われる例に対して,閉塞性冠動脈疾患を除外する目的にCCTAを考慮することは妥当である. 一方で,冠攣縮性狭心症の発作時にCCTAを撮像することが現実的ではないことや,通常CCTA撮影時には冠動脈の描出能をあげるためにニトログリセリンを用いて冠動脈を拡張させることを考慮すると,CCTAで冠攣縮性狭心症を診断することは困難である.CCTAで閉塞性冠動脈疾患を認めない場合には,冠攣縮性狭心症を含めたINOCAの評価の必要性について十分考慮する必要がある.また,閉塞性冠動脈疾患に冠攣縮性狭心症が併発することもあるため,CCTAで閉塞性冠動脈疾患を認めた場合にも,冠攣縮性狭心症が除外されるわけではない点にも留意する必要がある. なお,CCTA施行時に,高心拍時の冠動脈描出能を向上 冠循環における血小板凝集の増加や血液凝固の活性化が引き起こされることによって,冠攣縮自体が血栓形成を促進する33,357).また,第一世代のDESを留置した血管にて内皮依存性の反応性をアセチルコリンの冠動脈内投与によって評価した研究においては,血管内視鏡にてDES内の新生内膜被覆が不良で,さらに血栓を認める血管において,DES遠位部に強い血管収縮反応が認められた251).同様の評価を,第二世代DESであるエベロリムス溶出ステント留置血管で行うと,DES内の新生内膜の被覆度は第一世代DESとほぼ変わらないが,血栓の付着は有意に少なく,アセチルコリンに対する血管収縮の程度も有意に小さかったと報告されている358).これらの報告より,冠動脈内の血栓と冠攣縮には関連性があると考えられる.血栓はステント留置後の血管治癒の初期段階で認める一方359),慢性期に認めた血栓はその後の心血管イベントを予測する因子であることが報告されている360).血栓の存在は,その部位の内皮細胞が傷害されていることが示唆されることより,冠攣縮の発生には内皮機能障害が大きく関与している可能性がある. 冠攣縮の性状によって,AHA分類で連続する 2 セグメント 以上の部位で攣縮が起きるびまん性攣縮もしくは特定の部位に攣縮が限局する局所性攣縮に分けて,血管内視鏡とOCTによる観察所見を比較した研究がある361).この研究では,びまん性攣縮が誘発される血管に比べて,局所性冠攣縮が誘発される部位では,血管内視鏡では黄色調が強いプラークや壁在血栓が多く観察され,そして,OCTではプラーク量がより多く,プラーク内の脂質成分の割合が高いことが報告されている361).この結果より,局所性攣縮は動脈硬化性変化に起因する局所的な過敏反応が関連しているのに対し325, 341, 362, 363),びまん性攣縮は血管運動の障害から構成されることが示唆されている361).そのため,局所性冠攣縮に対してはCa拮抗薬や硝酸薬のみならず,将来の心血管イベントの抑制のためにアスピリンやスタチンの投与を考慮するという報告もある147, 361, 364).また, DES留置後ではあるが慢性期に黄色プラークを認めた症例はその後の予後も不良であるとする報告もあり365),黄色プラークを高率に認める局所性攣縮はより注意が必要となる可能性がある.このように局所性攣縮とびまん性攣縮では,攣縮が発生する血管の動脈硬化の性状や進行度合いに違いがみられていることより,この両者では攣縮の発生機序にも違いがある可能性が示唆されているが,現段階では病態の解明には至ってはおらず,今後の報告が期待される.表14 冠攣縮性狭心症が疑われる患者における非侵襲的 画像診断の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 冠攣縮性狭心症が疑われる症例に対し,閉塞性冠動脈疾患の除外目的にCCTA を考慮する. IIa C冠攣縮性狭心症が疑われる症例に対し, 123I-BMIPP 心筋シンチグラフィを考慮してもよい366). IIb C