p.35 抽出テキスト
な構成成分は,線維性成分と平坦な血栓成分である.冠攣縮性狭心症で層状プラークがしばしばみられる理由の仮説としては,冠攣縮に伴って発生した内膜裂孔から血栓が発生・治癒し,その結果,層状プラークを形成するという説333)であるが,まだ十分な解明には至っていない. 3.2 血管内視鏡 血管内視鏡は,レンズを通して血管内腔表面をフルカラーの実像で直接観察できる血管内イメージングモダリティである.IVUSやOCTのように血管の断層面を評価することはできないが,血管内腔面の色調や表面の凹凸,可動性の有無などを詳細に観察することが可能であり,内膜障害や血栓の評価などに非常に優れている352, 353). 冠攣縮性狭心症において,冠攣縮の存在は基本的に冠動脈造影にて診断されるため,血管内視鏡検査がその臨床診断に必須というわけではなく,主に病態や機序を解明するための研究目的で使用されることが多い.血管内視鏡は,わが国でのみ臨床使用が認可されているデバイスということもあり,冠攣縮性狭心症の血管内視鏡所見に関する報告数は限られてはいるが,これまで得られてきた知見を以下にまとめる. 血管内視鏡で冠攣縮部を観察すると,約40%の例で内膜の不整,壁在血栓や黄色プラークが認められる354).最近の報告においても,冠攣縮が誘発されない部位では血栓の付着がみられないのに対して,冠攣縮誘発部には約30%の割合で壁在血栓が観察されている355).冠攣縮性狭心症患者において血栓が認められる病態に関しては以下の3つの機序が提唱されている:1 冠攣縮による外的な力によってプラーク破裂(plaque rupture)が起こる38, 356),2重度のまたは繰り返される冠攣縮によって内膜の過収縮や過伸展が引き起こされ,びらん(erosion)が起こる341), 3 膜の形態変化が起きていることが明らかとなった343).このことは冠攣縮の血管構造変化の主座は血管平滑筋からなる中膜の過収縮が重要な役割を担っていることを示唆している345).(表13) 36, 37, 325–345)動物実験から中膜における炎症と中膜平滑筋の過収縮がRhoキナーゼを中心とする分子機構で説明され346),さらに冠攣縮性狭心症患者においても冠攣縮部位に一致した炎症を示すことが明らかにされている32)ことから,それに合致する観察所見と考えられる. b. 血管壁内血管の関与 血管壁内血管(vasa vasorum: VV)は,血管周囲に存在する直径30~200 μ m大の血管網で,OCTを用いれば生体内で評価可能であることが報告されている347).血管壁への酸素や栄養供給がVVの主たる役割であるが,走行する部位により血管外膜を走行するadventitial VV(AVV)とプラーク内を走行するintraplaque neovessels(IPNV)に分類されている348).冠攣縮性狭心症においてVVは増殖しており,びまん性に攣縮するタイプの冠攣縮性狭心症ではAVVが増加し,一方で局所的に攣縮するタイプの冠攣縮性狭心症ではIPNVが増加することが報告されている112).また,心筋架橋(myocardial bridge)を伴う冠攣縮性狭心症では,心筋架橋部位のAVVが欠損していることが報告されている349).しかし,VVと冠攣縮性狭心症の表現型との関連についてはまだ不明な点が多く,今後の研究が期待される. c. 層状プラーク(layered plaque)の関与 冠攣縮性狭心症患者の半数以上で器質的な異常を認める36).そのうち,多くの症例で層状プラークを認めることが報告されている333).このような層状プラークは,無症候のプラーク破綻やプラークびらんが治癒した後のプラーク(healed plaque)であり,その治癒過程で初期に発生した血栓が線維性成分に置き換わり層状となった結果,形成されると考えられている350, 351).そのため,層状プラークの主 内膜の盛り上がり・中膜肥厚(非発作時)中膜肥厚(発作時) 1mm 1mm 図13 冠攣縮発作時・非発作時のOCT 像(和歌山県立医科大学 循環器内科教室 提供)