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p.32 抽出テキスト

を伴わず,造影上変化は認めるものの,陽性診断基準を満たさない冠攣縮の病的意義の評価も困難である.近年,診断能力の向上を目的に左冠動脈への200 μg投与,右冠動脈への80 μg投与の有用性に関して,欧米およびわが国から報告されているが,いまだ十分なエビデンスの蓄積に乏

与法は投与量も少量ですみ,合併症をより減少させる可能性がある.異型狭心症例に重症度判定目的でエルゴノビン誘発試験を施行する場合には,少量から開始すべきである.

また,冠攣縮性狭心症患者に対し,エルゴノビン,セロトニン,アセチルコリンを用いて冠攣縮薬物誘発試験を施行した検討では,各薬剤によって冠攣縮誘発部位が異なる可能性も示唆されている316, 317).したがって,誘発冠攣縮陰性の結果で,冠攣縮の存在を完全に否定することはできない.誘発試験前の投薬中止期間,狭心症の活動性なども考慮し,臨床症状から誘発冠攣縮陰性であっても冠攣縮性狭心症を強く疑う場合には,Ca拮抗薬を含めた治療を開始すべきである.

2.4 適応基準

表12に冠攣縮薬物誘発試験の適応基準として,2013年改訂の「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」2),および2018年改訂の「慢性冠動脈疾患診断ガイドライン」18)の適応分類を参考にまとめた106, 149, 150, 157, 158, 168, 297–299, 303, 309, 312–314, 318–320).

2.5 診断における意義

2.5.1 目的

冠攣縮薬物誘発試験の目的は,1 安静狭心症および一部の労作性狭心症における冠攣縮の証明,2 安静狭心症の重症度の診断,3 冠動脈に有意狭窄病変のない胸痛患者における冠攣縮の除外である.

2.5.2 診断能

冠攣縮薬物誘発試験は一般に感度・特異度ともに80~ 90%と高い168, 303, 312, 319–321).しかしながら誘発試験前に薬物治療が施行されている場合や,冠攣縮の活動性の低い患者では,ホルター心電図でST上昇が確認されている例でも冠攣縮が誘発されないことがある.また冠攣縮の活動性には日内変動があることが知られており,早朝においてのみ発作が誘発される例がある321).そのため,冠攣縮薬物誘発試験においては,診断精度を向上させるため,可能な限り午前中での誘発試験施行が望まれる.

また,服薬中のCa拮抗薬,持続性硝酸薬は可能であれば2日間以上休薬することが望ましい.一方,胸痛の既往がまったくない患者でも心電図変化を伴う冠攣縮が誘発されることがあり,これらの冠攣縮の病的意義の評価は困難である.さらに冠攣縮薬物誘発試験において,心電図変化表12 冠攣縮薬物誘発試験の適応基準の推奨と

エビデンスレベル2, 18, 106, 149, 150, 157, 158, 168, 297–299, 303, 309, 312–314, 318–320)

推奨クラスエビデンス

レベル

症候より冠攣縮性狭心症が疑われるが,非侵襲的評価法により診断されない症例で,造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験を行う. I B非侵襲的評価法により冠攣縮が診断され,薬剤の効果が確認できないか,効果が十分でない症例で,造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験を考慮する. IIa B非侵襲的評価法により冠攣縮が診断され,薬剤治療が有効であることが判明している症例で,造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験を考慮してもよい. IIb B冠攣縮性狭心症を疑わせる症候のない症例で造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験は推奨されない. III No benefit C急性冠症候群に対する冠動脈造影時に,誘発された冠攣縮により重症合併症の発生が予測される場合(高度心機能低下例,うっ血性心不全例など),冠攣縮薬物誘発試験を行うべきではない. III Harm C推奨クラスごとの文末記載に関する定型に準じて,および一部内容の見直しから,「慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)」18)の表40に関して,列記する参照文献を参考に改変を行った.改変部(下線部)を以下に記載(変更前→変更後の順に記載).

第1項目:「非侵襲的評価法では診断されない症例での造影検査時の攣縮誘発試験」→ 「非侵襲的評価法により診断されない症例で,造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験を行う」第2項目:「た症例で」→削除,「あるいは」→  削除,「効果が十分でない症例での造影検査時の攣縮誘発試験」 →「効果が十分でない症例で,造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験を考慮する」第3項目:「症例での造影検査時の攣縮誘発試験」→ 「症例で,造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験を考慮してもよい」第4項目:「症例における造影検査時の攣縮誘発試験」→ 「症例で造影検査時に冠攣縮薬物誘発試験は推奨されない」第5項目:「誘発された冠攣縮により重症合併症の発生が強く予測される症例(左冠動脈主幹部病変例, 閉塞病変を含む多枝冠動脈病変例,高度心機能低下例,未治療のうっ血性心不全例など)での造影検査時の攣縮誘発試験」 → 「急性冠症候群に対する冠動脈造影時に,誘発された冠攣縮により重症合併症の発生が予測される場合(高度心機能低下例,うっ血性心不全例など),冠攣縮薬物誘発試験を行うべきでない」「ACS 症例の緊急冠動脈造影検査時の攣縮誘発試験」の項目を削除(日本循環器学会.2018 18)より改変)