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p.30 抽出テキスト

遷延することがあり,血圧低下や心原性ショック,重症不整脈,心停止など危険な状態が起こりうる.このような場合,硝酸薬(ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビド)の冠動脈内注入により攣縮を解除する必要がある.また血圧低下に対しては昇圧薬(ノルアドレナリン)の投与も必要であり,重篤な不整脈にも直ちに対応しなければならない.

2.2.1 標準的誘発試験法168, 297–299, 304, 305)

1 左右の冠動脈のコントロール造影:各冠動脈の分枝が

もっとも分離される方向より造影し,アセチルコリン注入後も同じ方向より造影する. 2 右室内への一時的ペーシング電極の挿入:アセチルコ

リンの投与により,特に右冠動脈内投与により一時的に高度徐脈が出現するため,バックアップペーシング(40~50拍/分)を行う. 3 左冠動脈内アセチルコリン注入:37°Cの生理食塩水に

溶解したアセチルコリン20,50,100 μ g(各々5 mL溶液となるように濃度を調整する)の各量を左冠動脈内に20秒間で注入する.各量の注入開始1分後に冠動脈造影を行う.心電図の虚血性変化や胸痛が出現した場合は,その時点で造影を行う.各量のアセチルコリン投与は5分間隔で行う. 4 右冠動脈内アセチルコリン注入:20,50 μ g(各々5

mL溶液)の各量を右冠動脈内に20秒間で注入する.造影のタイミングは左冠動脈と同様である. 5 硝酸薬投与後の左右の冠動脈造影:硝酸薬を冠動

脈内に投与し,冠動脈が最大に拡張した状態で造影する.左右いずれの冠動脈から誘発試験を開始すべきという原則はないが,誘発された冠攣縮に対して,硝酸薬で解除後に対側の誘発試験を実施できないため,誘発試験評価を行う冠動脈枝数の観点から,左冠動脈から開始する場合が多い.アセチルコリン投与量に関しては,自然発作回数が多く,活動性が高いと考えられる例では少量(20 μg)で冠攣縮が誘発されることが多い.自然発作時に血圧低下や高度の徐脈が認められ,広範囲かつ高度の虚血の発生が予測される例では,さらに少量(10 μg)から投与開始することが奨められる.

アセチルコリンの半減期はきわめて短いため,エルゴノビンによる攣縮とは異なり,誘発された冠攣縮は多くの症例で自然寛解する.すなわち,一側の冠動脈内注入により冠攣縮が誘発されても硝酸薬投与を必要としないことが多く,他側の冠動脈の誘発試験に影響しないため,多枝冠攣縮の診断に有用である298).多枝冠攣縮発作はしばしば重篤で,異型狭心症例の予後規定因子の1つでもあり298, 306),

2 冠攣縮薬物誘発試験

2.1 概要

心臓カテーテル検査における冠攣縮薬物誘発試験は,アセチルコリンないしエルゴノビンを選択的に冠動脈内に注入して,冠動脈を造影して行われる.2013年改訂の「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」2),および2018年改訂の「慢性冠動脈疾患診断ガイドライン」18)にて,すでにその概要は記載されているが,その後の報告も加えて記載する.本試験は安静狭心症における冠攣縮の証明および冠動脈に有意狭窄病変のない胸痛患者における冠攣縮の除外を目的として施行される.一部の症例では,労作性狭心症や心筋梗塞例(詳細は「第1章 1.3 診断」を参照)も対象とされる.冠攣縮の検出は,感度・特異度ともに80~90%と高い.誘発試験前の薬物治療によって,また発作の活動性の低い患者では,感度が低くなる.多枝冠攣縮は長期予後が不良である.なお,アセチルコリンを用いた冠攣縮薬物誘発試験については,2017年8月25日付で「アセチルコリン(オビソート注射用0.1 g ®)」の効能・効果追加が承認され,アセチルコリン誘発試験に関しては, 2018年度に冠攣縮薬物誘発試験として正式に保険適用となっている.わが国では安静狭心症が多く存在し,冠動脈造影により冠攣縮が証明されることが多い301, 302).

代表的な薬物誘発試験としてアセチルコリン誘発試験168)およびエルゴノビン誘発試験がある303).本試験の適応例に対して,いずれの侵襲的検査実施前にも十分なインフォームドコンセントを得る必要がある.

2.2 アセチルコリン誘発試験

アセチルコリンは内皮より一酸化窒素を放出させて血管を拡張する作用を有するが,同時に強力な血管平滑筋収縮作用も示す.異型狭心症を対象とした臨床研究により,選択的冠動脈内アセチルコリン注入が,高感度かつ高特異度で冠攣縮を誘発することが示された168, 297, 298).同様の結果が特にわが国の多くの施設から報告され299),本試験は狭心症の病態としての冠攣縮を診断する誘発試験として確立されている.誘発試験実施にあたって注意すべき点として,特に冠攣縮の活動性が高い例や多枝冠攣縮例においては,高度かつ広範な冠攣縮が誘発され,誘発された冠攣縮が