p.22 抽出テキスト
CMD)の診断基準を提唱している10, 16).微小血管狭心症の診断基準は労作時または安静時の狭心症症状,心外膜冠動脈の有意な器質的狭窄病変の否定,虚血のエビデンス,およびCMDのエビデンスとして,1 アデノシンに対する冠血流増加反応に代表される冠微小血管拡張反応の障害,2 MVS,3 IMRの増大,および 4 冠血流速度の低下(slow flow現象218))で構成される(表8) 16). 心外膜冠動脈における虚血の原因は,構造的異常(器質的狭窄)と機能的異常に分けることができるが,冠微小血管においては臨床検査法が限られており,構造的異常と機能的異常の峻別は容易ではない.また,個々の症例においては,心外膜冠動脈および冠微小血管における,構造的および機能的異常が重複して生じうる(図5,「第1章 2.3 病態と疫学」を参照).心外膜冠動脈の狭窄を除外した病態がINOCAを構成する. CMDの病態機序は十分に解明されていないが,一部では,細胞内の活性酸素種の過剰生成による酸化ストレスとそれらに伴う炎症反応がCMDの機序と報告されている219).また,RhoA/Rhoキナーゼ経路の活性化による活性酸素,一酸化窒素による血管拡張反応の阻害,エンドセリン1(Endothelin 1:ET-1)による血管収縮活性の増強がCMDに関与すると報告されている16, 220).心外膜冠動脈攣縮を有しかつIMR高値を示す患者においては,Rhoキナーゼ阻害によりIMRの低下を認め,RhoキナーゼのCMDの病態への関与が示唆されている139, 143). [500~100 μm,prearterioles],細動脈[<100 μm,arterioles], 前毛細血管[<20 μm,precapillary arterioles],毛細血管[capillaries])で構成されており133, 215, 216),心外膜冠動脈は有意狭窄病変がなければ全冠血管抵抗の約5%にしか関与しない.このことは冠微小血管が心筋血流調節の中心的な役割を果たしていることを意味しており,その調節機構の破綻は心外膜冠動脈の異常(狭窄あるいは攣縮)の有無にかかわらず虚血を惹起しうる.CMDは,冠微小血管の構造的・機能的変化,および血管外の要因により冠血流障害をきたし,最終的に心筋虚血・心筋梗塞を引き起こす幅広い病態を含む症候群である131, 217). クリニカルシナリオに基づくCMDの臨床分類において,微小血管狭心症はCMDタイプ1,心筋疾患に合併するCMDはタイプ2,閉塞性冠動脈疾患に併存するCMDはタイプ3,PCIなどによって生じる医原性CMDはタイプ4に分類される10, 14, 131)(表7) 16, 132).CMDは,INOCA/MINOCAだけでなく,心外膜冠動脈疾患,一次性心筋症,たこつぼ症候群,心不全(特に駆出率の保たれた心不全)などの多くの心血管疾患において重要な役割を担っていると考えられている. 労作時あるいは安静時の狭心症様症状を訴え,冠動脈造影を施行された症例のなかに,心外膜冠動脈に血流を阻害する高度狭窄病変や冠攣縮のいずれも認められない症例が存在することが知られており,このような症例は微小血管狭心症と診断され,上述のCMD臨床分類ではタイプ1の CMDとされる.COVADISは微小血管狭心症(タイプ1 表7クリニカルシナリオに基づく冠微小循環障害(CMD)の臨床分類 臨床分類臨床症状臨床診断主要な病因 タイプ1閉塞性冠動脈疾患や心筋疾患なし(微小血管狭心症)狭心症狭心症様症状INOCA MINOCAたこつぼ症候群PCI/CABG後血管平滑筋機能障害血管リモデリング血管内皮機能障害 タイプ2心筋症や弁膜症に併発するもの呼吸困難運動耐容能低下糖尿病性心筋症大動脈弁狭窄症心アミロイドーシス心ファブリ病心筋炎高血圧性心疾患拡張型心筋症血管平滑筋機能障害血管リモデリング内腔狭窄・閉塞血管外からの圧排 タイプ3閉塞性冠動脈疾患に併発するもの狭心症狭心症様症状慢性冠症候群急性冠症候群血管平滑筋機能障害血管リモデリング血管内皮機能障害 タイプ4医原性時に無症状PCI関連CABG関連移植心冠動脈病変内腔狭窄・閉塞自律神経機能障害全身性炎症反応(Crea F, et al. 2014 132), 2022 16) を参考に作表)