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p.21 抽出テキスト

応性アルデヒドの分解に重要な役割を果たしている203–206).さらにALDH2遺伝子多型により,アルコール代謝過程におけるアセトアルデヒド量の時間経過には個人差が生じる.

日本人の心血管病症例を対象としたゲノムワイド関連研究において207),欠損型ALDH2遺伝子型(ALDH2 *2)を示す遺伝子座(rs671)がその強い予測因子として特定された.また,東アジアのメタ解析でもALDH2 *2と冠動脈疾患および心筋梗塞との関連が報告されている208). ALDH2 *2は東アジア人に多く(30~50%),他の集団ではまれであり,飲酒後の顔面紅潮・吐き気・動悸・眠気・頭痛などを示すアルコールフラッシング症候群と関連している206).一方で,冠攣縮は,アルコールフラッシング症候群およびエタノールパッチテストの陽性反応と関連することから209),ケースコントロール研究がなされ,ALDH2 *2と冠攣縮性狭心症との有意な関係性が明らかとなった.これまでの遺伝的要因とともに,ALDH2 *2も冠攣縮の重要な因子といえる(図8) 67).冠攣縮性狭心症を疑う場合,遺伝子の検査ができなくても,病歴聴取の中でアルコールフラッシングの有無またはエタノールパッチテストの結果が参考になる.

さらに,ALDH2 *2が喫煙と組み合わさると,冠攣縮のリスクが相乗的に増幅する210).また,わが国の心筋梗塞症例においてはALDH2 *2が多いが,その要因として冠攣縮の関与が示されている68).

ALDH2はニトログリセリンの生物活性化にも影響を与える211).一方で,ニトログリセリンの継続投与は,ALDH2の不活性化と 活性酸素種レベルの上昇を通じて,その耐性化

を招き,心イベントさえも引き起こす206, 212).したがって, ALDH2 *2遺伝子型の保因者は,ニトログリセリンに対する反応性が低く,ニトログリセリン耐性になりやすく,活性酸素種の影響を受けやすい213, 214).

冠攣縮の発症頻度の人種差に関しては未だ十分な検討が行われているわけではないが,西洋人と比較して東アジア人に多いと一般的に考えられている8, 202).その理由はこれまで不明であったが,東アジア人におけるALDH2 *2の保因率の高さと喫煙率の高さで説明できる可能性がある.

アルコールフラッシングがある場合,一般的に飲酒は控えるべきであるが,冠攣縮性狭心症を疑う場合はなおさらである.一方で,アルコールフラッシングがない場合でも飲酒量が多ければアセトアルデヒドは体内で増えてその影響を受ける可能性が増すことから,冠攣縮性狭心症患者では節酒は必要である.

3 冠微小血管攣縮

3.1 疾患概念

3.1.1 冠微小循環障害(CMD)と冠微小血管攣縮

冠血管床は心外膜冠動脈および冠微小血管(前細動脈

図8 ALDH2 遺伝子型による冠攣縮性狭心症とアルコールフラッシング症候群の頻度の比較冠攣縮性狭心症(A)とアルコールフラッシング(B)の頻度は,ともに野生型遺伝子型ALDH2

*1/ *1グループよりも変異遺伝子型ALDH2 *2グループにおいて有意に高かった. (Mizuno Y, et al. 2015 67)より) https://www.ahajournals.org/journal/circ  (c) 2015 American Heart Association Inc.

冠攣縮性狭心症80 60

40 20

0

A

43.9% 70.5%

(%)

ALDH2*1/*1 (114人) ALDH2*2

(88人)

< 0.001 P < 0.001 P

アルコールフラッシング80 60

40 20

0

B

26.3% 95.5%

(%)

ALDH2*1/*1 (114人) ALDH2*2

(88人)