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p.20 抽出テキスト

1 遺伝的要因

冠動脈疾患には家族内発症が比較的多く認められ,生活習慣に問題がなくても発症する例もあることから,「遺伝的要因」の関与も示唆されている.近年,疾患の発症や病態に関わる遺伝子が多数クローニングされ,「2013年改訂版 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」2) においても冠攣縮と遺伝子多型との関連性が記載されている.疾患の遺伝的要因が解明されると,個々の遺伝情報に基づいたオーダーメード医療により一次予防に寄与できる可能性がある.2013年の改訂版以降としては,アセチルコリン誘発試験において冠循環中の乳酸産生が増加する冠攣縮性狭心症患者では,-786T/C 遺伝子多型,女性,糖尿病が有意に関連していることが新たに示された107). 2 ALDH2多型とアルコール代謝

冠攣縮発作には個人差があるが,飲酒後酔い醒めの時間帯に多い.飲酒は冠攣縮の危険因子であり,アルコールの有害性の機序の1 つとして,飲酒によりマグネシウム(Mg)の尿排泄が増して組織でのMg欠乏が生じることに由来する199, 200).

エタノールの代謝過程において合成されるアセトアルデヒドは,口腔・咽頭・食道の癌のほかに,大腸癌,肝臓癌,乳癌などと関連しており201),循環器系では特に冠攣縮と関連がある67, 202).

ALDH2蛋白質はヒトの肝臓を中心にさまざまな組織や細胞においてエタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドの酸化およびその無害化に寄与しており,さまざまな反

事故の回避とがん治療の継続であるが,現在,がん患者における胸痛の評価と治療に関する推奨をガイドラインで明記できるほど十分なエビデンスがない.5-フルオロウラシルに関連した冠攣縮性狭心症において,抗がん剤治療中断や高用量投与を避けることが冠攣縮性狭心症のコントロールに効果的であるという報告や,冠攣縮性狭心症発作により一度治療が中断された場合,Ca拮抗薬や硝酸薬を前もって導入した上で5-フルオロウラシルを再開することが有効であるとの報告がある196–198).抗がん剤に関連する冠攣縮性狭心症は投与中に多く発生するため,抗がん剤による心血管毒性の既往がある患者に同薬剤を投与する場合は,前後の12誘導心電図と投与中から投与後までの心電図モニターによる心筋虚血,不整脈の観察を行うことも有効と考えられる.がん薬物療法に関連した冠攣縮性狭心症のスクリーニング,リスク評価,治療については今後の知見の蓄積が必要である.

血管毒性:タイプ1(ニロチニブ,ポナチニブなど)と,一過性で多くが機能的な障害をもたらす血管毒性:タイプ2 (5-フルオロウラシルなど)である186, 187).冠攣縮性狭心症をきたしうる薬剤としては,代謝拮抗薬に分類される抗がん剤の一種である5-フルオロウラシルと,その経口プロドラッグであるカペシタビンが代表的であり,最近の主な前向き研究では心筋虚血リスクは4.0~8.5%と報告されている188–190).これらの薬剤は血管平滑筋反応性を亢進させ191),血管内皮細胞への直接毒性による血管内皮機能障害を起こすことにより冠攣縮性狭心症を引き起こす192, 193).分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬を含むその他の抗がん剤投与例においても冠攣縮性狭心症の発生が報告されている194, 195).

3.2 がん薬物療法による冠攣縮性狭心症への対応

がん患者における冠攣縮性狭心症の治療の目的は,心

第2章 病態に関する新たな知見