p.16 抽出テキスト
6) 134).CMDによる狭心症は微小血管狭心症(microvascular angina: MVA)と呼ばれ,2018年に国際的な診断基準が提唱されている10).CMDの診断に関しては,日米欧の各ガイドライン6, 24, 137)でも心臓カテーテル検査による包括的な冠動脈機能評価が推奨されており,CFRの低下,冠微小血管攣縮,IMRの増加,冠血流速度の低下(造影遅延やTIMIフレームカウントの増加)のいずれかで診断される10, 137–139). 2.3.4 成因の重複と共存 INOCAにおける冠攣縮とCMDの罹患率を検討した最近のシステマティックレビュー・メタ解析(56研究・14,427人)では,冠攣縮は40%,CMDは41%,両者の合併は23%,微小血管狭心症は24%に認められた140).女性は男性よりCMDが1.45倍多かった140).重要なことは,これら心外膜冠動脈および冠微小血管の攣縮を含む器質的・機能的異常は,個々の患者において種々の程度で重複して存在することが多く,予後や治療方針に影響を与える可能性がある点である14, 80, 104, 113, 141–146)(図4).2020年に発表されたEAPCIのExpert Consensus Document 101)では,IDPによる冠動脈精査の結果に基づいて,INOCAを5 つのendotypesに分類することを提唱している(表5) 101). 2.4 臨床の諸問題と展望 INOCAに関する情報,知識,そして認識がまだ不十分である. で,局所的な(focal)冠攣縮の方がびまん性 (diffuse)冠攣縮よりも主要心血管イベント (平均観察期間49ヵ月)が多いことが報告された106).ガイドラインの診断基準に準拠して冠攣縮を診断した韓国の多施設前向き大規模レジストリー(2,960人)からの報告でも,中央値30ヵ月の観察期間中に,局所的な冠攣縮の方がびまん性冠攣縮よりも臨床転帰が不良であることが示された116).さらに,INOCAに相当する患者を対象に冠攣縮誘発試験とOCTによる血管内イメージングを実施したわが国からの報告(329人)では,中央値約3年間の追跡で,局所的な冠攣縮がもっとも主要心血管イベントの発生率が高く,プラーク内新生血管が関連した112).びまん性冠攣縮は局所的冠攣縮と微小血管攣縮との中間的な予後で血管壁内血管(vasa vasorum)が関連した112).機能と形態を組み合わせて評価することで予後層別化に役立つことが示唆された112). 2.3.3 INOCAにおける冠微小循環障害(CMD) CMDは,さまざまな心血管病との関連が明らかにされ近年注目されているが80, 84, 88, 93, 117–130),INOCAにおける心筋虚血の機序としても重要である.CMDの機序は多因子性で,冠微小血管の構造的・器質的または機能的な異常に起因し,1 血管収縮性の亢進(微小血管攣縮 [microvascular spasm: MVS]),2 血管の拡張不全(血管内皮障害 [内皮依存性] または平滑筋障害 [内皮非依存性]),3 冠微小血管抵抗の増大(冠微小血管の内腔狭窄,リモデリング,分布密度低下,心肥大に伴う血管外からの圧排など)が単独または種々の組み合わせで心筋虚血を生じる131–136)(図 図5心外膜冠動脈および冠微小血管における構造的および機能的異常 心外膜冠動脈 INOCA これらの機序は 重複しうる 器質的狭窄冠微小循環障害(CMD) 微小血管抵抗亢進・IMR 増大 slow flow現象・冠血流速度低下(TIMIフレームカウント増加) 微小血管拡張障害・CFR 低下 微小血管攣縮(MVS)・冠攣縮誘発試験陽性 構造的異常 機能的異常冠攣縮冠微小血管