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p.14 抽出テキスト

冠微小血管攣縮もMINOCAを生じうるが,心筋虚血・梗塞の結果としてもCMDを生じるため,MINOCAにおけるCMDの評価には注意を要する73).

2 INOCA

2.1 疾患概念とUniversal Definitionの提唱

胸骨下の絞扼感など典型的狭心痛,放散痛・息切れなど狭心症に相当する症状 (angina equivalent),または心筋虚血を示唆する非侵襲的検査結果などから,狭心症が疑われて冠動脈造影検査を受けた患者の約半数は,冠動脈に器質的な有意狭窄病変を認めないことが知られている74–83).男女ともにこうした患者における冠動脈機能異常の高い罹患率と予後への悪影響79, 84–95),生活の質(QOL)の低下96),不安定狭心症による入院や冠動脈造影の再施行によって増大する医療費負担97–100) などが明らかにされ,その臨床的重要性が注目されるようになった.こうした狭心症を示唆する症状,徴候,検査所見を有するが冠動脈に器質的有意狭窄を認めない慢性の症候群として,冠動脈閉塞を伴わない心筋虚血 (ischemia with non-obstructive coronary artery disease: INOCA)という疾患概念が2017年に米国から提唱された3).さらに,2020年に欧州のEuropean Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions(EAPCI)から, INOCAに関する初のExpert Consensus Documentが発表され,INOCAのUniversal Definition,診断,管理が提案された101).臨床的に狭心症を疑う典型的または非典型的症状があり,心筋虚血の客観的検査所見を有するにもかかわらず,冠動脈に器質的有意狭窄を認めない患者をINOCAとして扱い,心血管イベントのリスクが高い可能性があることを念頭に,冠攣縮誘発試験を含む冠動脈機能異常 (冠攣縮および冠微小循環障害[CMD])の侵襲的・包括的精査(interventional diagnostic procedure: IDPまたは invasive

functional coronary angiography: FCA)を行って INOCAの成因を明らかにすること (endotyping)を推奨している101). 2022年に英国から発表されたConsensus Documentにおいても,IDPまたはFCAによるINOCAのendotypingとその成因に基づく個別化治療を推奨している102).

ルコリンまたはエルゴノビンによる誘発試験を行った研究では,緊急時の薬物誘発試験による合併症はなく,37人が冠攣縮と診断された46).誘発試験が陽性であった患者は退院後の死亡や急性冠症候群による再入院が多く,高リスク患者の同定に有用であった.アセチルコリン誘発試験を緊急冠動脈造影時に施行した84人と非緊急時に施行した445人を比較した研究では,重篤な合併症の発生率は両群に差はなく(1.2% vs. 1.3%, P=1.00),死亡例はなかった71). MINOCAの診断冠動脈造影に引き続きアセチルコリン誘発試験を行った80人と安定したINOCAにアセチルコリン誘発試験を行った100人を比較した研究でも不可逆的な合併症は認めず,MINOCAの急性期でもINOCAと同様に安全に施行できたと報告している72).これらの結果をふまえ,プラーク破綻やSCADなど他の疾患が確実に除外され,安全性に十分な配慮がなされている条件下であれば,急性期冠動脈造影であっても引き続き冠攣縮薬物誘発試験を行うことを考慮してもよい(表4) 46, 71, 72).一方,心電図でのST上昇や冠動脈造影での閉塞ないし高度狭窄病変が自然にあるいはニトログリセリン投与により寛解するなど自然発作が捉えられ,すでに冠攣縮の診断に至っている症例では,急性期冠動脈造影時の薬物誘発試験に有用性は認められない.また高度心機能低下例やうっ血性心不全例など,誘発された冠攣縮により重症合併症の発生が予測される患者に対して,急性期冠動脈造影時に薬物誘発試験は行うべきではない.

表4 MINOCA の急性期冠動脈造影時における冠攣縮薬物誘発試験の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

プラーク破綻やSCAD など他の疾患が確実に除外された患者に対して,安全性に十分な配慮がなされている条件下であれば,急性期冠動脈造影時に冠攣縮薬物誘発試験を行うことを考慮してもよい46, 71, 72). IIb C心電図でのST 上昇や冠動脈造影での閉塞ないし高度狭窄病変が自然にあるいはニトログリセリン投与により寛解するなど自然発作が捉えられた患者に対して,急性期冠動脈造影時に冠攣縮薬物誘発試験を行うことは推奨されない. III No benefit C誘発された冠攣縮により重症合併症の発生が予測される患者(高度心機能低下例,うっ血性心不全例など)に対して,急性期冠動脈造影時に冠攣縮薬物誘発試験を行うべきではない. III Harm C