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p.13 抽出テキスト

ク)の破綻によるものと(タイプ1),酸素の需要・供給の不一致によるもの(タイプ2)とに大別される21).需要・供給の不一致は,持続性の頻拍や高度の血圧上昇などの需要増加と,供給低下に分けられる.供給低下には冠攣縮や特発性冠動脈解離(SCAD),冠動脈塞栓症など冠動脈に異常のあるもののほか,持続する徐脈や高度の貧血などの非冠動脈疾患も原因となる.冠攣縮の診断には,まずMINOCAを生じうる他の病態を除外することが必要である.

プラーク破綻は冠動脈造影において壁の不整やかすみ像(haziness)として認められるが,多くの場合はOCTなど血管内イメージングでの評価が必要である.プラーク破綻や壁在血栓を認めれば抗血小板薬の投与が必要であるが,冠攣縮性狭心症でもしばしば同様の所見が認められるため,これらの所見の存在だけで冠攣縮の関与を否定することはできない.プラーク破綻や壁在血栓の原因が冠攣縮であるか,あるいはオーバーラップして関与することが疑われる場合には,working diagnosisとしてカルシウム(Ca)拮抗薬を併用しつつ検査を進め,必要に応じて慢性期に冠攣縮薬物誘発試験で診断する.SCADは50歳以下の若年女性に多い.冠動脈造影で解離像と血流低下を伴う閉塞を認めるものもあるが,平滑で緩徐な先細りにより正常との区別が難しい場合もある.SCADの診断でも血管内イメージングが有用であり,冠動脈壁内に偽腔の存在を確認することができる.冠動脈塞栓症は造影上の冠動脈の突然の途絶として認められるが,心房細動や心筋症,弁膜症を基盤とする全身塞栓症のほか,冠動脈に生じた血栓が溶解される際に末梢に流れて塞栓をきたすものもある.

冠攣縮を原因とするMINOCAではすでに冠攣縮性狭心症と診断されている,あるいは冠攣縮性狭心症を疑わせる病歴のある場合もあるが,MINOCAが初発であることも少なくない.診断は本ガイドラインの診断基準(第3章1.冠攣縮性狭心症の診断基準)に従って行われるが,自然発作が捉えられることはまれであり,多くの場合で冠攣縮薬物誘発試験を必要とする.薬物誘発試験のタイミングについては,急性冠症候群の緊急冠動脈造影検査時における薬物誘発試験は従来危険と考えられ,2013年改訂版JCSガイドラインでは推奨クラスIIIとされ,安定化後の薬物誘発試験が推奨されていた2).2017年に発表されたCOVADISの冠攣縮性狭心症診断の国際標準化でも緊急時には同様に禁忌である9).一方,急性冠症候群におけるMINOCAの重要性が認識されるようになるにつれて,急性期冠動脈造影時における薬物誘発試験の安全性,有用性に関する研究も報告されるようになった.MINOCAと診断された80人を対象に,冠動脈造影に引き続きアセチ

1.3.1 MINOCAの診断

MINOCAは心筋梗塞のうち,閉塞性冠動脈病変を認めないものであり,その診断は,心筋梗塞の診断および非閉塞性冠動脈の証明からなる.

心筋梗塞のUniversal Definitionは欧米の学会が合同で提唱し,2018年に現行の第4版が発表された21).Universal Definitionでは心筋梗塞を「急性心筋虚血の根拠のもとに心筋バイオマーカーで検出された急性心筋傷害を認めるもの」と定義している.心筋トロポニンは心筋の筋原線維を構成する蛋白質であり,ほぼ心筋にのみ発現し,心筋の損傷により血中に放出される.心筋トロポニンには心筋トロポニンTと心筋トロポニンIがあるが,いずれもCKやCK-MBなど従来の心筋バイオマーカーに比べ感度,特異度がきわめて高く,心筋トロポニンの上昇は心筋傷害の存在を示唆する.心筋トロポニンには複数の分析法があるが,それぞれの分析法で健常人の99パーセンタイル値を超えるものを心筋傷害とし,心筋トロポニン値の上昇とその後の下降,あるいはそのいずれかをもって急性の心筋傷害と判断する.心筋トロポニンの上昇は心筋傷害を示唆するが,心筋傷害の原因は反映されない.そのため,心筋梗塞の診断には心筋トロポニンの上昇・下降に加え,虚血を示唆する症状,心電図変化あるいは新たな生存心筋の喪失や壁運動異常の出現により心筋虚血の存在が示されなければならない. MINOCAは冠動脈造影上50%以上の狭窄病変を認めない心筋梗塞であるが,その診断においては側枝閉塞などの見落としがないか,画像の見直しによる慎重な造影所見の評価が必要である23, 24).

緊急冠動脈造影の時点でトロポニン陽性の原因がMINOCAと特定できないものでは,TP-NOCAのworking diagnosisのもと他の原因疾患を除外する25).鑑別すべき疾患には急性心筋炎やたこつぼ症候群などの心臓由来のものと敗血症や急性肺血栓塞栓症などの非心臓由来のものとがある.急性心筋傷害が冠動脈疾患由来の心筋傷害によるものか冠動脈疾患以外の原因による心筋傷害かの鑑別は病歴や画像診断法などから総合的に判断するが,なかでも心臓磁気共鳴像(MRI)が有用である70).心筋梗塞では遅延造影(LGE)が心内膜下を含み冠動脈支配領域に一致するのに対し,心筋炎などの冠動脈疾患以外の原因による心筋傷害では心筋中層や心外膜側にLGEが限局していることが多い.LGEを認めないものでも,T2強調画像で心筋浮腫を示唆する高信号を同様の分布パターンで検出する.

1.3.2 MINOCAの原因としての冠攣縮の診断

MINOCAは原因により動脈硬化性冠動脈粥腫(プラー