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p.10 抽出テキスト

ぶ大動脈解離,冠動脈塞栓症,冠動脈slow flowなどがある22, 24–26).非冠動脈疾患として心筋炎,たこつぼ症候群,心筋症,先天性凝固異常,肺血栓塞栓症,敗血症などがある.“working diagnosis”としてのMINOCAの診断にはじまり,原因が非冠動脈疾患である場合の除外と原因が冠攣縮などの冠動脈疾患である場合の原因疾患の鑑別を行うが,日常診療では必ずしも明確に区別できず,オーバーラップする病態もある27).MINOCAの原因の1つである冠動脈塞栓症の病因は,主に心房細動であるが,感染性心内膜炎による敗血症性塞栓や深部静脈血栓症による奇異性塞栓が原因のこともあり26),非冠動脈疾患による病態が併発している可能性を考慮する必要がある.また,たこつぼ症候群様の一過性の左室壁運動低下を呈する症例において,薬物誘発試験による誘発冠攣縮の合併が報告されている28,29).したがって,MINOCAにおいては単一あるいは複数の病因の重複を考慮して精査を進め,その病因に応じた治療の検討が必要である.

1.1.1 冠攣縮の関与

冠攣縮は,血管平滑筋細胞のRhoキナーゼ経路の亢進に基づく過収縮30) や血管内皮からの一酸化窒素の産生低下による内皮機能障害31),血管外膜および周囲脂肪組織の炎症32) が関与し,冠動脈局所の収縮を亢進させ,冠血流の低下とそれに引き続いて心筋虚血を生じさせる.また冠攣縮によって凝固系の亢進33),線溶活性の低下34),血小板の活性化と接着分子の放出促進35) が生じるため,易血栓形成の状態となる.冠攣縮による血栓形成を,血管内イメージングを用いて観察した報告がある.光干渉断層法(OCT)で冠攣縮部位を観察した研究では,冠攣縮部位あるいはその近位部の28%に血栓を認め,26%に血栓を伴うプラークびらんを認めた36).他の前向き観察研究では,冠攣縮による急性冠症候群と冠攣縮性狭心症の責任血管のOCT所見を比較し,冠攣縮による急性冠症候群にプラークびらん(69% vs. 27%),内膜の断裂(46% vs. 7%),血栓の付着(28% vs. 5%)が多いことが報告されている37).これらのOCTによる研究や剖検例38)から,急性冠症候群における不安定プラークの破綻の機序の1つとして,冠攣縮による機械的ストレスによってプラーク表層部の線維性被膜の断裂とプラーク内容物の血管内への突出により,血栓を生じることが想定される.またMINOCAの原因のひとつであるSCADにおいて,冠動脈解離の発症機序に冠攣縮の関与が指摘されている39, 40).一方で,10人のSCADに対してアセチルコリン誘発試験と冠血流予備能(CFR)の測定を行い,対照群と比較した後ろ向き研究では,冠攣縮やCMDの関与を認めなかったという報告もあり41),今後,大規模な前向き研究でMINOCAにおけるSCADと冠

攣縮の関連を検討する必要がある.その他,心筋架橋(myocardial bridge)と冠攣縮,MINOCAとの関連を検討した単施設前向き観察研究では,アセチルコリン誘発試験陽性所見は心筋架橋を有する症例におけるMINOCAの危険因子であることが報告されている42).またアセチルコリン誘発試験陽性例において心筋架橋はMINOCAの危険因子であるが,陰性例では心筋架橋はMINOCAの危険因子ではないことから,心筋架橋はMINOCAの原因の1つとして考えられ,さらに冠攣縮は心筋架橋によるMINOCA発症の病態に関与している可能性が示唆されている.

1.2 疫学

急性心筋梗塞におけるMINOCAの割合とMINOCA患者での冠攣縮合併の割合に関して,国内外からの報告をまとめて比較した(表3) 43–53).急性心筋梗塞におけるMINOCAの割合は約3.5~11.1%であり,報告間で大きな差を認めないが,一方でMINOCAにおける冠攣縮の割合に関しては3.7~72.6%と報告間のばらつきが大きい.心筋梗塞後の冠攣縮誘発試験での陽性率について,白人と比較し日本人やアジア人で多いとの報告があることから8, 54),人種差は冠攣縮発症の違いの要因の1つとして考えられていたが,一方で,ACOVA研究55)やわが国とドイツの共同研究56)では,欧米人においてもアセチルコリン誘発試験による冠攣縮陽性率が高いことが報告されており,人種差は認めないとの考えが共通認識となっている.さらに,各研究によってMINOCAの診断プロトコールや冠攣縮誘発試験における使用薬剤,投与量,投与経路や心筋梗塞後の誘発検査の施行時期が異なることも研究間の陽性率のばらつきの要因である.MINOCAの診断プロトコールについては,欧州心臓病学会(ESC),米国心臓協会(AHA)よりそれぞれ提言が出されており23, 24),またわが国も参加している国際的な研究グループであるCOVADISからは冠攣縮性狭心症の診断基準の標準化が提唱されている9).急性心筋梗塞におけるMINOCAの割合とMINOCA患者での冠攣縮合併の割合を明らかにするために,わが国のみならず世界で統一した診断基準や診断プロトコールの整備が望まれる.

MINOCAは,MI-CADと比較して若年で,女性が多く,脂質異常症や糖尿病,高血圧,喫煙歴などの冠危険因子が少なく,Killip分類における軽症が多いという特徴が多く報告されている43, 44, 48–52).また,MINOCAでは心不全や心房細動の既往のほか,慢性肺疾患,脳血管障害,末梢動脈疾患,肝障害,腎障害,血液透析などの全身性疾