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改訂にあたって 本ガイドラインの前身である「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」は,2001年に初版が発表された後,およそ5年ごとに改訂を重ね,このたび「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」と名称を改めて上梓される運びとなった. この2023年改訂版ガイドラインは,合同研究班参加学会として日本心臓病学会,日本高血圧学会,日本動脈硬化学会,日本糖尿病学会,日本心臓リハビリテーション学会,日本老年医学会,日本腎臓学会,日本栄養・食糧学会,日本女性医学学会,日本小児循環器学会よりご協力をいただき,上記学会および班長・副班長から推薦を受けた班員・協力員に執筆いただいた. 本ガイドライン策定にあたり,新たな科学的根拠を反映するのは当然として,それ以外に次の点に留意した.第一に,すでに広く知られた知識的内容に関する記述(いわゆる教科書的記述)は最小限にし,推奨事項に焦点をあてた.この点は日本循環器学会ガイドライン部会からの要請でもあった.第二に,一次予防の対象には病院を受診する患者だけでなく一般地域住民なども含まれる点を考慮し,医療機関のみならず,たとえば地域保健や産業保健の場でも役立つ内容構成を心がけた.第三に,各参加学会が作成したガイドラインとの整合性に留意し,必要に応じて各ガイドラインの内容を引用・紹介した. 近年「ゼロ次予防」という用語が使用されることがあるが,この用語はprimordial preventionの和訳と思われる. MW. Gillmanによると「一次予防」(primary prevention)とは,高血圧や脂質異常症といった循環器疾患の危険因子を治療し循環器疾患予防につなげることである一方, primordial preventionとはその危険因子そのものが生じないような働きかけを指す1).しかし,本ガイドライン策定上このような区別は必ずしも必要ではないと考え, primordial preventionも含めて「一次予防」とした.また新たな試みとして「第2章1. 包括的リスク管理とリスク予 測モデル」および「第4章 リスク予測からみた潜在性動脈硬化指標」というセクションも設けた. 本ガイドラインでは,治療に関する推奨度とエビデンスレベルについて表1,2のとおり分類した. 最後に,他の臨床ガイドラインと同様に,本ガイドラインの役割は予防の現場での判断のために最新の医学情報を提供することである.具体的な患者・対象者の治療や管理に関する最終判断は,担当医師や医療スタッフがその患者・対象者と個別に目標を設定し共有しながら担っていくものであることを申し添えたい.本ガイドラインがその一助になれば幸いである. 表1 推奨クラス分類 クラスI手技・治療が有効・有用であるというエビデンスがある,または見解が広く一致している.クラスIIaエビデンス・見解から, 有効・有用である可能性が高い.クラスIIbエビデンス・見解から,有効性・有用性がそれほど確立されていない. クラスIII No benefit手技・治療が有効・有用でないとのエビデンスがある,あるいは見解が広く一致している.クラスIII Harm手技・治療が,有害であるとのエビデンスがある,あるいは見解が広く一致している. 表2 エビデンスレベル レベルA複数の無作為介入臨床試験またはメタ解析で実証されたもの.レベルB単一の無作為介入臨床試験または大規模な無作為介入でない臨床試験で実証されたもの.レベルC専門家および/ または小規模臨床試験(後ろ向き試験および登録を含む)で意見が一致したもの.